第40話 ヴァンパイアハンター華と2つの玉
乱子に〝ココ〟と呼ばれたお姉さんは、血のように赤い目で睨みつけながら華達に近付いてくる。口からは、人とは思えない鋭い牙が2本飛び出しており、鋭くこちらを狙っているようだ。
「乱子!あたしの後ろに隠れて!」
「は…華!一体これは何なん!?」
乱子は酷く怯えながら華の背中に隠れるように逃げた。そんな彼女を勇ましい表情で華が庇っている。
「あの人はヴァンパイアの殺し屋やで!その証拠に赤い髪に赤い目をしてる!でも安心して!あたしが乱子を守ってあげるから!」
「華…。あんたって人は…可愛いツッコミだけじゃなくて…まさかヴァンパイアハンターやったなんて!」
「さぁ!覚悟しーや!あたしのこの聖なる十字架で消え去りなさい!ヴァンパイアお姉さん!」
華は、いつの間にか首から下げていた十字架を手に取り、それをココに向けるとその十字架は聖なる光を強く発し始めた。
「ぐぎゃぁぁぁぁ!!美しく可憐なヴァンパイアハンターめぇー!!覚えていろぉーー!!」
華が放った聖なる光を浴びたココは、太陽の光に焼かれたように灰になって消えていく。
「す…凄いよ華!いいえ!これからは最強美少女ハンター華様って呼ばせてもらいます!」
「おほほほほ!あたしは世界を救うんや!やるで!やったるんやでぇぇ!!」
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「おーい。華ー。大丈夫かぁー?」
自分を呼ぶ乱子の声と、顔をペシペシと叩かれている感触で、華はガバッと勢い良く起き上がる。
「は!?世界を救わなければ!!」
夢の続きを叫びながら華は起き上がったが、目の前にはココの無表情な顔が間近にあった。
「のわぁぁー!!ヴァンパイアめぇー!!まだ生きてたんかぁ!!ぬぉぉ!あたしの聖なる十字架でもう一度ぉぉぉ…ぉ……ぉ…ぉ…。あ…あれ…?」
そこで、華はさっきまでの出来事が夢だった事に気付く。恥ずかしさにより、茹でダコ並に顔が真っ赤になっていく華を指差して、ココが無表情のまま乱子に質問をする。
「このおもろい子誰なん?」
「えっと、うちの新しい相方っす。」
「へぇ〜。あんた相方出来たんや。」
醜態を晒してしまった事が原因でフリーズしている華に向けて、ココは握手をするために手を差し出した。
「私ココって言うねん。」
「ひゃ…ひゃ…あたし…は…華…です…。」
ココから差し出された手を華は握るが、その動きはロボットのようにカクカクしている。
「よろしくな。ヴァンパイアハンター。」
「いやぁぁぁ!!やめてくださいぃぃ!!どうにか忘れて下さいぃぃ!!」
厨二病を爆発させたような出来事は置いておき、乱子とココはカウンターの中に入り、華はヨロヨロとした足取りでカウンター席に座った。
「えー!改めまして、このBARのオーナーのココさんです!で、こっちはうちの相方の華です!」
この場を仕切り直すために、乱子が改めて二人の紹介をする。
「いやー。おもろかったわー。」
「絶対嘘じゃないですか…。さっきからずっと無表情ですよ…。」
「ココさんはな、感情をほとんど表に見せん人やねん。いつも怒ってるように見えるけど全然ちゃうから安心してな。怒ってる時は先に手が出るから!」
意気揚々と説明している乱子に対し、ココは突然乱子の二の腕あたりを殴る。
「痛ーー!!」
「あんた遅刻し過ぎな。しばくぞ。」
「ほ…ほらな…。ココさんが怒ってる時はこんな感じやから…。」
「へ…へぇ〜…。分かりやすい例がすぐに見れて良かったです…。」
するとココは、かなり痛がっている乱子を放置して、きつい眼差しのまま華にオーダーを聞いてきた。
「飲み物何にする?」
「あ!えっと〜…。」
華は目の前にあったメニュー表を開くと、ココからの威圧感もあり、ウィスキーの欄にあった『ゴールデンハイボール』というものを適当に選ぶ。
「こ…このゴールデンハイボールをお願いします!」
「あいよ。ウィスキーはジャックでええか?」
「は…はい!それで良いです!」
オーダーを受けたココは、普通にウィスキーとソーダをグラスに入れて混ぜる。
(あ、良かった。普通のハイボールや。なんか特別なやつやったらどうしようって思ってたから良かった。)
ココのお酒を作る手元を見ていた華は安心するが、ココは最後にお酒の中へ金色のビー玉のような物を2つ入れた。
「はい。どうぞ。ゴールデンハイボールです。」
「あ…ありがとうございます…。」
そして、華は出されたお酒を一口飲むが、味はいたって普通のハイボールであった。そこで、この2つの玉の事が気になった華は、恐る恐るこの玉の意味をココに聞く。
「あの、この玉って何なんですか?何か味に変わりが出るとか何ですか?」
「ん?それは金玉やで。」
「へ…金…何て言いました?」
「金玉。」
(聞き間違いやなかった…。金玉って無表情で2回言われたん生まれて初めてやわ…。)
愕然とした華に気付いたのか、乱子がフォローに入る。
「あ、そうか。華に言ってなかったもんな、このBARがどんなんなんか。」
「どういう事!?」
「ここな、下ネタBARやねん。だから金玉とかいっぱい下ネタが散りばめられてんねん。」
聞き慣れない『下ネタBAR』という単語に、華は嫌な予感をひしひしと感じるのであった。




