驚きと共に
結局、今日は何かの薬の材料になる草と食用の野草しか取れなかった。まあ大体はこんなもんだ。鑑定スキルなんてものは持ってないし、取れすぎても持って帰れない。この世界に収納の魔法かスキルがあるのかは知らないが、少なくとも魔法の袋は庶民には買えない値段だということは確かだ。それでもいつか買おうとは思ってる。
「夕飯食べて、宿に戻って、今日は早めに寝ておくか」
もう同じ宿に泊まって一年以上になる。人通りもそこまで多く無い上、綺麗な方だと思うため居心地も悪く無い。正直当たりを引いたと思っている。
次の日、いつもの仕事をこなし、午後は森に行くことにした。取れたものは市場に売っても良いんだが、需要があるものはギルドでも常設依頼として買い取ってもらえる。金と貢献度が同時に稼げるため少しでもやっておくと良いのかもしれない。
「昨日はめぼしいものがほとんど取れなかったし、今日は反対側にでも行ってみるかなー」
1人でいると独り言が多くなる。パーティーを組むにしても俺は殆ど討伐に出ないから旨味が少ない。それでもたまには他人と一緒に働いてみたいもんだ。今度リーディスあたりでも誘ってみるか。
おっ、ムラサキマダラキノコの株だ。これは毒薬の材料として買い取ってくれる。
「gigya!gigi!!」
「gigigigi!gaggigya!」
うわ、ゴブリンだ。しかも二体。こんな森の浅瀬で出くわすなんて運が悪いぜ。
仕方ない。もう逃げられる距離じゃ無いし討伐するかあ。
「【身体強化】」
淡い光が体を包む。発動の合図だ。俺には強化系スキルの適性があるらしく、比較的早くこのスキルが使えるようになった。以来、緊急時の相棒である。今の俺の力では消費が激しいから連続使用は厳しいけど。
「gigiga!!」
近い方のゴブリンが棍棒を振りかぶって近づいてきたので、すれ違いざまに一撃。傷は深い。追撃はいらないだろう。
「もう一体は……後ろか」
背後からの攻撃を横に転がって回避、すぐに起き上がり投げナイフで牽制。弾かれるが、その隙に近づいて剣を振る。
「gya!ga……」
これで終わりか。うまく行ったぜ。
ちなみにゴブリン二体同時討伐の適正はブロンズランク1人かアイアンランク2、3人だ。俺のスキルは出力が強いのか1人で倒せるが、ちょっと目立つため人には言っていない。
「ふう……」
いや、後ろの樹の近くに何かいるな。
「えっと、魔物が2体なのに人の気配が1人だったから様子を見にきたんだけど……無用だったかしら」
おや、例の新人(?)さんじゃないか。昨日と違って深いフードをかぶっていてわかりにくいが、この声と髪は間違いないだろう。
それにしても、気配だって?随分強そうなスキルを持ってそうだな。
「できれば今の戦闘は見なかったことにしてもらえるとありがたいんだけど」
「……?まあ、構わないけれど。それにしてもあなた、見た目以上に強いのね。なんでアイアンなのか不思議だわ」
そこを突かれると痛い。
そろそろ上げようと思ってるんです、はい。本当です。
「まあそこはいいだろ。それより、そろそろ日も落ちる。早く戻らないと」
「そうね。そうしましょうか」
あれ、これ一緒に戻る流れ?




