35話:独立の声
ノームは小さな種族だ。
平均的なヒューマンの子供ほどの身長に、細い手足、大きな目。動きは精確で、言葉は選ばれていて、感情を外に出すことが少ない。ルシェンがこれまでに話したことのあるノームは二人だけで、どちらも旅の途中に一泊しただけの商人だった。
今回は、三人だった。
ファトマの宿に荷物を運び込むのを手伝ったとき、ルシェンはその量に気づいた。旅行者の荷物ではなかった。引っ越しの荷物だった。
荷物の中に、本がたくさんあった。
***
夕食の給仕を頼まれた。宿の手伝いをするのはいつものことだ。ルシェンが料理を運ぶと、三人のうちの一人が顔を上げた。
「手伝いをしてくれているのか。ありがとう」
女性だった。四十代。髪は灰がかった白。大きな目が静かに光っている。
「ルマ・テリオスという。ノーム評議会の研究部門にいた」
いた、という過去形が引っかかった。
「ノームの方がこちらを通られることは少ないですね」とルシェンは言った。
「普段はね。今は特別だ」
もう一人が「余計なことを」と言いかけた。ルマが手を振った。
「知っていることを話して、何が悪い。若い人は知らないより、知っている方がいい」
ルマがルシェンに向き直った。
「ノーム評議会は、連邦から段階的に離脱することを決定した。正式な決議だ。皇帝が崩御される前から、その方向で動いていた。感情的な話ではなく、合理的な判断だ」
***
料理を運びながら、ルシェンは話の続きを聞いた。
ルマの話し方は静かで、淡々としていた。数字を好んだ。感情を使わなかった。
「この村は交易路の交差点にある。そういう村は——」ルマが少し考えた。「最初に争点になる可能性がある。二つの種族が領土を主張する地点では、必ず衝突が起きる。三つ以上の種族が混在する場合、最終的に一つか二つに集約される傾向がある」
「ヒューマンは」とルシェンは聞いた。
「どちらからも必要とされない、という選択肢もある」
ルシェンは次の言葉を探した。見つからなかった。
「この村はどうなりますか」
「わからない」とルマは言った。「わかっていたら、通り道に選ばなかったかもしれない。わからないから——この村がまだ機能している今のうちに通ることにした」
その答え方が、ルシェンには正直に聞こえた。
「連邦が完全に壊れるまで、どれくらいかかると思いますか」
ルマが少し考えた。「私の計算では、三年以内だ」
三年。
ルシェンは料理の皿を持ったまま、少しの間、その数字を頭の中に置いた。
***
その夜、ルシェンは一人で鍛冶場の裏手に座っていた。
炉の火は落ちている。余熱だけが石壁の向こうにある。
前世の記憶を手繰った。夢の中で見た断片——砕ける地図、燃える街、灰色一色になった地図。そして数字。七年。国が壊れるまでの時間として、夢の中の記憶に刻まれていた数字。
ルマが言ったのは、三年だった。
七年と三年。
(どちらが正しいか、じゃない)
丸括弧の中の声が静かに続いた。
(どちらにせよ——方向は同じだ)
この村に使者が増え、旗が立ち、市場が細り、書室に演説の清書が届き、公式の離脱決議が出る——その向こうに待っているものを、ルシェンは夢の中で見ていた。
夢が正しいとは限らない。ルマの計算も間違いかもしれない。だが信じたいという気持ちと、信じられないという感覚は、別のものだ。
月が雲に入った。
***
翌朝早く、ノームの三人が出発の支度をしていた。
ルシェンが荷物を運ぶのを手伝った。最後にルマが振り返った。
「ありがとう。よく聞いてくれた」
「こちらこそ」
ルマが懐から一枚の紙を取り出した。折りたたまれた、薄い紙だ。
「ノームの自治都市の地図だ。主要な都市と、連絡先が書いてある」
差し出された。ルシェンは受け取った。
「ノームは出自を問わない。職人なら——特に、金属を扱える者なら、歓迎する」
ルマの目が静かに光っていた。
「居場所が必要になれば、来なさい」
三人の馬が交易路を南へ向かっていく。ルシェンはその背中を見送った。
紙をポケットにしまった。深い方へ。
ファトマの宿の煙突から朝の煙が上がっていた。炉に火を入れる時間だった。




