第14話 初心者向け異界:辛口 専用装備2 その2
「さすがに、専用装備1までは無理でしたね」
「そこまで都合よくはいかなかったよね」
「でも、正樹さんの専用施設に関しては、いくつかの施設内施設は解放準備まで進みました」
「結局、雑草がなければ何も変わらないみたいだけど」
念のためにと手持ちの素材すべてを確認しなおし、そう結論を出す佑梨と正樹。
天空鬼灯と幽世鬼灯の勘違いもあって調べてみたところ、今朝から正樹が回収してきた素材で、農場公園内の売店とレストラン、釣り堀の要求素材がそろっていたのだ。
残念ながら、農場の解放が条件だったため、素材メモリーをセットしても解放準備と表示されてそれ以上の変化はなかったのだが。
「それで、そろそろ専用装備2は使えそう?」
「あともうちょっとみたいです。……あっ、使用可能になりました」
「名前とか仕様とかは見られそう?」
「はい。ちょっと待ってくださいね、今から見ます」
正樹に問われ、ステータス画面を開いて専用装備2について確認をする佑梨。
専用装備2は要求素材が専用装備1より重かった影響か、最後の一つをセットしてもすぐに解放されなかったのだ。
「えっと、装備名は”神子の霊装”で、正式名は自分でつけるようです」
「へえ」
「基本仕様として不壊と自動修復、即時装備・即時解除、成長装備という機能があって、これは専用装備共通だそうです」
「壊れられても困るからいいんだけど、不壊と自動修復って矛盾してない?」
「不壊というのは耐久値が0になっても消滅しないという意味らしいです。自動修復は、消滅していなければそのうち直るということみたいですね。専用装備の場合、耐久値0は破損状態という扱いらしいです」
「ああ、なるほど」
共通となる機能について説明され、納得してうなずく正樹。
どこまでもゲーム的な説明だが、それについては今更だ。
「てか、耐久値とか自動修復の話聞いて思ったんだけど、よくよく考えたら普通の装備についても、僕達何も知らないよね」
「確かにそうですね……。というか、普通の装備って、どうやって装備するんでしょう?」
「今までのパターンだったら装備ソケットとかありそうなんだけど、今のところないんだよね……」
実に今更なことについて、妙にしみじみと言いあう正樹と佑梨。
当人達にも自覚はあるが、二人してこういうところで抜けている。
「……よし、後で命さんに教えてもらおう」
「……そうですね」
どうせ分からないからと、当たり障りのない結論を出す正樹と佑梨。
チュートリアルを受けていないのだから、ガイドキャラに聞くというのはまあ、間違った判断でもないだろう。
「それで、他の機能は?」
「まず、シンプルに防御力と魔法防御力、特殊防御力が向上するらしいです」
「防御力と魔法防御力は分るとして、特殊防御力って何?」
「えっと、物理でも魔法でもないタイプの攻撃に対する防御力だそうです」
「やっぱり、そういうのもあるんだ」
「あるみたいです。代表的なところで幽霊が使う精気吸収とか、スライムとか蛇、ミミズ系のモンスターの得意技である丸のみとかがこのカテゴリーらしいです」
「ああ、そういうやつ……」
佑梨の説明を聞いて、一発で納得する正樹。
どれも作品によって扱いが違う、いわゆるジャンル分けが一定しないタイプの攻撃である。
強いて言うなら属性なし的な扱いで防御無視、ダメージはパラメーターに依存せず一定範囲の乱数を含む固定ダメージという扱いをよく見る印象だ。
「それといくつかの属性や状態異常、特殊攻撃に耐性が付くそうです。この装備の場合、属性は光と闇にちょっとだけ耐性が、状態異常は魅了とか混乱とかの精神系全体に強めの耐性が付くみたいです。それと」
「それと?」
「コメント付きで溶解無効と酸耐性特大が付いてます」
「それ、もろにあのスライムに対するメタだよね……」
「はい。実際コメントも『自分の神子がエッチな目にあうのは許容するけど、グロいのはアウトだと思うのでメタります!』って書いてますし」
「いやいやいや……。エッチなのも許容しちゃだめだと思うんだけど……」
「私自身もそう思うんですが、別の機能にも『派手さ美麗さ色っぽさと露出度はある程度関係があるので、目の保養のためにエッチなのは許容したいと思います!』っていうコメントが……」
「いやまあ、ラノベとかソシャゲの女性キャラって、服装に関してはそういう面があるのは認めるけど……」
佑梨を守護しているであろう神の言い分を認めつつも、ついつい渋い顔をしてしまう正樹。
なんというか、言っていることが割とおっさん臭い。
「で、このあたりが基本機能という扱いになっていまして、破損していなければ装備を出してなくても常時効果が出る機能だそうです」
「ふむふむ。ということは、装備を出してないと機能しないものもあるのか」
「基本的にはそういう扱いですね。ただ、今は機能していないだけで、逆に装備を出していないどころか破損状態でも機能するものもありますが」
「へえ~」
「機能名としてはフォームチェンジ・巫女とフォームチェンジ・シスターだそうです」
「あっ……」
名前を聞いた瞬間に、なんとなく全てを察する正樹。
さっきのコメントを踏まえると、どうせエロ聖職者系の衣装なのだろう。
「名前が付いているジョブを強化するのがメインの機能で、サブの機能として強化する対象のジョブを解除不能にする代わりに、ジョブソケットを増やしてくれる機能が付いてます」
「つまり、今は全く機能していないと」
「そうなります。巫女かシスターのジョブを拾うまでは、単なるコスプレ衣装ですね」
「だよね。で、ジョブを固定する代わりにソケットを増やすのが、破損してても機能する奴?」
「はい。さすがに破損したらジョブソケットが減りますというのは、なんだか重大な不具合につながりそうな気がしますし」
「うん、それはそう」
ジョブ固定関係の機能に対する佑梨のコメントに、真顔で全面的に同意する正樹。
そのタイミングで、佑梨がなんだか渋い顔をする。
「なに? どうしたの?」
「多分専用装備の機能なんでしょうけど、いつの間にかアビリティに神託LV1が増えてまして……」
「何か変なことを言ってきたの?」
「内容が変なわけではないのですが……、『ワイトもそう思います』だそうです……」
「……なんか、威厳とかそういうのが、がりがり減っていってるような……」
「……『日本神話の神々の行いに、威厳なんて求めるんじゃない!』だそうです……」
「ああ、うん、確かに」
いくつかの神話のエピソードを思い出し、そう納得するしかない正樹。
日本神話に限らず多神教の神々は、やっていることのスケールこそ大きいが内容はショボいというか、威厳や他者からの敬意を投げ捨てるような行いが多い。
良くも悪くも完璧という概念とは縁がないのが多神教の神々ではあるが、ここまで直接的に威厳を投げ捨てられると思うところの一つや二つは出てくる。
「後、追加の神託で『ちなみに、私こと佑梨の守護神はちゃんと女神。ただし、心におっさんを飼っている』だそうです」
「そういうことを堂々と宣言されると、すごく反応に困るんだけど……」
「わたしもです……」
威厳を投げ捨てるにもほどがある自称女神の言動に、二人して頭を抱える佑梨と正樹。
百歩譲ってフレンドリーなのはいいとして、ここまで低俗な言動をされるとありがたみもくそもない。
「ちなみに、LV1なのでお互いの負担がほぼゼロである代わりに、一度に140文字まででかつ拠点にいる間しか神託を下せないようです」
「鳩のマークからアルファベット一文字になったSNSの、初期仕様みたいなシステムだね……」
「多分、神託LV1に許される容量がそれぐらいだったんでしょうね……」
恐らく宣伝などで日本で一番使われているであろう、つぶやきという意味の名前からスタートしたSNSじみたシステムにどんどん神秘性が薄れていくのを感じる佑梨と正樹。
宗教施設に身を寄せているというのに、命も含めてあからさまに信仰心というものが薄い連中がそろっているからまだいいが、これが一神教の熱心な信者相手だったらどんな暴動が起こるか分かったものではない。
「……しかし、まだ実際に装備してないっていうのに、なんでここまで疲弊させられてるんだろう……」
「……ですね……」
「それはもう、神様ってそういうものだからとしか言えないわね~」
耐性あたりからの突っ込みどころの嵐に、心底ぐったりする正樹と佑梨。
そこに、麦茶とグラスを持って入ってきた命が、何でもないようにそう言い切る。
「まだ、装備のデザインとかは見てないんだね~」
「はい。というか、現状単なるコスプレ衣装なので、別に見なくてもいいかなと……」
「いやいやいや~。衣装とか鎧の類になる専用装備2はね~、受けたダメージを耐久値で肩代わりしてくれるっていうありがたい機能があるんだから、ちゃんと見とかないとだめよ~」
「えっ? そうなんですか?」
「ええ。装備しないと表示に出ないんだけどね~、これも実質的に専用装備2の共通機能ね~」
麦茶を注ぎながら、そんな情報をくれる命。
やはり、まだまだ命から教わる必要があることはたくさんありそうだ。
「にしても、専用施設1の内容から予想はしてたけど~、最初から盛り沢山ね~」
「そうなんですか?」
「ええ~。一つ一つの補正そのものは普通ぐらいだけどね~、最初からフォームチェンジとか特定ジョブの固定と強化とか、そういう高度な機能が付いてる専用装備ってめったにないわ~」
せっかくだからと、佑梨から装備の機能を聞いた命が、そんな感想を口にする。
他を知らないので分からないが、大分盛られている気がしたのは間違いではなかったようだ。
「ちなみに、一ついいことを教えてあげるとね~」
「はい、なんでしょうか?」
「佑梨ちゃんの守護神様は、間違いなくこの神社で祭ってる神より格上よ~」
「「……えっ?」」
「というか、日本神話あるあるの、外来の主神級が八百万の神々の一柱に擬態してる系の神様ね~」
命がしれっと、とんでもないことを言ってのける。
その言葉に、思わず絶句する正樹と佑梨。
ここまでの言動を振り返っても、そこまで強力な神には到底思えない。
「この状況で防御面だけとはいえ、あのスライムに強力なメタをはれる時点で、かなりとんでもない神なのは分ると思うけど~?」
「……それを言われてしまうと、そうかも……」
「……そうですね……」
命に根拠を示され、嫌そうな顔で一応納得する正樹と佑梨。
正直、あの言動で主神クラスの強大な神だなんて、認めたくないところだ。
「……えっ!?」
「どうしたの~、佑梨ちゃん?」
「あの、神様がとんでもないことを言い出しまして……」
「なになに~?」
「わたしの家の祭神様、安土桃山時代ぐらいに今の神様に身売りしたそうで……」
「そうなんだ~。で、佑梨ちゃんって、その神様を祭る巫女の立場かしら~?」
「あっ、はい。厳密には母が当代の巫女で、わたしは跡継ぎで見習いの立場ですけど」
「なるほどね~。ってことはやっぱり、佑梨ちゃんの実家って鎌倉時代ぐらいからある、形の上では分家になってる類の、祭祀をつかさどってる本家より重要な家って感じかしら~?」
「分かるんですか?」
「確信はなかったけど~、スキルとアビリティを見てそんな感じかな~って。あと、実家は裏鎌倉あたりにあるんじゃないかしら~?」
「……なんで分かるんですか?」
「そっちはあれよ~。いわゆるお約束ってやつね~。どうせ佑梨ちゃんのお爺ちゃんか曾お爺ちゃんは、総理経験者か何かで鎌倉のあのお方って呼ばれてるんでしょ~?」
「……はい」
話の流れと勢いで、佑梨が実はものすごいお嬢様であることを暴露する命。
その祭神が心におっさんを飼っているオタ系の女神というのは、とてもやめてほしい情報である。
「じゃあ、せっかくだから、一度ぐらいは専用装備を出してみて~」
「……はい、わかりました」
命に言われ、しぶしぶ立ち上がって専用装備を身に着ける佑梨。
まずは巫女フォームからにする。
「……よく大きな神社とかで見かける、ごくごく普通の巫女装束だね」
「そうね~。いわゆる下働きしてる感じの子たちが着る、特別に露出も装飾もない感じのやつね~」
「えっと、『ここからアップグレードでどんどん派手にきわどくなっていくのが醍醐味』だそうです……」
「分かるけど、もうちょっとひねってくると思ったのよね~」
祭神やら実家やらの話では迂闊に口を挟めなかった正樹が、どことなく拍子抜けした感じで正直に感想を口にする。
命のほうも、真正面から普通に巫女やっているという感じのデザインに、意外だという気持ちを隠せない。
なお、命が普段着にしている巫女装束は、今佑梨が着ているものにいくつか装飾を足し、幾分派手にした感じである。
体形の問題で胸元がやや怪しいが、そこ以外は特に大きな露出はない。
「じゃあ、次はフォームチェンジ・シスターだったかしら?」
「はい。……なんですか、これ?」
「上半身は確かにシスターって感じだけど、なんで下が緋袴なのかしらね~?」
「しかも、やたら体の線にぴったり張り付けてるのはどういうことなのか……」
シスターフォームのデザインを見て、戸惑いの声を上げる命たち。
さすがのソシャゲーやラノベでも、シスターの上半身と巫女の下半身という和洋折衷はまず見ない組み合わせだ。
初見ではその異様さに目を奪われるが、上半身のデザインが全力で露出度ゼロ近いエロシスター方面に振っているため、着やせするタイプである佑梨の巨乳一歩手前の胸部がこれでもかと強調されて大分目に毒である。
「……えっと、『隠れキリシタンってこんな感じだと想像してデザインした』だそうです」
「隠れキリシタンに全力で謝れ!」
とんでもないことを神託で告げてくる女神に、全力でそう突っ込むしかない正樹。
正樹の突込みに内心全力で同意しつつ、これからの先行きが大いに不安になる佑梨であった。
やっと佑梨の初期習得アビリティに関する背景設定を出せました。
なお、本来の守護神は土着の神様でいわゆる国津神の類です。
が、いろいろあって力が弱ったところを、今の守護神の庇護下に入ることで生きながらえた感じです。
詳しいことは何も決めてませんが、何となく白蛇の神様だと思ってます。
今の守護神に関してはさほど詳細設定は決まってませんが、確定している点として
・日本神話以外どころか、地球がある世界の神様ですらないレベルの外来種
・愉快犯的な神格だが、その中では悪辣さはだいぶ薄いタイプでかつその気になれば余裕で主神張れる存在
・多分女神
・似たような性格してるけど、澪や某立て札ではないのだけは確定している。
・今の立場になったのは多分鎌倉時代ごろ
・守護した隠れキリシタンを、その愉快犯的性質で完全に神道方向に変質させている。
・心の中に極めて巨大なおっさんを飼っている
・インターネット老人会所属
という感じです。
ただまあ、立て札ほど直接的に何か干渉したりはしないというか、ツイッターもどきで茶々入れする以上のことは基本しない予定です。




