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漫才ガール!!  作者: わったん
第三幕 〝らんきりゅう〟編
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第61話 ライブの結果は…

 ライブが終わってしばらくした頃、フラッシークラウンの二人が仕事先の近くに着いたので、タクシーを降りて歩いていると、荒木のスマホに電話が掛かってくる。荒木は、着信相手の名前を確認するとすぐに電話に出た。


「お疲れ様です。…はいもう着きました。…あー…ランキングですか…。お願いします。」


「お!なんや!ライブの結果か!?」


 大場は、電話がライブ会場からのもので、ランキングの結果を知らせるために掛けてきてくれたのだと分かると、興味津々で荒木の様子を伺っている。


「まぁどうせ僕らが1位で確定やろうけどなぁー!らんきりゅうも出てなかったし!」


 呑気な大場とは逆に、電話をしている荒木は歩く足を止め、段々と顔が曇っていく。


「…はい…はい…。」


「え?どないしたんや?」


「そう…ですか…。分かりました。いえ、大丈夫です。もう営業先に着いたんで…切りますね。お疲れ様でした…。」


 荒木がいつもの態度とは全く違う事に気付いた大場は、恐る恐るライブの結果を聞いた。


「ど…どうやった?」


 大場の質問に、荒木はみるみる内に怒りと悔しさで恐ろしい顔つきになる。


「2位…。」


「へ…?僕らが…?」


「クソがー!!あのクソ女共が…!!覚えとけよ!!絶対に次は…!!」


 予想していなかった結果に、荒木は怒りに任せて、人目を気にする事なく大声で叫ぶ。その横で、ショックを隠しきれていない大場が呆然と立ち尽くしている。

 優勝確実と言われていたフラッシークラウンが2位という結果に終わった。それでは、1位は誰が取ったのか…それは…。



――一方こちらは、荒木に少し遅れてランキングが発表されているライブ会場である。舞台の上では、完熟Tバックが入賞したコンビの名前を読み上げている。そして、次は第1位の発表に移っているようだ。


「いやぁ!まさかまさかのフラッシークラウンが2位でしたねー!」


「誰も予想してなかったんちゃうか!?まぁでも最後の方の盛り上がりは凄かったからなぁ!」


「ではでは!第1位の発表といきましょか!」


「それでは!第1位は…!」


 ドゥルルルルルルルルル…!!とドラムロールが流れる。

 その時、楽屋で乱子が俯き気味にニヤリと口角を上げる。あたかも自分達の優勝が分かっているかのようだ。


 そして、運命の第1位が発表される。


「優勝は!『ベロリンキャンディ』!!」


 『おぉぉぉ!!』という歓声が劇場中から上がる。まさかの第1位は、順番変更でトリを務めたベロリンキャンディが勝ち取った。彼らはフラッシークラウンに次ぐ実力だと言われていたコンビである。

 そして、雄叫びと共に、激しいガッツポーズをしながら舞台上に現れたベロリンキャンディが、優勝インタビューを受けている頃、楽屋の乱子が鉄平に文句を言いまくっている最中だった。

 先程の乱子による〝ニヤリ〟は、ただ単に歯の奥歯に詰まった肉片を取ろうとしているだけだったようだ。


「うおーーい!!てっぺーーーーい!!何でうちらが無効なんや!!」


「うっさいんじゃ!無理矢理乱入したコンビが優勝なんかできるわけないやろうが!」


「はぁーーー!?おもろければ何でもありやろうが!」


「おい。そろそろタメ口で偉そうに話すの止めな退学な。」


「………。」


 マジ顔の鉄平からそう告げられた乱子は一気に大人しくなる。そして、鉄平が落ち着いて今回のランキングの顛末を語ってくれた。


「よし、大人しくなったな。ほなよう聞けよ。まず、乱入したコンビの名前なんかアンケート用紙に書いてないから票なんか入らん。だからお前らは優勝でけへんかったんや。」


「で…でも…。」


「はぁ…。褒めたる所があるとすれば、最後にかけての盛り上がりはお前らのおかげやわな。それは他のみんなもよく分かってると思うわ。

これが悔しかったら、明日以降はしっかりと全部の授業に出る事や。また8月に同じライブがあるから、それで優勝を目指せ。分かったか?」


「クソ真面目鉄平が…。」


「あん?何か言うたか!?」


「言うてません!分かりました!分かりましたよ!ふん!!」


 真っ当な理由を説明された乱子は、拗ねながらも渋々納得したようだった。そこで、希子がある質問を鉄平にした。


「鉄平さん、実際どうやったんですか?私らの漫才…。」


 その質問に、鉄平は無言で1枚の紙を希子に渡す。


「ほれ、これが今回の細かい結果や。」


 それだけ言い残し、紙を渡したまま鉄平はその場を去った。そして、希子がその紙を見ると、一番下に『らんきりゅう』の欄が手書きで書いてあった。


「らんきりゅう…鉄平さんがつけた点数…100点やって…。っていうか…他の審査員の先生の点数も100点ばっかりや…。」


 希子がそう呟くと、乱子が急いでその紙を奪ってから凝視する。


「くくく…。鉄平め!あんな事言いながらもうちらの事を認めてしまったんやな!ツンデレしよって!可愛い奴やで!」


 『ガハハハ!!』と笑っている乱子の所に、プリッツーの二人がやって来た。


「お疲れ様!二人の漫才が凄すぎてビックリしたわ!それに、今の35期の空気見てると、僕らは代わって正解やったみたいやな!」


「うんうん!俺らもやる気めちゃめちゃ出てきたわ!」


 まるで自分達の事かのように喜ぶプリッツーの二人に、乱子と希子が改めてお礼を言う。


「ほんまお前らが代わってくれて良かったわ!次はうちらと真正面から勝負やな!」


「ごめんな、乱子が偉そうで…。でもありがとう。これからもよろしくお願いね。」


 その時、楽屋に居た大勢の同期から、らんきりゅうに対して盛大な拍手が送られた。どこかみんな吹っ切れたようで、あの暗かった雰囲気は欠片も残っていなかった。


 この後、らんきりゅうが起こした奇跡のライブを切っ掛けに、KCS35期生は大躍進を見せていくのである。


 そして、時は過ぎ、2回目のKCSお笑いライブが終わった8月末、とうとうKCSでクラス分けが行われるのであった。

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