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着ぐるみモンスター Another  作者: 内田紀人
セミスピーカー編 3

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13/21

第3話「帰りたい」

着ぐるみモンスター


Another Story


「もし、あの時そこに則人がいなかったら」


第3話「帰りたい」


内田紀人 作


※この物語は、本編とは異なる世界線の物語です。


夕方になった。


空が、少しずつ赤く染まっていく。


さとるは。


一人で歩いていた。


話を聞いてくれる人を探して。


何度も声をかけた。


何度も逃げられた。


そして今は。


どこへ向かえばいいのかも分からないまま。


ただ。


歩いていた。


「…………」


少し前なら。


この時間になれば。


家へ帰っていた。


玄関を開ければ。


兄弟たちがいる。


みんな好き勝手に話していて。


うるさいくらいだった。


お母さんも。


家の中を忙しそうに動いている。


その中で。


自分も話していた。


学校であったこと。


友達のこと。


描いた絵のこと。


今日見つけたもののこと。


聞いてほしくて。


たくさん。


たくさん話した。


でも。


いつも最後まで聞いてもらえたわけではなかった。


『あとでね』


何度も言われた。


お母さんが忙しい時。


兄弟の誰かが話している時。


何か別のことをしている時。


『あとでね』


あの言葉が。


嫌だった。


どうして今じゃダメなの?


ぼくの話なのに。


ぼくは今。


聞いてほしいのに。


だから。


思った。


誰にも無視されない。


どこにいても届く。


そんな大きな声があればいい。


そうすれば。


絶対に。


みんなが自分の話を聞いてくれる。


そして。


その願いは叶った。


今のさとるには。


街中に響くほどの声がある。


誰にも。


「聞こえない」


とは言わせない声がある。


なのに。


「…………」


誰も。


話を聞いてくれなかった。



さとるは足を止めた。


いつの間にか。


見覚えのある道まで来ていた。


「…………」


この道を進めば。


家がある。


「……帰ろうかな」


ぽつりと呟く。


帰れば。


お母さんがいる。


兄弟たちもいる。


知らない人は逃げた。


同じくらいの子どもたちも逃げた。


でも。


家族なら。


「…………」


さとるは。


ゆっくりと歩き出した。



家が近づいてきた。


けれど。


いつもと様子が違う。


「……あれ?」


家の前に。


何人もの大人が集まっていた。


近所の人。


知らない人。


誰かが電話をしている。


ざわざわと。


みんなが話していた。


さとるは。


少し離れた場所で立ち止まる。


その時だった。


「さとる!」


「…………!」


聞き慣れた声。


絶対に。


間違えない声。


「お母さん!」


さとるの顔が。


ぱっと明るくなった。


いた。


お母さんが。


自分を見ている。


自分の名前を呼んでくれた。


やっと。


やっと。


逃げずに。


自分を見てくれる人がいた。


「お母さん!」


さとるは一歩。


前へ出る。


「聞いて!」


嬉しくなった。


話したいことが。


いっぱいあった。


「ぼくね!」


今日あったこと。


みんなに逃げられたこと。


怖かったこと。


寂しかったこと。


全部。


全部。


お母さんに聞いてほしい。


「今日――!」


ブォン!


腹のスピーカーから。


大きな音が響いた。


「っ……!」


お母さんが。


両耳を塞いだ。


「…………え?」


さとるの声が止まる。


お母さんの顔が。


苦しそうに歪んでいた。


「お母さん?」


何かを言っている。


口が動いている。


必死に。


何かを叫んでいる。


でも。


「……なに?」


聞こえない。


「お母さん、何て言ってるの?」


自分のスピーカーから出た音が。


まだ耳の奥で響いている。


お母さんの声が。


聞こえない。


「もっと大きな声で言ってよ」


そう言いかけて。


さとるは止まった。


「…………」


今。


自分は。


何て言おうとした?



「お母さん!」


さとるが近づこうとする。


すると。


「危ない!」


周りにいた大人たちが。


お母さんの前へ出た。


「近づかないで!」


「下がって!」


「違う!」


さとるが叫ぶ。


ブォン!


また。


大きな音が響いた。


「その人、お母さんなんだよ!」


大人たちが耳を塞ぐ。


お母さんも。


顔を歪める。


「ぼくのお母さんなんだよ!」


また一歩。


近づこうとして。


止まった。


「…………」


お母さんが。


苦しそうだった。


自分が話すたびに。


お母さんが。


苦しそうな顔をする。


「…………」


さとるの足が。


動かなくなった。


お母さんは。


何かを言っている。


「さ……と……」


微かに。


聞こえたような気がした。


「お母さん……?」


もっと近くへ行けば。


聞こえるかもしれない。


そう思って。


一歩。


足を前へ出しかける。


けれど。


自分が近づけば。


また。


お母さんが苦しむかもしれない。


話したら。


もっと苦しませるかもしれない。


「…………」


さとるは。


初めて。


自分から。


一歩。


後ろへ下がった。



お母さんが。


手を伸ばした。


さとるも。


反射的に手を伸ばす。


「…………」


届かない。


あと少し。


歩けば届く。


それなのに。


二人の間は。


縮まらない。


「お母さん……」


声を出したい。


聞いてほしい。


今日あったこと。


怖かったこと。


知らない人に逃げられたこと。


子どもたちにも逃げられたこと。


本当は。


泣きたいくらい怖かったこと。


全部。


全部。


聞いてほしい。


「…………」


でも。


声を出したら。


また。


お母さんが耳を塞ぐかもしれない。


苦しそうな顔をするかもしれない。


「…………」


さとるは。


伸ばしていた手を。


ゆっくり下ろした。


そして。


もう一歩。


後ろへ下がる。


お母さんが何かを叫ぶ。


「さとる!」


今度は。


ほんの少しだけ聞こえた。


「…………」


自分の名前。


ずっと。


呼んでほしかった。


自分を見てほしかった。


話を聞いてほしかった。


なのに。


今は。


「……なんで」


さとるは。


小さな声で呟いた。


「ぼく……」


お母さんを見る。


「ただ、聞いてほしかっただけなのに……」


それだけだった。


誰かを困らせたかったわけじゃない。


怖がらせたかったわけでもない。


お母さんを。


苦しませたかったわけなんて。


絶対にない。


ただ。


聞いてほしかった。


それだけなのに。


「…………」


さとるは。


ゆっくりと背を向けた。


「さとる!」


お母さんの声がする。


けれど。


さとるは振り返れなかった。


今。


振り返って。


何かを話したら。


また。


お母さんを苦しませてしまう。


だから。


歩いた。


一歩。


また一歩。


自分の家から。


お母さんから。


離れていく。


帰りたかったはずなのに。


帰る場所は。


すぐそこにあるのに。


さとるは。


自分から。


遠ざかっていった。


――つづく

本作品を含む、凛監修×生成AI合作作品は、同じ世界観の中でつながるシリーズ作品です。

それぞれ単独でもお楽しみいただけますが、同じ出来事が別作品では異なる視点から描かれたり、一方で起きた出来事が、もう一方の物語へつながったりすることがあります。

一つの作品だけでも楽しめる。

けれど、複数の作品を読むことで、初めて見えてくるものもある。

ぜひ、それぞれの物語をあわせてお楽しみください。

【人間×生成AIによる合作作品】

企画・原案・設定・ストーリー構成:時根脱才

文章制作・構成補助:ChatGPT(OpenAI)

本作品の世界観、キャラクター、各エピソードの原案・展開は作者が制作し、それをもとにAIと相談・推敲を重ねながら、小説として文章化しています。

本作品は「小説家になろう」「カクヨム」の両サイトに掲載しています。

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