第5話「正体、見つけた!?」
着ぐるみモンスター
Another Story
「もし、ぬらりひょんが口を滑らせたら」
第5話「正体、見つけた!?」
内田紀人 作
※この物語は、本編とは異なる世界線の物語です。
翌日。
則人は児童館に着くなり。
真っ先に、ボランティアのおじいちゃんを探した。
「いた!」
いつもの場所。
おじいちゃんは、子どもたちに囲まれて楽しそうに話している。
則人は少し離れたところで足を止めた。
そして。
じーっ。
「…………」
観察を始める。
今日こそ。
決定的な証拠を見つける。
そのつもりだった。
「則人くん」
「…………」
「則人くん?」
「…………」
「今日は何を調べるんだい?」
「うわっ!」
則人が飛び上がった。
いつの間にか。
おじいちゃんが、すぐ目の前に立っていた。
「な、なんで分かったの!?」
「毎日あれだけ見られたら、分かるよ」
おじいちゃんが笑う。
「今日は本気だから!」
「今までは本気じゃなかったの?」
「今までも本気!」
「じゃあ、今日はもっと本気なんだね」
「うん!」
「頑張って」
「うん!」
そこまで答えて。
則人が止まる。
「…………」
応援されてしまった。
「いいの?」
「何が?」
「ぼく、調べてるんだよ?」
「そうみたいだね」
「止めないの?」
「悪いことをしてないならね」
「…………」
則人は。
少しだけ調子を狂わされた。
でも。
すぐに気を取り直す。
「よーし!」
ノートを取り出した。
「今日は絶対見つける!」
「何を?」
「ひみつ!」
「はいはい」
おじいちゃんは。
やっぱり笑っていた。
◇
それからしばらく。
則人は、おじいちゃんのあとをこっそり追った。
お茶を飲む。
「…………」
ノートを見る。
もう知っている。
子どもと話す。
「…………」
普通。
本を片づける。
「…………」
普通。
床に落ちた紙を拾う。
「…………」
普通。
泣いている子をなだめる。
「…………」
すごく普通。
「うーん……」
則人は柱の陰から顔を出す。
「普通のおじいちゃんだなあ……」
これでは。
決定的な証拠にならない。
お茶を飲む。
妖怪に詳しい。
言うことが似ている。
それだけなら。
確かにぬらりひょんの言う通り。
偶然かもしれない。
「もっとこう……」
則人が考える。
「ぬらりひょんっぽいことしてくれないかな」
何をすればぬらりひょんっぽいのか。
自分でもよく分からなかった。
その時。
おじいちゃんが廊下の角を曲がった。
「あっ!」
則人が慌てる。
「待って!」
走って追いかける。
角を曲がる。
「…………え?」
誰もいない。
長い廊下が続いている。
右には壁。
左にも壁。
途中に扉はいくつかあるものの。
おじいちゃんが入ったような音はしなかった。
「…………」
則人がきょろきょろと辺りを見る。
「いない」
ついさっきまで。
目の前を歩いていたのに。
「どこ行ったの?」
一歩進む。
また周りを見る。
「おじいちゃーん?」
返事はない。
その時。
背後から。
「何をしとるんじゃ」
「うわあっ!」
則人が飛び上がった。
勢いよく振り返る。
「ぬらりひょん!」
そこには。
ぬらりひょんが立っていた。
「そんなところで何をしとる」
「今!」
則人が指をさす。
「なんじゃ」
「今、おじいちゃんがここ曲がったんだよ!」
「ほう」
「でも、いなくなった!」
「そうか」
「それで!」
則人が、ぬらりひょんへ指を向ける。
「ぬらりひょんが出てきた!」
「それがどうした」
「…………」
則人が。
じーっ。
ぬらりひょんを見る。
「なんじゃ」
「怪しい」
「またそれか!」
「だってタイミングよすぎるもん!」
「偶然じゃ!」
「ほんとに?」
「ほんとじゃ!」
「じゃあ、おじいちゃんどこ行ったの?」
「わしが知るか!」
「でも」
則人は。
ぬらりひょんの周りを一周する。
「な、なんじゃ」
「変身してない?」
「何にじゃ!」
「おじいちゃんから、ぬらりひょんに」
「するか!」
「ほんと?」
「ほんとじゃ!」
「背中にチャックとかない?」
「あるわけなかろう!」
則人が後ろへ回ろうとする。
「見るな!」
「怪しい!」
「どこがじゃ!」
その時だった。
「則人くん?」
「え?」
聞き慣れた声。
則人が振り返る。
廊下の向こうから。
ボランティアのおじいちゃんが歩いてきた。
「こんなところでどうしたの?」
「…………」
則人が固まる。
「おじいちゃん」
「うん?」
ゆっくり。
ぬらりひょんを見る。
「…………」
いる。
もう一度。
おじいちゃんを見る。
「…………」
いる。
右を見る。
おじいちゃん。
左を見る。
ぬらりひょん。
右。
左。
右。
左。
「…………二人いる」
ぬらりひょんが腕を組んだ。
「ほれ見ろ」
「えええええっ!?」
則人が大声を上げる。
おじいちゃんが驚いた。
「どうしたの?」
「いや、だって!」
則人がぬらりひょんを見る。
それから。
おじいちゃんを見る。
「じゃあ……違うの?」
「最初からそう言っとる」
ぬらりひょんが、少し得意そうに言った。
「でも……」
「まだ何かあるのか」
「怪しい」
「まだ言うか!」
おじいちゃんが首を傾げる。
「何の話?」
「なんでもない!」
則人が慌てて答える。
「そう?」
「うん!」
おじいちゃんは。
少し不思議そうにしながら。
そのまま歩いていった。
則人は。
その背中を見送る。
それから。
もう一度ぬらりひょんを見る。
「…………」
「なんじゃ」
「うーん……」
「いい加減、諦めたらどうじゃ」
「…………」
則人は。
まだ納得していない顔をしていた。
◇
児童館からの帰り道。
「絶対、何かあると思うんだよなあ」
「往生際が悪いぞ」
ぬらりひょんが呆れる。
「だって似てるところ多いもん」
「世の中には似た者もおる」
「お茶も好きだし」
「それは多い」
「濃いお茶も好きだし」
「それも珍しくない」
「妖怪にも詳しいし」
「わしは妖怪じゃ」
「言うことも似てるし」
「偶然じゃ」
「『見えないからって、いないとは限らない』って言ったし」
「普通の考え方じゃ」
「最初に」
則人が。
ちらりとぬらりひょんを見る。
「『あの爺さん』って言ったし」
「…………」
「ほら!」
「何がじゃ!」
「また黙った!」
「うるさい!」
「そこだけ全然説明してないじゃん!」
「言い間違いじゃ!」
「知らない人を『あの爺さん』って言い間違える?」
「言う時もある!」
「ほんとかなあ」
則人が、にやっと笑う。
ぬらりひょんは。
ものすごく嫌そうな顔をした。
「じゃあさ」
「なんじゃ」
「今度」
ぬらりひょんの眉が動く。
「おじいちゃんと一緒にお茶飲もうよ」
「…………」
ぬらりひょんが止まった。
則人も止まる。
「…………」
「…………」
数秒。
「どうしたの?」
「別に」
「また止まった!」
「止まっとらん!」
「止まったよ!」
「考え事じゃ!」
「何考えてたの?」
「…………」
則人の目が輝く。
「また止まった!」
「やかましい!」
「やっぱり怪しい!」
「怪しくない!」
「じゃあ一緒に飲める?」
「…………」
「飲めない?」
「…………」
「どっち?」
ぬらりひょんが大きく息を吐く。
「好きにせい」
「ほんと!?」
則人の顔がぱっと明るくなる。
「じゃあ、まだ調べていいんだ!」
「そういう意味ではない!」
「今度は二人を一緒に調べる!」
「やめんか!」
則人は笑いながら走り出した。
「絶対いつか、正体見つけてやるからねー!」
「だから何の正体じゃ!」
ぬらりひょんの声が響く。
「待たんか!」
「じゃあねー!」
則人は。
楽しそうに走っていった。
◇
結局。
その日。
則人が探していた決定的な証拠は。
見つからなかった。
目の前で。
児童館のおじいちゃんと。
ぬらりひょんが同時に存在していた。
普通に考えれば。
それで終わりのはずだった。
けれど。
則人の中に残った小さな疑問は。
なぜか。
消えなかった。
少し離れた場所。
一人になったぬらりひょんが。
深いため息をつく。
「まったく……」
そして。
ほんの少しだけ。
困ったように笑った。
「しつこいところまで、よく似とる」
誰に似ているのか。
その名前までは。
口にしなかった。
――Another Story 完
本作品を含む、凛監修×生成AI合作作品は、同じ世界観の中でつながるシリーズ作品です。
それぞれ単独でもお楽しみいただけますが、同じ出来事が別作品では異なる視点から描かれたり、一方で起きた出来事が、もう一方の物語へつながったりすることがあります。
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企画・原案・設定・ストーリー構成:時根脱才
文章制作・構成補助:ChatGPT(OpenAI)
本作品の世界観、キャラクター、各エピソードの原案・展開は作者が制作し、それをもとにAIと相談・推敲を重ねながら、小説として文章化しています。
本作品は「小説家になろう」「カクヨム」の両サイトに掲載しています。




