第21話 目標
華達が去り、全てが終わった後、三田が桐原に電話を掛ける。
「あ、もしもし。桐原さん、華奈の卒業ライブ終わりました。」
『そうか、紫音が行ったやろ。どうやった?』
「その件ですけど、僕は紫音が乱入するなんて全然知らなかったんですが…。」
『君に言う必要が無かったからや。それよりも質問に答えてくれるか?華奈を踏み台に、紫音が一層成長したと思うんやが。』
「あの…それが…。」
三田は、卒業ライブであった事を、事細かく桐原に伝えた。
「…というわけでして…。」
『芸人…やと…。』
「はい…。途中で乱入してきた女の子のせいで、華奈が全部持っていった形でしたね…。まぁ、卒業ライブとしては成功したかと…。」
ガンッ!!!!!!
「ひっ!!」
何かを叩きつけたような大きな音が、電話口の向こうから聞こえ、三田は飛び上がるように怯える。
『紫音の養分如きが…芸人になるやと…。ふざけてんな…。その乱入してきた女の詳細は分かってるんか?』
怒りに満ちた桐原の声により、恐怖で三田の口の中の水分がどんどん無くなり乾いていく。
「あ…あの…えっと…。」
『まだ何も分かってないんか…?』
「す…すいません!すぐに調べます!申し訳ございません!!」
『次にこんな事があったら分かってるやろな?』
「は…はい!以後気をつけますので!どうか…!」
ツー…ツー…ツー…
まだ三田が話している途中で電話が切られる。
「こ…怖過ぎるやろ…。現場の事を何も知らんのに言いたい放題言いやがって!クソ!」
ドカッ!!
「痛ったーーーー!何やねん!もう!」
三田は緊張が解けると、勢いで目の前にあったゴム製っぽいポールを蹴るが、中身は鉄だったらしく、足首に傷を負ったみたいだ。
その頃、電話を切った桐原は、タワーマンションにある書斎の机で怒りに震えていた。
机の上には、叩き潰されたノートパソコンがあり、桐原の握った拳からは血が滴っている。
「華奈…私の可愛い紫音の邪魔をしよって…。芸人か…あの子が続けるならいずれまた会うやろ。その時は今回以上に苦しめたるからな…。」
悪意ある笑顔でそう呟くと、桐原は怒りを鎮めるために、窓の外の景色を見下すように眺める。桐原が、何故ここまで華に固執するのか、その理由はまだ誰にも分からない…。
――一方華は、乱子と鉄平に連れられて、ミナミのアメ村にあるダイニングバーでキョドっていた。
「華はさっきから何に怯えてんの?」
「怯えてるわけじゃないけど…オシャレなBARとかあんまり来た事ないねんもん。周りもオシャレな人ばっかやし…。」
「そんなもんな、『どうせこいつらはうちよりおもんない』って気構えでおったら何も思わんで。」
「そんなん思えるはずないやんか!あたし自身、自分の事おもろいなんか思った事ないし!」
「いやいや、華ちゃんはおもろいから安心したらええわ。俺も長年芸人見てきたけど、ええツッコミするやん。ほんで可愛いしな。」
「出たわ。キショい鉄平が。華、鉄平の右乳首引き千切ってええで。」
「2つしかないのに!?しばくぞ!乱子!」
「そうや!あたしもおじさんのそんなとこ触りたくないし!」
「あれ〜…華ちゃん、それちょっとトゲあるよね。」
そこで、店員がグラスを3つをテーブルへと持ってくる。乱子と鉄平はビール、華はコークハイと、それぞれがグラスを持ち乾杯をする。
「乾杯!華!お疲れさんやな!」
「うん!二人共ほんまにありがとう!」
「で、ほんまに華ちゃんは乱子とコンビ組むんか?」
「あー…はい…一応…。」
「うおい!何か嫌そうやな!」
「そういうわけじゃないって!そら不安にもなるやんか!」
「大丈夫や!とりあえず1つ目の目標は決まってるから!」
「そうなん!?その目標とは…?」
乱子はビールを高々と掲げながら勢い良く立ち上がると、自信満々で声高らかに目標を発表する。
「まずはO.A.Bで優勝や!!」
「「はぁ!?!?」」
乱子が掲げた目標に、鉄平と華は目を丸くして驚いている。
乱子の言う〝O.A.B〟とは一体何なのだろうか…。




