52話:交易路の果て
出発の朝、空は晴れていた。
皮肉なほど、よく晴れていた。夏の終わりの青い空が、焼け焦げた屋根の上に広がっている。
十四人が空き地に集まった。荷物は少なかった。持ち出せたものだけだ。食料と水と、着られるだけの衣服。ベシムが水の入った革袋をいくつか担いでいた。ルシェンは布に包んだ刃物を一本だけ腰に差した。
出発の前、ファトマが広場に行こうとした。
「後ろにいてください」とルシェンは言った。
ファトマが止まって、ルシェンを見た。
「先に立て、ということか」
「はい」
しばらくの間、二人は見合った。
ファトマが頷いた。初めて、ルシェンの言葉にそのまま従った。後ろに下がった。
ルシェンは列の先頭に立った。誰かが決めたわけではなかった。気づいたら先頭にいた。それが自然だった。
「行くぞ」と言った。
歩き始めた。
***
交易路の石畳を踏んだ。
足の裏が石の感触を覚えている。凹凸を覚えている。どこに割れ目があるか、どこに水たまりができやすいか、どこの石が冬に凍るか——全部、足の裏が知っていた。
この道を何千回と歩いた。
鍛冶場へ。広場へ。市場へ。ティセラの家へ。ファトマの宿へ。丘へ。ベシムの家へ。交易路を行き交う旅人に声をかけた場所へ。春の朝に、夏の夕方に、雪の朝に、何千回と歩いた道だ。
今日、最後に歩く。
後ろから十三人の足音が続いている。それがここにいる全員だ。
ルシェンは前を見た。南へ続く道を見た。
***
しばらく歩いたとき、ティセラのことを思った。
自然に思った。「覚えている」という声が、どこかから来た。一字一句、覚えている。ティセラの声は完全記憶の声だから、その言葉はどこかに全部残っている。この村で生きた時間の全部が、ティセラの巻物の中にある。
ドラガンのことも思った。「まかせとけ」という声が来た。あの笑い方と一緒に来た。名前も知らない星を、知らないままでいたいと言った夜のドラガンが、声と一緒に来た。
三人の声が、財産の全部だった。
ポケットにルマの地図がある。三人の声がある。それだけを持って、南へ歩いている。
***
村がずいぶん遠くなったとき、一度だけ振り返った。
メシャラ村の輪郭が、小さくなっていた。
焼けた屋根。崩れた壁。黒い煙の名残りが、まだかすかに立っている。かつて家だったものの形が、遠くから見るとよく分かった。一軒一軒の形が、よく分かった。
その中に、幾何学的な黒い形があった。
スポメニックだ。
抽象的な形。どの種族の名前も刻まれていない碑。誰のものでもない碑。エルフの旗でもなく、ドワーフの旗でもなく、連邦旗でもなく——何も背負っていない形が、焼けた村の中に、無傷で立っていた。
誰のものでもなかったから、誰も壊さなかった。誰の碑でもなかったから、誰の標的にもならなかった。
誰もいなくなった村に、それだけが残っていた。
ルシェンはしばらくその形を見ていた。
見てから、前を向いた。
***
前を向いて、歩いた。
交易路が南へ続いている。どこまでも続いている。石畳が切れても、土の道が続く。山を越えても、また道がある。道は終わらない。
しばらく歩いたとき、前方に人の群れが見えた。
同じ方向へ、同じ速度で歩いている。荷物を担ぎ、子供を連れ、老人を支えている。別の村から来た人々だ。別の道を歩いてきて、この交易路で合流している。
ルシェンたちの列が、その列に近づいていった。
気づいた者が振り返った。目が合った。同じものを持っている目だった。同じものを失った目だった。
合流した。列が大きくなった。
ルシェンは列の中に入りながら、前を見た。
(これが始まりだ)
その声は、絶望ではなかった。終わりではなかった。
(終わりではなく、始まりだ)
交易路が南へ伸びていた。足が動いていた。後ろに十三人の足音がある。前に見知らぬ者たちの背中がある。
ルシェンは歩き続けた。
第1章「黄金の揺籃」了




