episode 11
「さあ、最後のステージです!
二人共、存分に戦ってくださいね!」
そう言うとボタン君はどこかへ消えた。
俺は黙ってタクの目を見た、彼も俺を見ている。お互いボロボロで座っている、多分立つこともできないだろう。
「残ったのは…俺達だけか。」
タクは冷静に状況を把握していった、流石だ。俺なんかさっきの事でまだ頭がいっぱいなのに…
「あのさ、ひとつ聞いていいかな?」
ずっと疑問だったことをタクに聞こう。そう思って放った言葉だった。
「何?」
「"俺を殺す"って躍起になってたのは何で?」
タクは会う度に俺を「弱い」とか「殺す」とかずっと言っていた。それはなぜか、今のうちに聞いておこうと思ったのだ。
「……親友が他人に殺されるのなんて見たくなかった。俺が…せめて俺がお前を終わらそうと思ったんだ。」
……ん?どうゆうことだ?
大切なものを他人に壊されるくらいなら自分が壊す…?メンヘラ?
考えれば考えるほどタクの考えが分からなくなってきた。いや、理解は出来なくもない。けど…やはり常識からは外れたものだと思う。
しかしそんな事も親友の為を思っての行動なんだ。タクは俺をよく考えてくれていた。
そう考えると、やっぱりタクは友達思いの良い奴だと感じられる。
こんな奴を殺すなんて、俺には無理だ。タクが生き残るべきだ。
そりゃ俺も死にたくない、「死」を考えると恐怖で震えが止まらないさ。でも、今までのプレイヤーが死んだのはGM側のせい。GMのリーダーは俺の親だ、その責任をどうにか取りたい。俺が死んだところで償いきれる罪じゃないが、せめてあの世で皆に謝りたい。
そう決意した時、自然と身体の痛みが引いていった。
俺は立ち上がりハンドガンを握りしめる。
「じゃあタク、始めようか。」
「は?何を始めるんだよ?」
「最後の戦いさ、どっちが生き残るか決めるためのね。」
タクは困惑した表情をしている、それでも俺は真っ直ぐ彼の目を見た。
「お前、殺し合いはしたくないって…」
「ああ、したくない。
でももし戦わないでいてショウコさんみたいになったら?
両方とも死ぬくらいならせめて、どっちか生き残ろうぜ。」
タクは何かを言おうとしたが、唇を噛んで言葉を飲み込んだ。
ヨロヨロと刀を地面につきながらゆっくりとタクは立ち上がった。
「なら、手加減はしねぇ。やるなら全力だ。」
「ああ、望むところだ!」
そう言って俺はハンドガンをタクに向けた、するとタクは負傷した右手でそれを払い左手で持つ刀を斬りあげた。
刀に気づき俺はスレスレで避ける、左拳でタクの腹を殴った。タクは嗚咽を吐き膝をついた。
「どうした?まだこれからだぞぉ!」
タクの髪を掴み顔面に膝蹴りを食らわせた、鼻血を出しながら仰け反る。
しかしそのまま倒れるのではなく、タクは俺の右腕を掴んで引っ張った。それにつられてよろけると、タクは渾身の頭突きを俺の額に当てきた。
「ってぇ…
中々、やるじゃないかタク。」
「どうした?これからなんだろ?」
俺は銃口をタクの腹に向け3発撃ち込む、耐えきれずタクは俺を離しよろけた。
今だ!
左拳を力の限り握りしめ殴りかかる、すると咄嗟にタクは刀を横に振った。突然、左側が真っ赤になり見えなくなった。その刃は俺の鼻と左目を斬ったのだ。
足を止め左目を抑えた、指の間からは血がボタボタと流れていた。しかし痛みはない、そんな事など考える余裕なんてない。
「お、おい!大丈夫か!?」
「ああ…大丈夫。
いいから、続けよう。」
俺は目から手を離しハンドガンを持つ右手を支える、左目からは依然として血が流れていた。
タクは何かを言おうとしたが止めた、言葉を噛み殺し構えをとる。
トリガーに指をかけるとタクは刃先をこちらに向けて一直線に向かってきた。咄嗟にタクの右半身に身体をやるとタクは、右手でハンドガンを掴み銃口を下に向けた。左手を離し振りかぶると突然、激通が走った!目を向けると刀は左腕を貫通して地面に刺さっていた!
「ぐっ、くそっ!」
左腕を動かそうとしても刀がしっかりと固定されていて出来ない。
タクは刀を持っていた左手を離し拳をつくった。
「終わりだ…マサル。」
タクが拳を振りかぶった時、俺は右手に持つハンドガンを離した。突然の事にタクは落ちるハンドガンと共に前にバランスを崩す。それに合わせ右拳を腰まで引きタクの顎を目掛けて一気にかち上げた。
アッパーカットは見事に直撃しタクは、後ろへ倒れた。
「ああ…終わりさ……」
刀を抜き遠くへ投げた。落としたハンドガンを拾いタクの足元まで行く。息を切らして大の字になって横たわるタクに俺は、銃口を向けた。さらに一歩進むとタクはハンドガンを頭上へ蹴り上げた。思わず目線をハンドガンに合わせていると足を蹴られ転んでしまった!
タクは素早く立ち上がり落ちてくるハンドガンを取り銃口を俺に向けた。
無言のままタクは俺を見た。俺もタクを見ていた。
「…殺れよタク。」
「……嫌だよ。」
「いや…もういいよ……
俺は死んでった人に謝らなきゃいけないからさ。早く終わらせてくれ。」
そう言うとタクは大きな雫を一粒落とした。
それを合図にどんどんどんどん目から涙を流した。我慢しようとしても止まらない。そんな表情をしていた。
「なんて顔なんだよ…最後くらい……笑おうや。」
何でだろう…俺もいつからか涙を流していた。止まらない…止めたくても、やっぱり止まらない。
あぁ、やっぱり死にたくないわ。死ぬって怖いもんだな。
ハンドガンを持つタクの手は震えていた。
「…親友を手にかけるってのはあんまし良い気分じゃないな。」
「ああ。」
「覚悟はしていたけど…他人を殺るのとは訳が違うな。」
「ああ。」
「……何も言うことないのか?」
「…ああ。」
何も言うべきじゃない。俺は黙って殺されよう。
俺は黙って目を閉じた。
「…さよならだ、マサル。」
「ああ。」
「……うおおおお!!!」
ダンッ!
さよなら、タク。俺の親友でいてくれてありがとう。




