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アメイジングソケット 少年少女の異界攻略譚  作者: 埴輪星人


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第24話 初心者向け異界:辛口 八日目 イレギュラーモンスター二体目

「……思いっきり、塞いでるね……」


「倒さずに、第二層に行くのは無理そうですね……」


 八日目の午後。デイリーミッションの報酬を受け取り、昼食をとった後のこと。


 今まで未調査だった反対側の通路を確認しに来た正樹と佑梨は、いくつかのフロアを抜けた突き当りに鎮座する、禍々しい樹木を発見していた。


「でもまあ、命さんが言ってた通り、二体同時に相手にすることはなさそう」


「あと、相手が植物のほうだったので、今の時点でも最低限の勝ち筋はあるのが助かります」


「うん。それは本当にそう」


 不幸中の幸いとばかりに、現状についてそう話す正樹と佑梨。


 実際の状況はショゴスライムの時とさほど変わってはいないが、少なくとも宝物庫の宝箱は取りに行けるし、フロアの外から最初の一撃を入れられる。


 それだけでもだいぶ有利である。


 余談ながら、今日の宝箱は開けていない。


 あまりにもレアリティが微妙だったため、とりあえず育てることにしたのだ。


「後は、一応相手がどのあたりで反応するかを見ておいたほうがいいかな?」


「今無理にやらなくても、いいとは思いますけど……」


「まあ、そうなんだけど、早いうちに情報を集めておけば、いろいろ段取りを組みやすいかなって」


「それはそうなんですけど……」


「あと、どうせ何回も死ぬなら、早めにノルマは済ませたい」


「さすがに、死亡回数にノルマが設定されてるわけではないのでは?」


「命さんじゃないけど、早めにひどい目にあっておけば、その分だけ主人公補正セットの仕事もぬるめになってくれるかもしれないから、むしろその可能性に賭けたい」


「あ~……」


 一番最後の正樹の本音を聞き、命に釘を刺されたことで死にに行くことを渋っていた佑梨も納得する。


 他の人間については知らないが、正樹と佑梨の場合、異界攻略において最も重要なのは、主人公補正セットに派手な仕事をさせないことである。


 その観点で言うなら、今の時点で軽く偵察も兼ねて殺されておくのは、ありと言えばありだろう。


「そうですね。やるとしたら、目的は攻撃範囲の確認と、耐性を取れるかのチャレンジですか?」


「うん。最低でも、攻撃範囲はこれで分かる」


「そうですね。……やりましょう!」


「よし、行こう!」


 そう言って気合を入れたタイミングで、目の前のフロアに黒い霧が立ち込める。


「なに?」


「なんでしょう?」


 突如発生した霧を見て、いったん足を止める正樹と佑梨。


 その間に徐々に霧がフロアの真ん中あたりに凝縮し、何かの姿になる。


「……あれ、なんでしょう?」


「……緑の肌の不気味な小人ってことは、いわゆるゴブリンとかそういうやつかな?」


「ゴブリン、ですか……?」


「分かんないけど、多分?」


 佑梨の質問に、あまり自信なさげに推測を告げる正樹。


 その間に二体現れた推定ゴブリンの実体化が終わり、霧が完全に晴れる。


 それと同時に、奥に陣取っていた植物が枝を伸ばし、同時に両方の推定ゴブリンを串刺しにする。


「「えっ?」」


 あまりのことに、思わず間抜けな声を出す正樹と佑梨。


 串刺しにされたゴブリンたちは、瞬く間に黒い霧となって消失する。


 同士討ちだからか、それとも単に確定ドロップの類が存在しないからか、ゴブリンたちが消失した後には特に何も残されていなかった。


「……とりあえず、真ん中あたりまでは二人同時に攻撃されるっぽいね……」


「……あと、今まで私たちを殺したモンスター以外に、敵がいなかった理由も分かりましたね……」


 図らずもせっかくのやる気に水を差された形になり、やや呆然としながら分かったことを言い合う正樹と佑梨。


 さすがに、湧いたモンスターを問答無用で仕留めるとは思いもしなかったのだ。


「……どうします? 同時に突っ込んだ場合、同時に殺されるのは確定しましたけど……」


「……相手がどのぐらいの距離まで反応してくるかと、攻撃がどこまで届くのか、あと今は根っこ張ってるみたいだけどあの状態から移動するのか、あたりは調べたほうがいい気はする」


「その項目のうち、今確実に調べられるのは反応する距離と、攻撃してくる範囲だけですよね……」


「だね……。まあ、少なくともフロアの外には反応しないのは確定だけど」


 そう言いながら、フロアと通路の境界線ギリギリまで近づいてみる正樹と佑梨。


 真正面から近づいているというのに、この時点で一切反応がないので、恐らく単に近づくだけならフロアの外の存在には反応しないのだろう。


「じゃあ、ちょっとだけ中に入ってみるね」


 そう言って、サイズを大きくしたスコップを、由緒正しき10フィート棒の使い方のごとくフロアの中に突っ込んでみる正樹。


 それだけでは反応を見せないのを確認し、腕を伸ばして限界まで突っ込む。


 まだ反応しない樹木。


 次は足を軽く踏み込む。


 そんなやり方でじわじわと侵入していき、全身がフロアに入って大股で二歩分ほど進んだあたりで、ついに樹木が反応を見せる。


「!」


 危険を感じて、反射的にスコップを横に振る正樹。


 伸びてきた枝が、スコップに弾かれて大きくしなる。


 どうやら伸ばすことはできても薙ぎ払うことはできないらしく、弾かれた枝はそのまま戻っていく。


 さらに嫌な予感。とっさに飛びのく。


 直後に、正樹がいた場所から太い根っこが生えてくる。


 慌てて飛びのいたせいで地面に倒れこんでしまった正樹に、さらに容赦なく攻撃が襲い掛かる。


 連続で突き刺さってくる枝をどうにか転がって回避したものの、ついによけきれずに根っこで串刺しにされる。


「がはっ!」


「正樹さん!?」


 明らかに致命傷であろう一撃を受けた正樹を見て、思わず叫ぶ佑梨。


 そんな佑梨の目の前で、樹木は正樹の体を高々と持ち上げ、複数の枝を使ってねじ切る。


 大量の血をまき散らして、腰のあたりで二つにねじ切られた正樹の体は、虚空に溶け込むように消失する。


 どうやら、死に戻ったらしい。


「……惚けてる場合じゃありません。わたしも、調べられることを調べないと!」


 正樹の死に衝撃を受けるも、すぐに立ち直ってなすべきことを思い出す佑梨。


 とはいえ、佑梨に出来ることなどそれほど多くはない。


 攻撃アイテムの類は持っていないし、あったとして樹木が反応して攻撃してきた時点で、相手の本体とは30メートル近く離れている。


 一般人が、決して投げやすい形状ではない薬瓶を投げて届くかというと、かなり厳しい距離だろう。


 佑梨の場合はジョブの力で届くことは届くのだが、投げやすい形状ではないということは、コントロールが怪しくなるということでもある。


 正直、いくら的が大きくて動かないと言っても、確実に当てる自信はない。


 かといって、戦闘用のジョブを一切持っていないので、当然のごとく攻撃魔法とか射撃攻撃とかそういったものもない。


 この状況で試せることは、相手の反応範囲に踏み込んですぐにフロアから出る、ぐらいであろう。


「……そうですね。せっかく正樹さんが命を懸けて反応範囲を調べてくれたんです。反応させてからすぐ逃げたらどうなるかを試しましょう」


 そう腹を決め、大幣を出してフロアに踏み込もうとする佑梨。


 そこでふと、装備についていた能力を思い出す。


「明らかに邪悪っぽくていろんな悪い空気をにじませてますし、もしかしたら浄化がちょっとぐらい効果があるかも」


 そう思い至り、フロアの外から浄化を飛ばしてみる佑梨。


 この浄化という能力、この手の聖職者や神職の基本技能であると同時に、彼らが使う装備に大体標準搭載されているものだ。


 仕様としては射程は視界、範囲と効果の強さはイメージと使い手の次第という、一見ものすごく強力そうなスキルなのだが、残念ながら邪悪系以外に一切影響が与えられない、使いどころが分かりやすくも難しい代物である。


 第二層への入り口をふさいでいる樹木は、見た目の上では大層邪悪そうで、明らかに邪悪なオーラをまとい、瘴気っぽい何かをまき散らしている。


 それだけを見れば浄化が効きそうだが、見た目に反して聖属性というパターンも稀によくある話だ。


 なので、やってみないことには分からない。


「……フロアの外から中に攻撃や浄化をかけられない、ということはなさそうですね。じゃあ……」


 やりたいことが可能であることを確認し、気合を入れて樹木の浄化に入る佑梨。


 全身から清らかなオーラが発生し、一つにまとまって樹木を包み込む。


 不快そうに体を揺らし、佑梨のほうへと枝を伸ばす樹木。


 が、どうやら射程の限界らしく、フロアの入り口から半歩手前ぐらいのところで枝が止まる。


「一応効果はあって、射程外から攻撃も可能。ですが、効果はあっても効いているとはいいがたいですね……」


 手ごたえや相手の反応を見て、そう結論付ける佑梨。


 感覚的には、皮膚に刺さらない程度にシャーペンなどを突き立てたとか、子猫にあまがみされたとか、そういったレベルのダメージだ。


 ぶっちゃけ、痛いとも言えない痛みがあるだけ。


 こんなもの、何万発叩き込んでも目の前の樹木を倒すことはできないだろう。


 ついでに言うと、浄化そのものは神事でもなんでもないので、神事の才能では一切補強されない。


「どうにもならなそうですし、最後に専用装備2の耐性関係がどの程度通用するのか、確認しましょう」


 そう言って再び気合を入れ、ふと思いついて浄化を自分の周囲にかけながら相手の射程内に踏み込む佑梨。


 佑梨を貫こうと伸びてくる枝。


 その枝についている葉っぱが若干枯れたのを見て、枝になら多少は浄化が効くと知る佑梨。


 その直後に激しい痛みが佑梨を襲い、そのまま意識が途絶える。


 こうして、二体目のイレギュラーモンスターに対する調査は、予定通りあっさり全滅して終わったのであった。

ちょっと短いですが、きりがいいのでここで。


二体同時に出てきて手も足も出ずに惨敗は普通に面白くない、という理由で制限を付けて判定した結果、今回はちゃんと空気を読んだ結果を出してくれました。


なお、不屈のレベルが低いのでねじ切られた時点で死んでいますが、これが数百レベルとかの高レベルになるとあの後ミンチにされても10~20秒は生存しています。

で、そのぐらい不屈のレベルが高ければ、そのあと数度は生存判定が成功するので、超再生100ぐらいからは再生が間に合う可能性が出てくるという……。


老化に関しても、再生力が勝つと細胞の劣化が起こらなくなるわけでして……。

すでに超再生習得済みの佑梨と、どうせそのうち超再生にアップグレードされると言い切られた正樹の明日はどっちだ!?

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― 新着の感想 ―
なにそれこわい。鍛えれば鍛えるだけ死ににくくなるのが辛そう。 耐性と攻撃持たないとなぶり殺しにされちゃう。
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