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漫才ガール!!  作者: わったん
第一幕 最強コンビ結成編
6/19

第6話 華の過去

 華は、ライブハウスを出てからしばらく歩き、やっとさっきの乱子との出会いや出来事が整理でき始めてきた。


(なんか…めっちゃ楽しかったな…。乱子さんのエネルギー…見習わなあかんな…。)


 しかし、華が事務所へと向かう足取りは重い。今から突きつけられる現実が怖いのだ。

 6年間、何も文句は言わず、自分の夢のため、自分を応援してくれるファンのためにアイドル人生を駆け抜けてきた。

 そんな華の努力を踏みにじる人間が、1年程前に加入してきてから、華のアイドル人生に暗雲が立ち込めるのである。その人物は、〝紫音しおん〟という19歳の女の子だった。



――1年前、7人組アイドルグループである〝ピンキースカイ〟は、華達の地道な努力のおかげで徐々に知名度を上げていき、やっと有名なアイドルフェスなどに出演ができるようになってきた。

 そんな中、運営はここでもう一つテコ入れをするために、新メンバーのオーディションを開催し、3人の新メンバーを補充した。

 そこで、華達は自分達のホームである日本橋の小さな劇場で、その新メンバーと顔合わせをする事になる。

 やって来たのは、みんな10代の若い女の子達だった。その子達が一人一人自己紹介を始める。


「新メンバーの〝美空みく〟です!16歳です!よろしくお願いします!」


「新メンバーの〝恋歌れんか〟。18歳です。よろしくお願い致します。」


 自己紹介が終わるたびに、現メンバーから拍手と暖かい言葉が送られる。そして、最後に登場したのが紫音である。

 紫色のメッシュが入ったポニーテールの彼女は、スタイルも良く、顔も幼さを残しながらも微かな妖艶さを纏い、誰もが彼女の魅力に惹きつけられるだろうというのが見て分かる。

 だが、その自己紹介は、とんでもない言葉と共に始まった。


「新しくピンキースカイのセンターを任されました、紫音と言います!よろしくお願いしまーーす!」


「え…センター?紫音ちゃん!自己紹介間違ってるよ!センターは華奈ちゃんやから!」


 明らかにおかしい紫音の自己紹介の仕方に、1人のメンバーがそう指摘すると、紫音は綺麗な顔を歪ませながら笑う。


「今まではそうだったみたいですね!でも、これからは紫音がセンターをするんです!ですよね?」


 紫音がチラリと運営責任者の方を見る。すると、責任者の〝三田みた〟はほんの少し困った表情を浮かべたが、そのまま紫音を擁護する発言を始めた。


「これからピンキースカイは新たなステージへとレベルアップをしていかなければならない!そのためには、新メンバーの美空、恋歌、そして何より!紫音の力が必要となってくる!だから異例やが、インパクトを与えるために、初めから紫音をセンターに置く事とする!当然その前列の両サイドは美空と恋歌が務める事になるからな!」


 三田が喋っている間も、現メンバー側はザワザワと騒がしかった。『ドッキリか?』と思わせるようなこの展開に、華が一歩前に出て、運営側に異議を唱える。


「三田さん!あまりにも横暴過ぎます!運営側の言いたい事は分かります。ピンキースカイが成長していくために必要な事は、あたし達も協力していくつもりです!でも!新メンバーがいきなり中心になるなんて!現メンバーに相談も無しにそんな事納得できません!ファンのみなさんも同じ気持ちやと思います!」


 華の必死な訴えに、彼女と同じ気持ちの現メンバー側は全員が頷いている。

 だが紫音は、華の訴えが面倒臭かったのか、俯きながら小さな声でボソッと呟く。


「うっさいなー…。雑魚アイドルのくせに…。大人しく言う事聞いとけや…。」


「え…?紫音ちゃん何か言うた?」


 紫音の呟きを聞き取れなかった華が聞き直すと、紫音はバッ!と顔を上げて満面の笑みでこう答えた。


「華奈さん達ではもう限界だから、運営さんはこういった判断をしたんですよ!大丈夫です!安心して下さい!紫音達が先輩方をしっかり引っ張っていきますから!」


 傲慢とも言える紫音の発言に、華達は呆れて何も言い返す事ができなかった。

 何より、運営側はそんな紫音の発言を止めること無く聞いていた。それは、運営は完全に紫音側についているという事だ。


「よっしゃ!みんな分かったな!不満がある者は後で俺の所に来い!ほな一旦この場は解散や!」


 三田がそう言うと、新メンバーの3人はそそくさと劇場から出ていった。

 そのタイミングで現メンバーは、今回の判断に対して、断固反対の姿勢を示すために全員で三田に詰め寄る。


「三田さん!どういう事ですか!」


「こんな事ありえません!私達はもういらないんですか!?」


「分かってる!分かってるけどな…、俺よりももっと上の人らの判断なんや。俺に言うたかてしゃーないて。文句言う奴は辞めさせって言われてるわ。」


「え!?」


 三田のその発言は、『もう何を言っても無駄なんだ』と、現メンバーに分からせるのに十分であった。


 しかし、諦めきれないメンバーは、一旦今回の事を受け入れ、一致団結をして立ち向かっていく事を決意するのである。


 だが…しかし……。

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