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着ぐるみモンスター Another  作者: 内田紀人
セミスピーカー編 3

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14/21

第4話「聞こえない」

着ぐるみモンスター


Another Story


「もし、あの時そこに則人がいなかったら」


第4話「聞こえない」


内田紀人 作


※この物語は、本編とは異なる世界線の物語です。


夜。


さとるは、一人で歩いていた。


街の明かりを避けるように。


人のいる場所を避けるように。


誰にも会わないように。


「…………」


昼間までとは。


まるで逆だった。


あれほど。


人を探していた。


誰かいないかな。


誰か、ぼくの話を聞いてくれないかな。


人影を見つけるたびに。


嬉しくなって。


声をかけて。


追いかけて。


もっと聞いてほしくて。


声を大きくした。


なのに。


今は。


人影を見つけると。


さとるの方から道を変えた。


話したら。


相手が苦しむ。


近づいたら。


逃げられる。


だから。


誰にも会わない方がいい。


「…………」


さとるは。


ずっと黙っていた。


こんなに長い時間。


誰にも話しかけなかったのは。


いつ以来だろう。


もしかしたら。


初めてかもしれない。



話したいことは。


たくさんあった。


今日あったこと。


怖かったこと。


みんなに逃げられたこと。


そして。


お母さんに会ったこと。


「…………」


お母さんは。


自分の名前を呼んでくれた。


手を伸ばしてくれた。


何かを。


一生懸命。


伝えようとしていた。


でも。


聞こえなかった。


「…………」


さとるは。


足を止める。


どうして。


聞こえなかったんだろう。


答えは。


分かっている。


自分の声が。


大きすぎたから。


「…………」


今まで。


そんなことを考えたことはなかった。


自分の話を聞いてほしい。


そのことばかり考えていた。


相手が何を言っているのか。


相手が何を伝えようとしているのか。


そんなことを。


考えたことがあっただろうか。


「…………」


さとるは。


また歩き始めた。



しばらくすると。


道の端に。


小さな水たまりがあった。


街灯の光が。


ぼんやりと映っている。


さとるは。


その前で足を止めた。


「…………」


水面に。


何かが映っていた。


大きな頭。


セミのような姿。


背中には羽。


腹には。


大きなスピーカー。


「…………」


さとるは。


しばらく。


その姿を見つめた。


「……ぼくじゃないみたい」


本当に。


小さく言ったつもりだった。


けれど。


ブォン。


腹のスピーカーが。


低く震えた。


「っ……!」


さとるは。


慌てて口を塞いだ。


静かになる。


「…………」


水面の中の怪人も。


口を押さえている。


自分と同じ動きをしている。


それでも。


さとるには。


それが自分だと思えなかった。


「…………」


ゆっくり。


その場に座り込む。


水面が揺れた。


怪人の顔も。


ぐにゃりと歪んだ。


「どうして……」


さとるは。


膝を抱えた。


どうして。


こうなったんだろう。


自分は。


ただ。


話を聞いてほしかっただけなのに。


それだけだった。


なのに。


みんなが逃げた。


怖がった。


耳を塞いだ。


お母さんまで。


苦しそうな顔をした。


「……ぼくが悪いのかな」


返事はない。


当たり前だった。


ここには。


自分しかいない。


「みんなが聞いてくれないからだよ」


ぽつり。


「だから、大きな声にしたんだよ」


誰も答えない。


「聞いてくれたら……」


そこで。


言葉が止まった。


もし。


みんなが聞いてくれたら。


本当に。


それだけでよかったのだろうか。


「…………」


さとるの頭に。


お母さんの姿が浮かんだ。


耳を塞いでいた。


苦しそうだった。


それでも。


何かを叫んでいた。


自分に。


何かを伝えようとしていた。


「…………」


でも。


聞こえなかった。


自分の声が。


大きすぎたから。



さとるは。


ゆっくりと。


腹のスピーカーに手を置いた。


「もしかして……」


初めて。


ほんの少しだけ。


違うことを考えた。


みんなは。


自分の話が嫌だったから。


逃げたんじゃないのかもしれない。


自分が嫌いだから。


逃げたんじゃないのかもしれない。


ただ。


「ぼくの声……」


スピーカーを見る。


「痛かったんだよね」


あの人は。


言っていた。


『うるさい! もうやめて!』


子どもたちも。


耳を塞いでいた。


お母さんも。


苦しそうに。


耳を塞いでいた。


「…………」


声が届いていなかったんじゃない。


届きすぎていた。


「…………」


さとるは。


ようやく。


そのことに気づいた。



今までは。


聞こえなければ。


大きくすればいいと思っていた。


もっと大きく。


もっと遠くまで。


どこにいる人にでも。


自分の声が届くように。


そうすれば。


きっと。


誰かが聞いてくれる。


そう思っていた。


でも。


違った。


大きくすればするほど。


みんなは。


遠くへ行った。


「…………」


さとるは。


スピーカーに手を置いたまま。


少しだけ。


音量を下げた。


カチ。


小さな音。


「…………」


もう一度。


カチ。


また。


少し下げる。


そして。


恐る恐る。


口を開いた。


「……聞こえる?」


今までより。


ずっと。


小さな声。


夜の道に。


静かに響いた。


「…………」


誰もいない。


返事もない。


それでも。


さとるは。


音量を上げなかった。


もう一度。


「……誰か」


少しだけ。


声が震える。


「聞いてくれる?」


静かな声。


今までなら。


返事がなければ。


すぐに大きくしていた。


聞こえないなら。


もっと大きく。


それしか。


知らなかったから。


でも。


今は。


「…………」


待った。


誰かが答えてくれるかもしれないと。


ただ。


待った。


夜の道は。


静かなままだった。


誰も。


答えてはくれなかった。


「…………」


寂しかった。


それでも。


さとるは。


もう。


音量を上げなかった。


聞いてもらうことと。


大きな声を出すことは。


同じじゃない。


そのことに。


ようやく。


気づき始めていた。


けれど。


まだ。


一つだけ。


分かっていないことがあった。


声を小さくしただけでは。


誰かが話を聞いてくれるとは限らない。


では。


どうすれば。


誰かに。


本当に聞いてもらえるのか。


「…………」


その答えを。


さとるは。


まだ知らなかった。


――つづく

本作品を含む、凛監修×生成AI合作作品は、同じ世界観の中でつながるシリーズ作品です。

それぞれ単独でもお楽しみいただけますが、同じ出来事が別作品では異なる視点から描かれたり、一方で起きた出来事が、もう一方の物語へつながったりすることがあります。

一つの作品だけでも楽しめる。

けれど、複数の作品を読むことで、初めて見えてくるものもある。

ぜひ、それぞれの物語をあわせてお楽しみください。

【人間×生成AIによる合作作品】

企画・原案・設定・ストーリー構成:時根脱才

文章制作・構成補助:ChatGPT(OpenAI)

本作品の世界観、キャラクター、各エピソードの原案・展開は作者が制作し、それをもとにAIと相談・推敲を重ねながら、小説として文章化しています。

本作品は「小説家になろう」「カクヨム」の両サイトに掲載しています。

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