第1話「誰も来ない」
着ぐるみモンスター
Another Story
「もし、あの時そこに則人がいなかったら」
第1話「誰も来ない」
内田紀人 作
※この物語は、本編とは異なる世界線の物語です。
「これなら、みんな――ぼくの話を聞いてくれる!」
さとるは、嬉しかった。
身体はもう、人間の姿ではない。
セミを思わせる頭。
背中には羽。
そして。
腹には、大きなスピーカー。
けれど。
そんなことよりも。
今のさとるには、大事なことがあった。
声が。
大きくなった。
今までとは比べものにならないくらい。
少しくらい離れていたって届く。
誰かがほかのことをしていたって。
聞こえないはずがない。
もう。
「あとでね」
なんて言われなくて済む。
「ねえ!」
腹のスピーカーから、さとるの声が響いた。
ブォン!
空気が震える。
近くにいた人々が、一斉に振り返った。
さとるの顔が明るくなる。
見てくれた。
今度こそ。
聞いてくれる。
「今日ね!」
ブォン!
「学校でね!」
ビリビリと。
窓が震えた。
「ぼくの絵が――!」
「うるさい!」
「…………え?」
一人の大人が、両耳を塞いだ。
その横にいた人も、耳を押さえている。
「何だ、こいつ!」
「怪人だ!」
「逃げろ!」
「え?」
人々が。
さとるから離れていく。
一人。
また一人。
「待って!」
さとるは慌てて声を出した。
「まだ話の途中だよ!」
ブォン!
さらに大きな音が響く。
すると。
人々は立ち止まるどころか。
もっと速く逃げ始めた。
「…………」
さとるは首を傾げる。
どうして?
聞こえていないのだろうか。
こんなに大きな声なのに。
「待ってってば!」
呼び止める。
けれど。
誰も止まらない。
「なんで……?」
さとるは。
自分の腹についたスピーカーを見下ろした。
大きなスピーカー。
これがあれば。
どこにいても。
誰にでも。
声を届けられる。
そのはずだった。
「…………」
少し考える。
そして。
さとるは頷いた。
「そっか」
きっと。
まだ足りないんだ。
声が。
小さいから。
逃げていく人にまで、ちゃんと届いていない。
「じゃあ」
さとるは息を吸った。
「もっと大きくすればいいんだ」
スピーカーの音量が。
さらに上がる。
ブゥゥン――。
「ねえええええっ!!」
ドン!
声が街中へ弾けた。
近くの窓が震える。
看板が、ガタガタと音を立てる。
駐車していた自転車のベルまで。
りん。
りん。
と小さく鳴った。
「聞いてよ!」
逃げていた人たちが振り返る。
「今日、学校でね!」
さとるは嬉しくなる。
見てくれた。
やっぱり。
大きくすれば届くんだ。
けれど。
人々の顔に浮かんでいたのは。
笑顔ではなかった。
恐怖。
苦痛。
そして。
「早く逃げろ!」
一人が叫んだ。
また。
みんな走り出す。
「え?」
さっきよりも。
速く。
「待って!」
さとるが叫ぶ。
誰も止まらない。
「ぼく、まだ――!」
遠ざかっていく。
「まだ話してるのに!」
もっと。
遠くへ。
「ねえ!」
誰も。
振り返らなくなった。
◇
「…………」
いつの間にか。
道には。
さとる一人しかいなくなっていた。
風が吹く。
さっきまで人がいた場所に。
誰もいない。
声なら。
どこまでも届く。
なのに。
聞いてほしい相手が。
いなくなってしまった。
「…………」
さとるは、ぽつりと呟いた。
「聞こえてないのかな……」
自分でも。
少し変だと思った。
あれだけの音を出した。
窓まで震えた。
それでも。
さとるには。
ほかの理由が思いつかなかった。
「もっと……」
腹のスピーカーへ手を添える。
「もっと大きくしたら」
今度こそ。
誰かが立ち止まってくれる。
今度こそ。
最後まで聞いてくれる。
そう思った。
「…………」
けれど。
誰も戻ってこない。
遠くにも。
人影はない。
「……まだ」
小さな声。
それでもスピーカーを通ると。
辺りへ響く。
「聞いてほしいこと」
さとるは。
誰もいない道を見つめた。
「いっぱいあるのに……」
少し前まで。
こんなはずじゃなかった。
話したい。
聞いてほしい。
ただ。
それだけだった。
大きな声さえあれば。
全部うまくいくと思っていた。
「…………」
さとるは。
もう一度。
ゆっくり息を吸った。
遠くにいる誰かにまで。
届くように。
さっきよりも。
もっと。
大きな声を出すために。
――つづく
本作品を含む、凛監修×生成AI合作作品は、同じ世界観の中でつながるシリーズ作品です。
それぞれ単独でもお楽しみいただけますが、同じ出来事が別作品では異なる視点から描かれたり、一方で起きた出来事が、もう一方の物語へつながったりすることがあります。
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【人間×生成AIによる合作作品】
企画・原案・設定・ストーリー構成:時根脱才
文章制作・構成補助:ChatGPT(OpenAI)
本作品の世界観、キャラクター、各エピソードの原案・展開は作者が制作し、それをもとにAIと相談・推敲を重ねながら、小説として文章化しています。
本作品は「小説家になろう」「カクヨム」の両サイトに掲載しています。




