51話:灰の中で
夜明けから、名前を呼んだ。
廃屋の影から、路地の奥から、声が返ってくる者とこない者がいた。返ってきた声を空き地に集め、また別の路地を確認した。また名前を呼んだ。
頬の傷が痛んだ。痛みを後にした。今は動くだけだ。
一人、また一人。数が増えていった。増えるたびに、また探した。二時間かけて、来られるだけの者が集まった。
数えた。
十四人。
もう一度、数えた。
十四人だった。
ルシェンは数字を頭の中で繰り返した。繰り返すことで、受け入れようとした。受け入れきれなかった。繰り返し続けた。
***
ファトマを探した。
広場には行けなかった。広場の中央に何かがある。近づきたくなかった。迂回して、村の南の路地を一本一本確認した。
三つ目の路地の壁に、白い頭巾が見えた。
「ファトマさん」
壁にもたれていた。目が開いた。意識がある。
「ルシェン」とファトマは言った。声が細かった。「何人いる」
「今のところ十四人です」
「続けなさい」
それだけ言って、目を閉じた。怪我をしているが、命に別状はない。ルシェンはファトマの腕を取って立たせた。ベシムを呼んで、支えさせた。
また探した。
もう来なかった。
***
鍛冶場に戻った。
屋根の半分が落ちていた。
北側の屋根が崩れ、梁が折れて内側に落ちている。工具棚が倒れていた。入り口の戸が燃えた後があった。床に灰が積もっていた。
それでも——。
炉の石組みは残っていた。
ボグダンの金床は残っていた。
梁が落ちてきても、炉の石は崩れなかった。金床は重すぎて動かなかった。燃やしようがない鉄の塊が、そのまま作業台の横に立っていた。
ルシェンは崩れた屋根の下をくぐり、金床の前に立った。
灰が積もっている。梁の欠片が周りに落ちている。その中で、金床だけが変わらずにある。ボグダンの槌跡が刻まれた、重い鉄の面が。
膝をついた。
涙が来た。止めなかった。来るだけ来させた。ファトマのことを思った。ハサンのことを思った。今朝も名前を呼んで、返事が来なかった者たちのことを思った。
泣きながら、崩れた鍛冶場を見回した。
壊れた梁。落ちた屋根。散らばった道具。
それから立った。
焼けた石壁に手を当てた。冷たい。夜の炎が去った後の、冷えた石だった。
(知っていた)
崩れた鍛冶場の中に、ルシェン一人だった。
(ずっと知っていた。何をするべきか、分かっていた。なのに——何もしなかった。もう二度と、傍観者にはならない)
声は出なかった。声にする必要がなかった。その言葉は石壁に向かうものではなく、胸の底に落ちるものだった。落ちて、そのまま沈んだ。
焼けた木の匂い。灰の匂い。鉄の匂い。鍛冶場の匂いが、まだそこにあった。
***
空き地に戻った。
十四人が座っていた。水を飲んでいる者、傷の手当てをしている者、ただ座っている者。
「どうする」と誰かが聞いた。誰でもない声で、全員の問いとして来た。
「どこへ行くんだ」
ルシェンはポケットに手を入れた。
折りたたまれた紙の感触があった。ずっとそこにあった紙だ。ルマが渡したノームの自治都市の地図。「居場所が必要になれば、来なさい。ノームは出自を問わない」——別れ際にルマが言った言葉。
「南に、行ける場所がある」とルシェンは言った。
十四人がルシェンを見た。
「ノームの自治区まで、どのくらいかかるんだ」
「歩いて十日以上かかる。だが道は知っている」
誰も反論しなかった。反論する体力が残っていなかった。それとも、もうここに留まる理由が誰にも見えなかったからかもしれない。
ルシェンは紙をポケットに戻した。
「今夜は休む。明日の朝、出発する」
それだけ言った。




