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アメイジングソケット 少年少女の異界攻略譚  作者: 埴輪星人


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第20話 初心者向け異界:辛口 七日目 専用装備1 その1

「そうそう、忘れないうちに初回ミッションとデイリーミッションの報酬、渡しておくわね~」


 昼食と片づけを終え、なんとなくまったりとした空気が流れている中、思い出したように命が言う。


「何気に、このデイリーミッションでは初めての報酬ですね」


「行って帰ってくるだけなのに、今日までかかったんだよね……」


「さすがに、この種の入門用デイリーミッションが、達成できるまで七日もかかったのは初めての経験ね~」


「だよね……」


「ですよね……」


 初心者向け異界で単に三つほどフロアを移動して帰ってくるだけのミッションだというのに、初めて達成できるまで約一週間かかる。


 普通ならあり得ない話である。


「……よし、ちゃんと専用装備1が解放できる」


「わたしもです」


「よかった~。ちゃんと調整はしてるけど、どうにも正樹君がらみだとおかしな結果が出がちだったからね~」


 ちゃんと解放できたという報告を聞き、ほっとした様子を見せる命。


 誰が悪いわけでもないのだが、正樹と佑梨に関しては本当に調整通りに進まないことが多すぎる。


「それで、どんな感じかしら~?」


「えっと……。ええ~……」


 命に問われて専用装備を確認した正樹が、絶望したという表情で地面に手をつく。


「……何か、変なものでも引いたの~?」


「キャンパー用万能スコップ、だって……」


「また、変わり種を引いたわね~……」


 正樹の言葉に、それはまた、という顔で正直な感想を漏らす命。


 一応武器として使えるものではあるが、武器の専用装備としては相当な変わり種である。


「あの、正樹さん。具体的にはどういうものなんでしょうか?」


「機能としては、まんまスコップ。なんか、埋まってる石とか木の根っことかをほじりだすのに、市販品より強力な補正がかかるらしい」


「はあ……」


「物理攻撃力と特殊攻撃力が+2されるらしいことと、キャンパーが固定・強化されること以外は特に機能とかなくて、扱いとしては普通のスコップとほとんど変わらないっぽい……」


「武器、なんですよね?」


「武器になってるし、攻撃力も一応上がるから、まあ武器だと思う……」


 聞けば聞くほど意味が分からない装備に、どう反応していいか分からない佑梨。


 正直な感想を言うと、苦労させられた割にショボい気がしてならない。


「専用施設も踏まえて考えると、正樹君の専用とつくものは強化が大変で即効性が薄いものか、生存と生活に有利な機能が充実しやすいものかのどちらかしかなさそうね~」


 仕様を聞いて、そんな推測を口にする命。


 正樹がショボいと嘆き、実際に現時点ではショボいとしか言いようがない専用装備1だが、ショボいまま終わる専用装備など存在しない。


 ただし、武器として強力かどうかと装備としてショボくないことは別問題なので、武器としては正樹の専用装備1は先行きが怪しいと言えば怪しい。


「実際に出してみる前に、次は佑梨ちゃんのがどんなものか確認しましょうか~」


「わたしのは、神子の大幣だそうです」


「今までのことを考えると、ものすごくストレートなものが出てきたわね~」


「そうですね。魔法攻撃力と特殊攻撃力が+2されて、錫杖に変身させることができるみたいです」


「巫女さんの装備って、イメージ的には大体そんな感じよね~」


「そうですね。で、錫杖の時は薙ぎ払いと振り下ろしのスキルが付いてて、適当に振り回しても多少ダメージが大きくなるそうです」


「それ、単に長物を大振りして当てればそこそこ威力が増える、っていう当たり前の効果を無理にスキルにしてるだけじゃないかしら~」


「多分そうだと思います」


 解放したて故に微妙なことしか書いていない大幣に、そんな感想を口にする佑梨と命。


 この時点ですでに正樹のものより高性能だとか、正樹のものには振り下ろしや薙ぎ払いすらついていないとか、そういう突っ込みはしない方針らしい。


「あと、一応巫女のジョブがあれば強化されるらしいですが、ジョブの固定機能はついてません」


「専用装備2にあるから、省略されたんじゃないかしらね~」


「ああ、そうかもしれません。あと、祓串のときは浄化能力を使えるそうです。ただ、これも巫女とかシスターとかの聖職者系ジョブがあれば普通に使えるものらしいので、最終的には死に機能になりそうです」


「どうせその頃には浄化能力の強化に変化してるでしょうから、死に機能にはならないと思うわ~」


 多機能ではあるがちょくちょく微妙さをのぞかせる佑梨の専用装備だが、今の段階でも正樹より将来性を感じさせるだけましだろう。


 それゆえに、うかつに文句も言えないのが難儀なところである。


「とりあえず言えることは、例の植物にも触手にも、有効な機能はないってこと」


「そうね~。ついでに言えば、スライムにも効くものはないから、専用装備1を解放しててもあんまり意味はなかったわね~」


「植物に関してはむしろ、正樹さんのほうが可能性がありそうな気がしますね」


 出そろった専用装備の情報を見て、そう結論をまとめる正樹たち。


 佑梨の専用装備2がいろいろすごかったので期待したが、解放したてのレベル1専用装備なんて本来はこんなものなのだろう。


「後は実際に呼び出してみて、どんなものか確認しましょうか~」


「そうだね。思ってるものと違うかもしれないし」


「そうですね。それにわたしの場合、祓い串はイメージしてるものでいいとして、錫杖っていろんなデザインのものがありますし」


「だね。まあ、佑梨ちゃんの錫杖はどんなデザインでも実用上はあんまり影響ないとして、僕の場合スコップが思ってる両手で使う大きな奴じゃなかったらちょっとね……」


「そういえば、スコップって地域によって大きいのと小さいの、どっちを指すかばらばらだったわね~」


「そうなんですか?」


「そうそう。基本的には関東と関西で大雑把に分かれてるけど、そこまで厳密に分かれてるわけじゃないっぽいのよね~」


 正樹の懸念にピンとこない様子の佑梨に対し、命はスコップの呼び方事情を思い出して納得する。


 武器としてスコップが設定されたのだから、普通に考えて塹壕戦で猛威を振るったと言われるタイプの、両手で持って足で踏んで掘る使い方をする大きなほうだと思うのだが、持ち主が正樹だ。


 幼稚園児などが砂遊びで使うような、プラスチック製のちゃちな小さい奴が出てきてもおかしくない。


「えっと、神様によると『実のところ、JIS規格的には大きさじゃなくて形状で使い分けてる』とのことです」


「ああ、そうなんだ……」


「『語源的には英語かオランダ語かの違いだけで、意味はほぼ同じ。そのせいか、日常生活では明確な使い分けはされてない感じ』だそうです」


「そりゃまあ、そうだろうね。というか、そうじゃなきゃ地域差が出ること自体おかしいし……」


「あと、『シャベルだったりショベルだったりは、単にどう日本語読みするかの違いだけ』とのことです」


「うん、それはそう」


 神様からの豆知識情報に、だからどうしたという顔をしてしまう正樹。


 正樹の不安の根本原因がそこにあるのは事実だが、今それを知ったところで何の意味もない。


「『という訳で、教科書にジンギス・ハーンがどういう名前で載ってたか、みんなで列挙していこう』とか、今やることでもなさそうなネタを……」


「あ~、典型的な読みが統一されてない人名ネタね~……」


「そうなんですか?」


「私が知ってるだけでも4パターンあるものね~」


「そんなに?」


「苗字がね、ハンとハーン、カンとカーンのパターンがあるから、この時点で4パターンね~」


「ああ……」


 今やることではないと言いつつ、命の説明に食いついてしまう佑梨。


「なんか、名前のほうもチンギスだったりジンギスだったりしたような……」


「たしかに、どっちも聞き覚えがありますね……」


「結局、発音をどう日本語で書くかだけの問題だから、探せばもっと珍妙な表記になってるパターンもありそうなのよね~」


 正樹まで食いついてしまったため、どんどん話が横道にそれていく一同。


 どうやらそれで機嫌を良くしたらしく、神様がさらに余計なネタをぶっこんでくる。


「なんか次は、『標準名称は今川焼だったらしい例のお菓子、地元で何て呼ばれてたかのコーナー』だそうです……」


「ああ、あれ、今川焼が標準名称なんだ……」


「うちの親戚が現実のほうの神社に来たときは、回転焼きって言って持ってきてたわね~」


「わたしの場合、一族が日本全国にいる関係上、大判焼きだったり太鼓焼きだったり、後ずぼら焼きなんかもありますね~」


「僕の家はまあ、基本的には今川焼かな。ただ、いとこが頑なにベイクドモチョチョって呼ぶんだよね……」


「それはないです……」


「ないわね~……」


 神様のお告げに踊らされて、さらに話が脱線する一同。


 下手にネタにすると戦争になる例のお菓子の呼び方について、なぜか大真面目に話し合う。


 なお、どの呼び名でも問題なさそうな態度の佑梨と命でも、出どころ不明のベイクドモチョチョは許容できないらしい。


「というか、なんであのお菓子の呼び名?」


「『正樹の専用施設だと、屋台で売りに出される可能性があるから、どんな名前になるのか気になった』とのことです」


「ああ、確かに農場公園だと、屋台ぐらいは普通に出るか……」


「ショッピングモールも、こういうおやつは割と売ってたりするわよね~」


 神様の言い分に、確かにそうかもと納得する正樹。


 命も、ありえそうなネタを口にする。


 そこに佑梨が、素朴な疑問を口にする。


「でも、ショッピングモールはともかくとして、農場公園でお祭り的な屋台が出てくる場合、どちらかというとたい焼きがよく売られてるような気がするんですが……」


「うん、確かにそっちかも」


 佑梨の素朴な疑問に対し、それもそうかもと納得してしまう正樹。


 実際、縁日などの屋台では、名称が安定しない例のお菓子よりはたい焼きのほうがよく見かける印象はある。


「で、そろそろ武器を出してもいいんじゃないかしら~」


「そういや、そういう話だった……」


「なんか、すごく話がそれてましたね……」


 脱線に飽きた命に言われて、ようやく本題を思い出す正樹と佑梨。


 そもそも、メインはスコップの呼び出しである。


「とりあえず呼び出そう」


「はい」


 これ以上脱線すると、いつまでたっても終わらない。


 そう判断して、サクサク呼び出すことにする正樹と佑梨。


 正樹の手元に出てきたのは、普通に大きなスコップであった。


「……よかった」


「『実はスコップ名義だと、JIS規格的には小さいほうが正しい』だそうですけど……」


「それが事実だとしても、今言わないで……」


「というか、いくら何でも機能が少なすぎる気がするので、何かあるんじゃないかなって思うんですよね」


「何かって?」


「定義でもめないように、サイズが好きに変えられる、みたいな?」


「ああ、ありそう……」


 佑梨の言葉に、普通にありそうだと納得してしまう正樹。


 そんな正樹の意識に反応したか、スコップがシュルシュルと縮んで、あっという間に園芸用の小型サイズに化ける。


「ええ~……」


「自分で言っておいてなんですが、本当に小さくなると反応に困ります……」


「まあ、専用施設1でも使うかもだし、サイズが自由に変えられて困ることはないんじゃないかな~」


 あっさり小型化したスコップに、釈然としない様子の正樹と佑梨。


 そんな二人を、面白そうに見守りながら、適当なことを言い放つ命。


 なお、佑梨のほうはというと


「……特に変わったことはないですね……」


「普通に祓串ね~。なんか変な装飾があるでもない、王道中の王道みたいな感じで、現実のほうの神社でも使ってるのはこれだわ~」


「錫杖に変えてみますね。……これも普通です」


「普通よりシンプルな感じね~。まあ、これは育てばどんどん派手になっていくでしょうけど~」


 特に言うこともなく、ネタにもならないぐらい普通のビジュアルであった。

専用施設がえげつない分、専用装備1が微妙性能な正樹君。

ちなみに、言うまでもなく専用装備としてはかなりショボい部類です。

普通は、解放直後でもあと一つか二つは能力か機能があります。

さいころ判定の結果を見る限りでは、次のボス戦は君の専用装備1がカギになるはずだ、たぶん!

なお、サイズ可変機能は冗談抜きで、定義でもめないためだけにつけました。

サイズ自由に変えられるんだから、どっちで呼んでもいいじゃん! って言い張っておきます。


余談ながら、成長曲線やら各種チャートの判定結果やらを見る限り、戦力としては専用施設2まで解放した佑梨が圧倒的に強くなる感じで草も生えない。

まあ、その佑梨も専用装備1は現状、しょぼい部類なのはご愛敬ですが。

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― 新着の感想 ―
小さいのがスコップ、両手で使うのは形によって剣スコや角スコ かなぁ シャベルとショベルは... ショベルカーとは言うけどシャベルカーとは言わない気がする(個人的意見) ござそ(ry
うわー。それで、このシャベル。大きい方とか、数は、どんな感じか気になりますw
軍用シャベルとか、割と馬鹿にできないもんだけど 強化していったら、そんな感じになったり?
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