↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
アメイジングソケット 少年少女の異界攻略譚  作者: 埴輪星人


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

25/30

第22話 初心者向け異界:辛口 七日目 専用施設1 その4

「おかえり~」


「ただいま」


「今回は採取ポイントが固まってて、なんかすごく早く終わりました」


 採取に向かってから10分少々。


 普段の周回より大分早く正樹と佑梨が戻ってくる。


「それで、多分収穫までまだちょっとかかると思うけど、今のうちにさっき宝箱から拾ったメモリー確認する~?」


「あっ、そういえば忘れてた」


「完全に意識が農場と素材収集に向いてましたよね……」


 命に聞かれ、しまったという顔でそう漏らす正樹と佑梨。


 割と生命線になる宝箱から入手したメモリーのことを忘れるのは、この状況ではかなり大きなやらかしの部類だろう。


「とりあえず、鑑定はもう済ませてあるわよ~。再生アビリティと神事の才能アビリティね~」


「もう、その時点で分配は考えるまでもないですね……」


「だね……」


 そう言いながら、神事の才能アビリティを手に取る佑梨と、再生アビリティを手に取る正樹。


 最終的にどうなるかは別にして、少なくとも当面の間正樹が神事を行うタイプのジョブやスキルを取ることはないだろうし、超再生がそれなりに育っている佑梨に通常の再生を追加する意味も薄い。


 第一、正樹に再生や自然回復強化系の能力を持たせるのは、現状において最優先課題の一つである。


 アビリティのランク的に佑梨より効果が大きく落ちるとはいえ、ないよりは圧倒的にいい。


「確認ですけど、再生アビリティって、超再生よりどのぐらい効果が落ちますか?」


「ん~……。四肢がもげたとか、目玉が潰されたとか、そのレベルならそのうち再生するわね~。とはいえ、超再生みたいに極めれば即死しない限り体の95%が吹っ飛んでも元に戻る、ってレベルまでは無理だけどね~」


「それ、むしろ超再生が過剰すぎるような……」


 超再生の説明を聞き、顔を引きつらせる佑梨。


 言っては何だが、現実世界で暮らす分には再生でも過剰なぐらいである。


「とりあえず、その手の上位互換があるスキルとかアビリティ、タレントは、もっといいものを上書き習得する以外にもランクを上げる手段はあるっからね~。必要を感じたら、迷わずランクを上げるのよ~」


「その言い方だと、僕は絶対に超再生を覚えなきゃいけない、と……」


「断言するけど、辛口スタートの子が超再生を覚えずに済むなんてありえないわよ~」


「いやな断言をされてしまった……」


 大分物騒なことを言い切る命に、思わず遠い目をしてしまう正樹。


 もうすでにその兆候が出ているとはいえ、今後超再生がないとやっていけないぐらいひどい目にあうと断言されたようなものだから、正樹の反応も無理はないだろう。


 なお、例のスライムや植物、触手に関しては考慮していない。


 あいつらはないと困るのではなく、あったところで無駄というのが実態である。


 ちなみに、スライムを倒したときに関して言えば、あそこまで防御側でメタを張っていると、ダメージと回復を釣り合わせるだけなら再生でも十分だったりする。


「まあ、これで懸念の一つだった、正樹君が即死を回避しても瀕死のまま問題は解決のめどが立ったわね~」


「そうですね。それにしてもなんだか、今日は異界で拾った分も合わせて、久しぶりに素材関係以外のメモリーを挿した気がします」


「だね」


 佑梨がしみじみと言った言葉に、苦笑しながらうなずく正樹。


 佑梨の専用装備2を解放した後は、採取場で手に入ったメモリーが全て外れだった。


 そのため、今日までエクストラソケットより上のソケットには、まったくメモリーを挿す機会がなかったのだ。


「それで、そろそろものによっては収穫できると思うけど~、どうかな~?」


「もうちょっとかかりそうな気がするけど、一応確認はしよう」


 命に促され、畑の確認のために農業公園へと移動する正樹たち。


 畑では、一番早い作物の収穫まで、あと1分を切っていた。


「あっ、もうすぐ収穫ですね」


「だね。しかしこう、さっきも思ったけど、作物の上にデジタルのタイムカウントが浮かんでるの、すごくシュールだよね……」


「そこは気にしてちゃ、きりがないわよ~?」


 いい感じに実っている作物に喜ぶ佑梨の横で、変にゲーム的でシュールな光景にげんなりする正樹。


 そんな正樹に対し、かすかに見える釣り堀を指さしながら、命がそうたしなめる。


 わちゃわちゃやっている間に大分時間が経ったようで、釣り堀のタイムカウントがそろそろ60分台に差し掛かっていた。


「そういえば、このタイムカウントって、収穫までなんでしょうか? それとも、種になるまでなんでしょうか?」


「ちょっと待って……。一応、収穫までっぽい」


「ということは、このカウントがゼロになった時点で収穫すれば、普通の作物が採れるんですね?」


「多分そう。一応、種になったら自動的に収穫するように設定してあるけど、その前に自分で収穫したらどうなるか、とかはやってみないと分からない」


「今のうちに試して、確認しておいたほうがいいかもしれませんね」


「そうだね」


 佑梨に言われ、何も分かっていないのに全く疑問を持っていなかった自分に気が付く正樹。


 そもそもの話、あからさまに無から有を生み出しているのに、正樹自身が何かを消費した感覚が全くない。


 この施設を稼働するエネルギーや物資の出どころが不明なのは、いくらなんでも不気味すぎる。


「……なんか、いろいろ怖いことに気が付いた……」


「怖いこと、ですか?」


「今後佑梨さんも他人事じゃなくなる話だけど、よくよく考えたら、種なしで植えた作物の原料とか、どこから出てるの?」


「あっ……」


「その話はね~、異界が何で発生するのかとか、異界のエネルギーとか物質関係がどうなってるのかとか、そういう話につながってくるのよね~。だから結論としては、異界だから明確な原理は解明されていない、って話になるのよ~」


 佑梨に言われて気が付いたことを、そのまま正直に口にする正樹。


 その内容のヤバさに固まる佑梨を横目に、命が今分かっていることを説明してくれる。


 結局のところ、異界とアメイジングソケットに関しては、少なくとも人間にはちゃんとしたことは何も分からないようだ。


「まあ、神様なら何か知ってるとは思うけどね~」


「えっと、『人間のキャパシティで理解できるものじゃないから、今は何も教えない』だそうです」


「でしょうね~」


「『完全にこっち側に来たら、自然と理解できる』とのことです」


「まあ、そんな感じだとは思うわ~」


「というか命さん、神様基準ではちゃんと人間なんですね……」


「あら、佑梨ちゃん。私をなんだと思ってたのかしら~?」


 なかなかに失礼なことを言う佑梨に対し、思わずジト目を向ける命。


 とはいえ、あからさまに強者の雰囲気をにじませる命に対しては、至極妥当な感想だとしか言いようがないが。


「っと、収穫できるようになったみたい。ちょっと確認してみる」


「はい」


「今の話は、後でじっくりしましょうね~」


 巻き込まれないように距離を置いていた正樹が、タイマーが切り替わったのを見てそう話を変える。


 そんな正樹の話題転換に乗って、とりあえず今の話は後にする命と、今だけとはいえ命の追求から逃れられると分かってほっと溜息をつく佑梨。


 目の前では、種になるまでのタイムカウントが少しずつ進んでいく。


「収穫できるようになってから種になるまで今で285秒。だいたい5分ぐらいかな?」


「種が欲しい時には長すぎて、そのまま収穫したいときにはせわしないっていう、すごく微妙な長さね~」


「えっと、種にしたくないならタイマーを止められるんだって。そのあたりの設定は、一株ごとに出来るみたい」


 タイマーが切り替わったことにより増えたヘルプを読み上げながら、とりあえず手近にあったジャガイモの株を引っこ抜く。


 そこにはジャガイモが鈴なりに、とはいかず、ほどほどのサイズのイモが三つほどぶら下がっていた。


「手で抜いても普通に収穫できるのか。後はシステム使ってみて……」


 比較のために、収穫ボタンを押してジャガイモをもう一株収穫してみる正樹。


 手で抜いた時と違い、収穫ボタンで収穫するとイモだけが三つほど目の前に転がる。


 どうやら、収穫ボタンを使ってシステム頼りで収穫すると、余分なものは全て消えるようだ。


 なお、正樹は気が付いていないが、普通イモは素手で引っ張っても、こんなに簡単に引っこ抜けたりはしない。


 イモの収穫を芋ほりというぐらいなので、それなりに土を掘り返さないと素手で抜くのは無理である。


「自分でやると、大分手間が増えるっぽい」


「その分、品質とかに差が出そうですね」


「だね。ただ、今のところはたぶん、自分でやってもプラスの影響はないと思うけど」


 そう言いながら、ほうれん草とカブも手で収穫した後、比較のために自動収穫でさらに一つずつ収穫する。


「そういえば、謎の種の作物って、結局何が出来てます?」


「15分のはジャガイモだったっぽい。20分と30分のは今の時点ではまだ分からないかな」


 佑梨に問われて畝を確認し、そう答える正樹。


 12個植えた謎の種のうち、15分だったのは二つ。


 そのどちらもジャガイモだった。


「これ、収穫しても多分、違いは分からないんだろうなあ……」


「そもそも、謎の種って、何が生えるかがランダムなだけで、採れる作物自体は正規の種と同じものだからね~。それに多分、種の有無による差も、いろんな意味でレベル低いうちだと分からないと思うしね~」


「だよね……」


 比較のために収穫してみようかと悩み、結局そのまま種にすることに決める正樹。


 そんなこんなをしているうちに栽培から20分が経過し、次々に種ができる。


「……種は全自動で収穫するんですね……」


「……まあ、手でやれって言われても、どうすればいいのか分からないからいいんだけど」


「便利でいいんじゃないかな~?」


 全自動で収穫され、作物リストの種ページにどんどんカウントアップされていくのを見ながら、そんな感想を言う佑梨たち。


 なお、1株から採れる種は3~15個で幅があるが、必ず植えた数より多く収穫できるようだ。


「で、20分の作物は、見た感じニンジンと玉ねぎ、ナス、後は何か根菜みたいね~」


「えっと、ナスは登録されてなかったみたい。リストにNEWってついてる」


「へ~、ナスは栽培できなかったんだ~」


「うん。えっと、パッと思いつく野菜で、見た感じリストにないのはかぼちゃとレンコンかな。米と麦関係は、表示はあるけどロックがかかってる」


「まあ、カボチャはともかくレンコンはね~」


 正樹の言葉に、苦笑しながらそういう命。


 実際問題、レンコンは沼地で育つので、普通の畑で育てられないのは当然だろう。


「あの、それで根菜は何でしょう?」


「ちょっと待って。……ウコンだって。NEWマークがついてた。ウコンってなんだっけ?」


「確か、ターメリックともいう、カレーに使う香辛料だったような……」


「後は、二日酔いに効く薬なんかにも使われるわね~。まあ、香辛料って結構生薬として使われるものも多いけど~」


「そんなものも生えるんだ……」


 料理人のジョブは持てど材料や調味料の知識はほとんどない正樹の疑問に、佑梨と命が端的に答える。


 もともと料理に欠片も興味がなかった男子高校生なので、こういう一般教養っぽい知識がぽろっとかけていても仕方がないだろう。


 ジョブやスキルでこのあたりの知識を補完するにしても、もっとレベルをあげないと厳しい。


「とりあえず、残りは30分の作物が三つね~」


「だね。とりあえず、次の作物を適当に指定したら、また素材収集かな?」


「そうですね」


 あと10分の表示を見て、あっさりそう決める正樹と佑梨。


 だべりながら待っていてもいいのだが、さすがに10分は長い。


 なお、20分の作物はニンジン、玉ねぎ、ナスが各2株、ウコンが1株だった。


「10分で戻ってこれる~?」


「がんばってみる」


「ですね」


 そう言って、畑を出ていく正樹と佑梨。


 二人が戻ってきたのは、きっかり10分後であった。


「「ただいま」」


「おかえりなさ~い。ちょうど収穫時期よ~」


 そう言って、畑を指し示す命。


 畑には、スイカとメロンとよく分からない木が育っていた。


「……あのつる草は一体?」


「鑑定によると、コショウね~」


「えっ? コショウ……?」


「コショウって、つる植物だったんですね」


 予想外のものを言われ、思わず固まってしまう正樹。


 ウコンの時点で予測してしかるべきなのだが、なぜか正樹の中では香辛料が収穫できることとコショウも栽培できるかもしれないことがつながっていなかったようだ。


 その横で、佑梨が妙なことに感心している。


「このコショウって、収穫した場合どうなるのかしら~?」


「どうなるって、何がですか?」


「コショウってね、一般的には黒コショウと白コショウがあるんだけど、違いは収穫後の処理だけなのよね~」


「そうなんですか」


「そうなのよ~。で、そのあたりはどうなるのかな~って」


 固まっている正樹を横目に、そんな難しい話をする命と佑梨。


 そこで、ようやく再起動する正樹。


「えっと、それ確認するの、悩ましい感じ」


「というと~?」


「スイカとメロンもそうなんだけど、コショウ、NEWマークつきで登録はされたんだけど、ロックかかってるんだ」


「あら~……」


「なんで、下手に収穫すると次が育てられないんだけど、ロックかかってるのが単純に種があればいけるのか、それとも謎の種だと現状栽培できないものでも栽培できるのか、そこが分からなくて……」


「確かに、そこを確かめないと下手に収穫できないわね~」


「だから、確認のために、今回は三つとも種にしておこうかなって」


「そうね~。それがいいと思うわ~」


「そうですね。少なくとも種があれば、次に確実につながりますし」


 正樹の判断に同意する命と佑梨。


 なお、三人とも仕様確認のためのコショウはまだしも、美味しくないのが分かっているスイカとメロンは、美味しく育つようになるまで種でいいと考えているのはここだけの話だ。


「じゃあ、次設定してまた素材集めてこよう」


「当面、仕様確認も兼ねて栽培できるものを片っ端から植えて種にする、でいいんじゃないでしょうか?」


「だね」


 そんなことを言いながら、適当に設定して素材集めの周回に入る正樹と佑梨。


 結局この日はなんだかんだで牧場も解放できてしまったため、釣り堀の確認は翌日に回すことになったのであった。

先に宣言しておくと、現状正樹が栽培できる作物はすべて、一切品種改良されていないものを全く工夫無しで雑に育てたものになります。

なので、まったく美味しくありません。

現時点だと、育てる意味があるのは薬草とか毒消し草なんかの、佑梨が調合に使える素材類ぐらいです。


そして、正樹に再生。さすがにないとだめだとさいころの神様が判断した模様です。

なお、神事の才能はおそらく、今の異界をクリアするぐらいまでは空気だと思われます。

たとえ巫女とか神官のジョブ引いても、神代神社にいる間はそもそも神事を行うことがないという……。

神託を受けることでレベルは上がるものの、神事の才能が育ったからといって神託のレベルとか機能に一切影響がないという悲しい事実が。

激辛以降になれば、ギミックで神事が必要になったり、神事マスタリーと神事の才能で巫女や神官のジョブやスキルに大きく補正がかかるレベルまで育ったりするので、この手の才能系タレントは成長の才能以外、辛口卒業からが本番となります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
 ニンジンがねぇ~。  昔々のニンジンは煮物にすると美味しかった。  今の時代のニンジンは煮物にすると、何を食べているか分からないと言う。  トマトやキュウリも同じ。  トマトは流通の関係で日持ちし…
体の95%が吹き飛ばされたら、即死しない方が難しくない?
収穫したはいいけど、美味しくないのが確定してるのがつらいな
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。