↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
漫才ガール!!  作者: わったん
第三幕 〝らんきりゅう〟編
50/66

第50話 実力と才能を見せつける!

 鉄平のらんきりゅうのネタに対する評価が『0点』という発言に、教室内が少しざわつく。

 それは、『いい気味だ』と思う者や、『何故上手かった漫才が低評価なのか』と思う者など様々であった。

 そんな賛否が別れる空気の中、納得のいかない乱子が鉄平に噛みつく。


「ちょっと待ってや!さすがに0点は無いやろ!」


 まず乱子がタメ口な所が気に入らない鉄平は、講師の威厳を保つためにまずはその部分にキレた。


「お前はほんまに!まずは人を敬うって事を覚えんかい!次にそんな調子乗った態度やったら問答無用で退学にしたるからな!」


 鉄平の本気が伝わる怒号に、乱子もさすがに一歩引いて謝罪をする。


「すいません…でした…。」


 するとそこで、乱子の代わりに希子が丁寧に鉄平に質問をする。落ち着いているように見えるが、内心は悔しさが滲み出ているのが顔を見れば分かった。


「あの、鉄平さん。少し詳しく評価の内容をお願いしても良いですか?」


 プライドの高い二人が納得するまで、低評価の説明を続けなければならないのが面倒臭いのか、鉄平は大きなため息をついてから話し始める。


「はぁ〜…。0点の理由は2つある。まず1つ目はやな。俺が1番最初の授業で言うた事覚えてるか?」


「いえ…あんまり…。」


「在学中は下ネタは絶対に禁止って言うたやろ!それやのにお前らは乳の話はするわ!男の股間の話はするわ!そんなもん0点に決まってるやろ!途中で止めへんかったんを感謝せー!」


 KCSでは下ネタを全面的に禁止している。下ネタに頼らずネタを作る力を身に付けるためなど、様々な理由が考察されているが、はっきりとした理由はあまり知られていない。

 だからといって、調子に乗って下ネタをすれば、強制的にネタを止められるなどの制裁が加えられる。


「あちゃ〜…完全に忘れてしもてたわ…。」


 そのルールが、頭の片隅にも無かった乱子は思わず頭を抱える。そして、鉄平がらんきりゅうを0点にした理由の残り一つを話し出した。


「あと一つはな、お前ら…今の漫才アドリブやろ?」


 その鉄平の一言で、さっきよりも大きなどよめきが教室内に起こる。

 そんな鉄平の鋭い指摘に、乱子が慌ててしどろもどろになりながら言い訳をする。


「ちゃ…ちゃうもん!ネタ作ったもん!ネタ合わせしたもん!」


「嘘つくの下手か!?ってかもんもんもんもんうっさいし!敬語も使え!」


 あからさまに嘘がバレバレな乱子を放って、希子が冷静に鉄平へ問いただし始めた。


「なんでさっきの漫才がアドリブって言うんですか?どこら辺がそう感じたんですか?」


 希子はさっきの漫才が、アドリブでやった時のようなグダグダ感は絶対に無かったという自信があった。それぐらい乱子と希子は完璧に漫才をやり切ったと思っていたのだ。


「まず乱子のアホはネタ書かれへんのは知っとる。ほんで、希子の作ってきたネタも何回か見たが、今回は全く毛色が違った。まずお前は下ネタなんか書かんやろ。」


「た…確かに…。」


「後はな、ボケに対して希子のツッコミが食い気味やったり、乱子のボケがちょっと自信無さげやったり、手探りでやってるから表情や目の動きが硬かったな。」


 鉄平の言った指摘は、素人どころかプロでさえも気付く事ができるか微妙な部分であった。


「どうや?お前らアドリブで漫才しとったやろ?」


「…はい…。」


 希子が、観念したように返事をすると、教室内にまた大きなどよめきが起きる。


『は?あれがアドリブってほんまか?エグ過ぎるやろ。』

『どうせ鉄平先生に乗っかっただけちゃうんか?あれだけの漫才をアドリブで出来るわけないって…!』

『いやいや、でもほんまやったらとんでもないコンビが出てきたやんけ…。』

『くそ…俺らが必死で作ったネタよりしっかりしてたのに…!自信なくすわ…。』


 所々からヒソヒソとした声が上がり始め、ざわざわとしだした教室内を鉄平が無言で睨む。

 すると、生徒達から恐れられている鉄平の一睨みで教室は静寂を取り戻した。しかし、アドリブの漫才であれだけの完成度を見せつけられた他の者達は、正直たまったものではなかったのだろう。

 乱子達がムカついていた鉄平の手元の男も、戦々恐々とした顔をしている。


 そして、静かになった事を確認した鉄平はまた喋り始めた。


「まぁな、酷評ばっかりしてもしゃーないから一応良かった所も話したるわ。正直言うと、下ネタの件と、ネタを仕上げてこんかった事と、所々挙げた細かい指摘以外は言う事ないわ。ボケもツッコミもまだ入学して1ヶ月のKCS生やとは思われへんレベルやった。

見てたこいつらが1番思ったやろな。次こそはネタを仕上げてきてくれるって楽しみにしてるわ。以上。」


 普段は一切ネタを褒めない鉄平が、らんきりゅうを絶賛した事により、たくさんの悔しさと嫉妬の視線を乱子と希子は一斉に浴びる。

 だが、そんな視線をものともしない二人は、数多の負の感情を跳ね返すように、納得した表情で鉄平へと頭を下げた。


「「ありがとうございました!」」


 こうして、ネタを終えた乱子と希子が教室の後ろへと歩いていると、男性のコンビとすれ違う。

 それは、背の高いキツめの顔をした男と、ニコニコと周りに愛想を振りまいている丸眼鏡の男であった。

 恐らくらんきりゅうの次にネタ見せをするコンビだろう。そこで、鉄平の手元の男がホワイトボードのコンビ名を読み上げる。


「えっとー、次は…〝フラッシークラウン〟!」


 その名は、これから〝らんきりゅう〟としのぎを削る事になる、もう一組の天才コンビの名だった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。