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着ぐるみモンスター Another  作者: 内田紀人
セミスピーカー編 3

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第1話「誰も来ない」

着ぐるみモンスター


Another Story


「もし、あの時そこに則人がいなかったら」


第1話「誰も来ない」


内田紀人 作


※この物語は、本編とは異なる世界線の物語です。


「これなら、みんな――ぼくの話を聞いてくれる!」


さとるは、嬉しかった。


身体はもう、人間の姿ではない。


セミを思わせる頭。


背中には羽。


そして。


腹には、大きなスピーカー。


けれど。


そんなことよりも。


今のさとるには、大事なことがあった。


声が。


大きくなった。


今までとは比べものにならないくらい。


少しくらい離れていたって届く。


誰かがほかのことをしていたって。


聞こえないはずがない。


もう。


「あとでね」


なんて言われなくて済む。


「ねえ!」


腹のスピーカーから、さとるの声が響いた。


ブォン!


空気が震える。


近くにいた人々が、一斉に振り返った。


さとるの顔が明るくなる。


見てくれた。


今度こそ。


聞いてくれる。


「今日ね!」


ブォン!


「学校でね!」


ビリビリと。


窓が震えた。


「ぼくの絵が――!」


「うるさい!」


「…………え?」


一人の大人が、両耳を塞いだ。


その横にいた人も、耳を押さえている。


「何だ、こいつ!」


「怪人だ!」


「逃げろ!」


「え?」


人々が。


さとるから離れていく。


一人。


また一人。


「待って!」


さとるは慌てて声を出した。


「まだ話の途中だよ!」


ブォン!


さらに大きな音が響く。


すると。


人々は立ち止まるどころか。


もっと速く逃げ始めた。


「…………」


さとるは首を傾げる。


どうして?


聞こえていないのだろうか。


こんなに大きな声なのに。


「待ってってば!」


呼び止める。


けれど。


誰も止まらない。


「なんで……?」


さとるは。


自分の腹についたスピーカーを見下ろした。


大きなスピーカー。


これがあれば。


どこにいても。


誰にでも。


声を届けられる。


そのはずだった。


「…………」


少し考える。


そして。


さとるは頷いた。


「そっか」


きっと。


まだ足りないんだ。


声が。


小さいから。


逃げていく人にまで、ちゃんと届いていない。


「じゃあ」


さとるは息を吸った。


「もっと大きくすればいいんだ」


スピーカーの音量が。


さらに上がる。


ブゥゥン――。


「ねえええええっ!!」


ドン!


声が街中へ弾けた。


近くの窓が震える。


看板が、ガタガタと音を立てる。


駐車していた自転車のベルまで。


りん。


りん。


と小さく鳴った。


「聞いてよ!」


逃げていた人たちが振り返る。


「今日、学校でね!」


さとるは嬉しくなる。


見てくれた。


やっぱり。


大きくすれば届くんだ。


けれど。


人々の顔に浮かんでいたのは。


笑顔ではなかった。


恐怖。


苦痛。


そして。


「早く逃げろ!」


一人が叫んだ。


また。


みんな走り出す。


「え?」


さっきよりも。


速く。


「待って!」


さとるが叫ぶ。


誰も止まらない。


「ぼく、まだ――!」


遠ざかっていく。


「まだ話してるのに!」


もっと。


遠くへ。


「ねえ!」


誰も。


振り返らなくなった。



「…………」


いつの間にか。


道には。


さとる一人しかいなくなっていた。


風が吹く。


さっきまで人がいた場所に。


誰もいない。


声なら。


どこまでも届く。


なのに。


聞いてほしい相手が。


いなくなってしまった。


「…………」


さとるは、ぽつりと呟いた。


「聞こえてないのかな……」


自分でも。


少し変だと思った。


あれだけの音を出した。


窓まで震えた。


それでも。


さとるには。


ほかの理由が思いつかなかった。


「もっと……」


腹のスピーカーへ手を添える。


「もっと大きくしたら」


今度こそ。


誰かが立ち止まってくれる。


今度こそ。


最後まで聞いてくれる。


そう思った。


「…………」


けれど。


誰も戻ってこない。


遠くにも。


人影はない。


「……まだ」


小さな声。


それでもスピーカーを通ると。


辺りへ響く。


「聞いてほしいこと」


さとるは。


誰もいない道を見つめた。


「いっぱいあるのに……」


少し前まで。


こんなはずじゃなかった。


話したい。


聞いてほしい。


ただ。


それだけだった。


大きな声さえあれば。


全部うまくいくと思っていた。


「…………」


さとるは。


もう一度。


ゆっくり息を吸った。


遠くにいる誰かにまで。


届くように。


さっきよりも。


もっと。


大きな声を出すために。


――つづく

本作品を含む、凛監修×生成AI合作作品は、同じ世界観の中でつながるシリーズ作品です。

それぞれ単独でもお楽しみいただけますが、同じ出来事が別作品では異なる視点から描かれたり、一方で起きた出来事が、もう一方の物語へつながったりすることがあります。

一つの作品だけでも楽しめる。

けれど、複数の作品を読むことで、初めて見えてくるものもある。

ぜひ、それぞれの物語をあわせてお楽しみください。

【人間×生成AIによる合作作品】

企画・原案・設定・ストーリー構成:時根脱才

文章制作・構成補助:ChatGPT(OpenAI)

本作品の世界観、キャラクター、各エピソードの原案・展開は作者が制作し、それをもとにAIと相談・推敲を重ねながら、小説として文章化しています。

本作品は「小説家になろう」「カクヨム」の両サイトに掲載しています。

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