101話:冬の包囲
冬が来た。
包囲開始から、八か月目だった。
最初の雪がある朝、街に降った。重い雪ではなかった。だが、街の屋根を白くした。
ルシェンは城壁の上で雪を見た。
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冬の包囲はこれまでとは別の段階だった。
食料が底をつき始めていた。市場の野草も減ってきていた。穀物の在庫は配給制で計算してもあと一か月分しかなかった。
薬はもっと深刻だった。普通の感冒薬はすでに底をつきかけていた。重傷者用の薬はわずかしか残っていなかった。
燃料も不足していた。薪は街の中の燃やせる木材をほぼ使い切っていた。今は家具を解体して燃料にしていた。
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ルシェンは毎朝数字を見ていた。
数字は悪化していた。
ルシェンは数字を隠さなかった。組織の中では共有した。市民組織にも共有した。ファトマが市民組織を通じて、数字を住民にも伝えた。
「隠せば、噂が悪化する」とファトマは言っていた。「事実を伝えれば、人は自分の判断で生活を整える」
市民は自発的に食事の量を減らした。一日二食を一食半にした。さらに減らした家庭もあった。野草を自分で街の中の小さな緑地から摘んできた家庭もあった。
誰も不平を言わなかった。言っても変わらないことを皆、わかっていた。
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ある朝、見張りの兵が死んだ。
凍死だった。夜の見張りに立っていた若いヒューマンの兵士だった。装備の防寒が不足していた。布の外套は何重にも重ねていたが、それでも、夜の冷気を防ぎ切れなかった。
朝、交代に来た兵が見張り台の隅で座ったまま動かない仲間を見つけた。すでに息はなかった。
ルシェンは報告を受けた。
手帳を開いた。
書いた。
「タリン。ヒューマン。十九歳。北の見張り台、凍死。装備の防寒が不足」
その下に書いた。
「装備の見直し。すべての見張りに毛皮の外套を追加配布。在庫を確認」
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数日後、別の死が来た。
市民の老人だった。栄養失調が悪化して、肺炎になった。薬がなかった。
ファトマが看取った。
ルシェンはその夜、ファトマの家に寄った。
「市場は明日も開く」とファトマがルシェンの顔を見るなり、言った。
「ファトマさん」
「うむ」
「ご無理をなさらないでください」
「私は無理はしていない」とファトマは言った。「明日、開くと言ったから、明日、開く。それだけだ」
「ファトマさんが無理をすれば、街が無理をすることになります」
「私は街の長老だ」とファトマは言った。「街が無理をするとき、私が先に無理をする。それが長老の仕事だ」
ルシェンは何も言えなかった。
ファトマの声は少し弱くなっていた。脇腹の傷は長く動くと、痛むようだった。冬の寒さが傷に応えていた。
しかし、ファトマは毎朝起きていた。市場に出ていた。
***
子供たちが栄養失調の兆候を見せ始めていた。
頬がこけて。目の周りが暗くなって。手足が細くなって。
医療所では子供を優先的に治療した。だが、治療には栄養が必要だった。栄養が街全体で不足していた。
ある日、ルシェンが医療所を視察したとき、ある母親が子供を抱いて、泣いていた。
子供はもう動かなかった。
母親がルシェンを見た。何も言わなかった。ただ、ルシェンを見た。
ルシェンは母親に頭を下げた。
手帳に子供の名前を聞いて、書いた。
「ヴェル。ヒューマン。五歳。栄養失調による肺炎。母タリヤ」
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地下トンネルの工事は続いていた。
ゴルダンが現場の指揮を執っていた。冬の寒さで土が凍り始めていた。掘る速度が落ちていた。一日に二メートルが限界になっていた。
ルシェンは毎晩ゴルダンから報告を聞いた。
「あと、八十メートル」とゴルダンは言った。「土の質が変わってきている。地下水脈の近くということだ」
「水脈に近いということは」
「外の川に近いということだ。包囲線の下を抜けかけている」
ルシェンは頷いた。
「坑夫たちの体力は」
「落ちている。だが、皆、頑張っている。一日二食でも頑張れる」
「食料の優先配給を続けます。坑夫には他より一割多く」
「それで足りないが、ありがたい」
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ある夜、地下から報告が来た。
「土の質が急に変わりました。柔らかい。地下水脈の本流の近くです」
ルシェンは現場に降りた。
地下は暗かった。ランタンがぼんやりとトンネルの先を照らしていた。
ルシェンが土を触った。確かに柔らかかった。湿っていた。
ゴルダンが隣に立った。
「あと、五十メートル」とゴルダンは言った。「土の質が続けば、二週間で抜ける」
「抜ければ」
「外の川の岸に出る。物資を運び込める」
ルシェンは頷いた。
「やれ」
「やります」
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ルシェンは地上に戻った。
夜の街を歩いた。雪が降っていた。
市場の方角を見た。市場は今日も夕方まで開いていた。今は閉じている。明日の朝、ファトマがまた開く。
ルシェンはファトマのところに寄ろうとして、やめた。今夜はファトマを休ませる方がよかった。
代わりに自室に戻った。
***
手帳を開いた。
名前の数を数えた。
冬に入ってから、また増えていた。タリン、老人三人、ヴェル、それから戦闘で死んだ兵士たち。冬の前から合わせて八十四になっていた。
ルシェンはしばらく手帳を見ていた。
書いた。
「冬。最初の月。死者、八十四。うち、戦闘以外、十二」
「トンネル、あと、五十メートル」
「ファトマさん——『市場は明日も開く』」
***
手帳を閉じた。
ランタンの火を見た。
火は今夜少し弱かった。油の質が悪くなっていた。在庫の良い油は医療所に回していた。
ルシェンはその火をしばらく見ていた。
***
窓の外で雪が降り続けていた。
街は白くなっていた。
白い街の上にエルフとドワーフの旗がまだ地平線に見えていた。
旗は雪の中でも揺れていた。
***
ランタンを消した。
暗闇の中でルシェンは寝台に入った。
目を閉じた。
眠りに入る前に内心でひとつの言葉を繰り返した。
(あと、五十メートル)
(坑夫たちが毎日二メートル掘る)
(二十五日で抜ける)
(抜ければ、物資が入る)
(市場が明日も開く)
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眠りに落ちた。
夢は見なかった。




