36話:父と子
書類が来たのは、鍛冶場に馬の使者が乗り入れてきた音で気づいた。
ドラガンは金床の前にいた。仕上げの途中の蹄鉄が一枚、赤く熱を保ったままある。だが使者が鍛冶場の口まで来て「ボグダン・ホルヴァトはここか」と声を上げたとき、金槌が自然に止まった。
父が前に出た。
使者が封蝋のある書類を差し出した。封蝋は西部山岳領の紋章——金の鎚と黒の山。ドワーフ連合の印だ。
父が受け取り、使者が帰っていった。
父が書類を開いた。読んだ。
閉じた。
それだけだった。
***
その日、鍛冶場は音がしなかった。
炉に火は入っていた。いつも通りの温度に。蹄鉄の続きを父が打てば、ドラガンはその補助に入れる段取りだった。だが父は炉の前の椅子に座ったまま、何もしなかった。
ルシェンが空気を読んで黙っていた。ドラガンも黙っていた。
金床が沈黙している。金槌が沈黙している。炉だけが、いつも通りに燃えていた。
午後になってルシェンが「今日はもういいですか」と言い、父が「ああ」と答えた。ルシェンが出ていった。
ドラガンは残った。
父は気づいたかもしれないが、何も言わなかった。
***
夜、二人で夕食を食べた後、ドラガンが口を開いた。
「行くのか」
父が箸を置いた。
長い間、黙っていた。
「俺はここで工房を作った」と父は言った。「お前が生まれたのはここだ」
「でも、同盟は」
「お前には関係ない」
いつもと違う言い方だった。「心配するな」でも「大丈夫だ」でもなかった。もっと重い言い方だった。「お前には関係ない」という言葉が、お前を守るための言い方に聞こえた。
「関係ある」とドラガンは言った。
父がドラガンを見た。
「俺は、ここで生まれた。ここが故郷だ。でも俺はドワーフで、親父もドワーフで——同盟がドワーフの鍛冶師を呼んでいる。それは、俺には関係ない話なのか」
父の顔が、少し変わった。
「お前は鍛冶師になれ」と父は言った。「鍛冶師は、どこにいても鍛冶師だ」
それだけ言って、杯を手にした。話が終わった、という父の動きだった。
ドラガンは続けなかった。
***
夜中に一人で鍛冶場に入った。
炉は落ちていた。暗い中で金床の感触だけを確かめた。でこぼこした、重い鉄の面。父の槌跡がそこかしこに刻まれている。指でなぞると、一打一打の力の違いが分かる気がした。
何百回。何千回。父がここに立って打ち続けた跡が、金床に刻まれている。
ドラガンも打ってきた。父の横で。父の後ろで。父の打ち方を見て、父の火の読み方を盗んで。
(ここが変わるかもしれない)
その言葉が来たとき、胸の中でずっしりとした何かが動いた。
悲しみとも怒りとも違う。もっと重くて、名前のついていない何かだった。
父は「どこにいても鍛冶師だ」と言った。それはそうだ。道具があれば、火があれば、鉄があれば——どこでも打てる。
だが金床は、持っていけない。
槌跡は、金床に残る。
ドラガンは手を金床の上に置いたまま、炉の向こうの暗がりを見ていた。
***
翌日の午後、村の交易路を歩いていたとき、遠縁の若いドワーフがドラガンに声をかけてきた。
クドヴィッチ家の末っ子。名前はレンコ。ドラガンより一歳上で、子供の頃に何度か遊んだことがある。重い荷物を担いでいた。
「よう。西に向かうのか」とドラガンは言った。
「ああ。行くことにした」レンコが明るい顔で答えた。「故郷が呼んでいる。同盟があれば、仕事も家もある。ここよりいい場所になる」
「そうか」
「ドラガンは来ないのか。お前の父さんほどの腕なら、同盟でも引く手あまたのはずだ」
「まだわからん」
「早い方がいい。道が変わる前に動いた方がいい——上の人たちはそう言っている」
レンコが手を振って歩いていった。西の方へ。
ドラガンはその背中が見えなくなるまで、交易路に立っていた。
明るい顔だった。
何も迷っていない顔だった。
その顔が、ドラガンにはどうしても、羨ましいとは思えなかった。




