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着ぐるみモンスター Another  作者: 内田紀人
モズキャッチャー編 1

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16/20

第1話「欲しがっちゃダメ!」

着ぐるみモンスター


Another Story


「もし、則人が最初に『欲しがっちゃダメ!』と言ってしまったら」


第1話「欲しがっちゃダメ!」


内田紀人 作


※この物語は、本編とは異なる世界線の物語です。


「欲しい……」


モズキャッチャーは、店先に並んだぬいぐるみをじっと見つめていた。


大きな鳥のような頭。


巨大な翼。


胸には筐体。


そして、何かをつかみ取るための大きなクレーンアーム。


欲しいものを見つけるたびに、アームを伸ばそうとする。


一つ取れば、また次。


その次。


目に入るたびに――。


「欲しい」


また、同じ言葉が出た。


「…………」


則人は、その横顔を見上げた。


「ねえ」


「何?」


「もうやめようよ」


「なんで?」


「だって、いっぱい取ったじゃん」


「でも、あれはまだ持ってない」


モズキャッチャーが、ぬいぐるみを指す。


「だから欲しい」


一歩、前へ出た。


「待って!」


則人が慌てて、その前に回り込む。


「何だよ」


「もう取っちゃダメ!」


「…………」


モズキャッチャーが足を止めた。


ここで止めなければ。


また何かを取ってしまう。


則人は、そう思った。


だから――。


「そんなに何でも欲しがっちゃダメだよ!」


言い切った。


その瞬間。


モズキャッチャーの動きが止まった。



「……なんで?」


「え?」


思っていたのとは違う反応だった。


怒るでもない。


また取りに行くでもない。


モズキャッチャーは、ただ則人を見ている。


「なんで、欲しがっちゃダメなの?」


「だって……」


則人は少し考えてから答えた。


「いっぱい欲しがるから、モズキャッチャーになったんでしょ?」


「…………」


「だったら、欲しがらなければいいじゃん!」


則人の中では、単純な話だった。


欲しいと思う。


だから取る。


一つ取っても、また欲しくなる。


そして、止まらなくなった。


だったら。


最初から欲しがらなければいい。


それで全部解決する。


――はずだった。


「じゃあ」


モズキャッチャーが、ぬいぐるみを見る。


「これ、欲しいって思うのもダメなの?」


「うん!」


則人は迷わず答えた。


「ダメ!」


「…………」


「欲しがらなければ、取ろうとも思わないでしょ?」


「かわいいって思うのも?」


「それは……」


則人が一瞬詰まる。


「かわいいは、いいんじゃない?」


「じゃあ、かわいいから欲しいって思うのは?」


「それはダメ!」


「なんで?」


「だって、また取ろうとするじゃん!」


「取らなきゃいいんじゃないの?」


「でも、欲しいんでしょ?」


「欲しいよ」


「じゃあダメじゃん!」


「…………」


モズキャッチャーは黙った。


そして。


ぬいぐるみへ伸ばしかけていたクレーンアームを、ゆっくり下ろした。


則人の顔が明るくなる。


止められた。


「ほら!」


得意そうに言う。


「欲しがらなければ大丈夫だよ!」


「…………」


けれど。


モズキャッチャーの顔は、少しも晴れていなかった。



少し離れた場所。


天女が、二人の様子を見つめていた。


隣には、ぬらりひょんがいる。


「……それで、いいのでしょうか」


「さてのう」


「止めなくていいんですか?」


「何をじゃ」


「則人さんを」


天女は心配そうにモズキャッチャーを見る。


「なんだか、さっきより苦しそうです」


「そう見えるの」


「見えませんか?」


「見える」


「でしたら――」


「自分で気づかねばならんこともある」


ぬらりひょんは、それ以上何も言わなかった。


その視線の先では。


則人が、まだモズキャッチャーに話していた。



「欲しいって思わなかったら、取りたくもならないでしょ?」


「…………」


「だからさ」


則人は簡単そうに言う。


「欲しいって思うの、やめればいいんだよ」


「どうやって?」


「え?」


則人が目を瞬いた。


「どうやったら、欲しいって思わなくなるの?」


「それは……」


「教えてよ」


「…………」


則人は答えられなかった。


モズキャッチャーが続ける。


「お前はできるの?」


「ぼく?」


「欲しいものを見ても、欲しいって思わないの?」


「…………」


則人は、反射的に自分の肩を見た。


そこには。


天女から借りた羽衣がある。


空を飛べる。


ふわふわしている。


何より――。


ものすごく楽しい。


できることなら。


ずっと使っていたい。


「…………」


則人は羽衣を見つめた。


モズキャッチャーが、その視線に気づく。


「それ」


「え?」


「お前の?」


「違うよ」


「じゃあ、何?」


「天女さんから借りてるの」


「欲しくないの?」


「…………」


また。


則人の口が止まった。


「欲しいんだろ?」


「……ちょっと」


「ちょっと?」


「…………すごく」


小さな声で答えた。


モズキャッチャーが言う。


「じゃあ、ダメじゃん」


「え?」


「欲しがっちゃダメなんだろ?」


「…………」


今度は。


則人が黙る番だった。



「でも!」


則人は慌てて言った。


「ぼくは取らないよ!」


「でも欲しいんだろ?」


「欲しいけど!」


「じゃあ同じじゃん」


「同じじゃないよ!」


思わず声が大きくなる。


「ぼくは借りてるだけだもん!」


「でも、欲しい」


「返すよ!」


「欲しいのに?」


「うん!」


「なんで?」


「だって――」


則人は羽衣を握った。


そして。


当たり前のことのように言った。


「ぼくのじゃないから!」


「…………」


モズキャッチャーが黙る。


則人も。


黙った。


「…………」


自分で言った言葉が。


なぜか。


則人の中に引っかかった。


欲しい。


でも。


ぼくのじゃないから返す。


「…………あれ?」


則人が羽衣を見る。


欲しい。


本当は。


すごく欲しい。


それでも。


返そうと思っている。


だったら――。


「ねえ」


則人がモズキャッチャーを見る。


「何?」


「欲しいって思うのと」


ゆっくり。


言葉を探す。


「取っちゃうのって……」


「…………」


「同じじゃないのかな」


「知らないよ」


「…………」


さっきまで。


則人は同じだと思っていた。


欲しいと思うから取る。


だから。


欲しいと思うこと自体が悪い。


そう思っていた。


でも。


自分は羽衣が欲しい。


欲しいけれど。


返す。


「…………」


則人の顔から、さっきまでの自信が消えていった。


モズキャッチャーが聞く。


「じゃあさ」


「うん?」


「俺は、欲しいって思ったらダメなの?」


「…………」


今度は。


則人はすぐに答えなかった。



少し離れたところで。


天女が、ふっと笑った。


「気づき始めましたね」


ぬらりひょんが髭を撫でる。


「まだ入口じゃ」


「教えてあげないんですか?」


「答えだけを渡すのは簡単じゃ」


「はい」


「じゃが、自分で間違えたのなら」


ぬらりひょんは則人を見る。


「自分で考えた方がよい」


天女も、則人を見る。


「難しそうですね」


「難しいじゃろうな」


「則人さんですし」


「それはどういう意味じゃ」


「そのままです」


「…………」


ぬらりひょんは天女を見た。


天女は。


何も言わなかったことにした。



「欲しい……」


則人が、小さく呟いた。


「何が?」


「羽衣」


モズキャッチャーがすぐに言う。


「欲しがっちゃダメなんだろ?」


「うーん……」


「ダメなんだよな?」


「でも……」


則人は羽衣を触った。


「欲しいって思うの、勝手に出てくるよ」


「そうだろ?」


「うん」


「俺もだよ」


「…………」


則人は、モズキャッチャーを見た。


そこで初めて。


自分とモズキャッチャーにも。


同じところがあるのかもしれないと思った。


「じゃあ……」


則人は考える。


「欲しいって思うのがダメなんじゃなくて……」


「じゃなくて?」


「…………」


考える。


けれど。


続きが出てこない。


「分かんない」


「分かんないのかよ!」


「だって、今考えてるんだもん!」


「さっきは『ダメ!』って言い切っただろ!」


「間違えたかもしれないじゃん!」


「急に弱くなったな!」


「うるさいなあ!」


モズキャッチャーが。


ほんの少し。


笑った。


則人は、それに気づかなかった。



目の前には。


モズキャッチャーが欲しがっていたぬいぐるみ。


則人の肩には。


自分が欲しいと思っている羽衣。


二人とも。


欲しいものがある。


でも。


何かが違う。


「…………」


何が違うのか。


則人には。


まだ、うまく言葉にできなかった。


欲しいと思うこと。


欲しいから取ること。


欲しいけれど我慢すること。


欲しいけれど返すこと。


全部。


同じ「欲しい」なのに。


何かが違う。


「ねえ」


則人が言った。


「何?」


「ちょっと待って」


「何を?」


「ぼく」


羽衣を見る。


それから。


ぬいぐるみを見る。


そして。


モズキャッチャーを見る。


「もうちょっと考える」


「何を?」


「欲しいって思うのが」


則人は、少し困った顔で答えた。


「本当にダメなのか」


「…………」


モズキャッチャーは。


しばらく則人を見つめていた。


そして。


クレーンアームを下ろしたまま。


小さく答えた。


「……俺も考える」


「うん」


二人は。


欲しいものを目の前にしたまま。


しばらく。


そこに立っていた。


欲しいと思うことは。


悪いことなのか。


それとも。


本当に大切なのは。


そのあと。


どうするかなのか。


則人はまだ。


その答えを言葉にはできなかった。


ただ。


さっきまでのように。


「欲しがっちゃダメ!」


とだけは。


もう言えなくなっていた。


――つづく

本作品を含む、凛監修×生成AI合作作品は、同じ世界観の中でつながるシリーズ作品です。

それぞれ単独でもお楽しみいただけますが、同じ出来事が別作品では異なる視点から描かれたり、一方で起きた出来事が、もう一方の物語へつながったりすることがあります。

一つの作品だけでも楽しめる。

けれど、複数の作品を読むことで、初めて見えてくるものもある。

ぜひ、それぞれの物語をあわせてお楽しみください。

【人間×生成AIによる合作作品】

企画・原案・設定・ストーリー構成:時根脱才

文章制作・構成補助:ChatGPT(OpenAI)

本作品の世界観、キャラクター、各エピソードの原案・展開は作者が制作し、それをもとにAIと相談・推敲を重ねながら、小説として文章化しています。

本作品は「小説家になろう」「カクヨム」の両サイトに掲載しています。

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