挿れてほしい
視界が青く揺らぐ。音の消えた世界をわたしは進む。まっすぐ伸ばした指先が、冷たい質量を切り裂いていく。静かに、深く。空間と同化していく感覚——。
やがて浮力が、体を緩やかに持ち上げた。わたしは水面から顔を出す。
「よぉーし、勝ったーっ!」
「クソぉー。パン奢りかぁ」
瞬間、耳に飛び込んできたのは男子たちの声。パシャ、ザプン、と水しぶきの音がそれに続く。
「おーい、日向ぁー。なにボーッとしてんだぁ、泳げー」
プールサイドから、ぼやぼやとした加納先生の声が響いてくる。水着の上にパーカを羽織って、日の光が眩しいのか、いつも眠そうな目をさらに細くしている。
わたしは弧を描くように手を前に出し、水を蹴り、思い出したように泳ぎはじめた。惰性で泳ぐ熱帯魚が、とりあえず水槽の端を目指すように。ぱちゃり、ぱちゃり、と申し訳程度の水音を上げながら手は水を掻いていく。そのうち、壁に触れた。
プールの底に足をつく。
「ナイススイム、こはる」
「陽菜」
すぐ真上から聞こえてきた声に顔を上げる。こちらを覗き込むようにしてプールサイドに立っている陽菜の顔があった。
「すぐ隣を泳いでました」
「全然、気づかなかった」
「こはる、ぼうっとしてるんだもん。隣から、こはるのいかにもやる気ない泳ぎを笑いを堪えながら見てたよ」
そう言って陽菜は可笑しそうに笑顔をつくる。「早く上がってきなよ」の声に、わたしは縁に手をつき、ザパリと水から上がる。
「だって、本気で泳ぐとなんか、あとで疲れるからさ」
「あぁ、あるよね。水泳の授業のあとにくる、あのなんか謎の倦怠感」
「そうそう。だから午後の授業で眠くならないために、いまは手を抜いて体力を温存しておくんだよ」
「授業のために授業で骨を惜しむ……真面目なのか不真面目なのか」
陽菜と二人、またスタートのほうに戻るべく、プールサイドを歩き出す。三、四限目の水泳の授業。いまは二十五メートルの反復練習の時間だ。このあと五十メートルのタイム計測があり、そのためのウォーミングアップも兼ねているらしい。この二十五メートルをあと何回泳がされることになるかは知らないけれど、成績に関わる本番が控えているのなら、ウォーミングアップで疲れてしまっては元も子もない。ここはやはり全力で手を抜こう、とあらためて決意する。
「ねぇ陽菜、ところでさっき、『ナイススイム』って言ってたけど……あれ何?」
「何って、走った人に対して『ナイスラン』って言うじゃん。あれの泳ぎ版」
「へぇ……そんなのあるんだ」
「いや、実際にあるかは知らないけど。聞いたことないし」
「あ、そうなんだ……。じゃ、陽菜のオリジナルか」
「そうだね。だからもしこの世に存在しなかった場合、商標権はあたしってことになる。誰かが使うたび、あたしにロイヤリティが支払われると」
「『聞いたことない』って言ってる時点で、使う人あんましいなそうだけど……」
ピーッ! と、プールサイドの反対側から鋭いホイッスルの音が鳴り響いた。「コラッ! お前たち、プールサイドは走るな! 歩け!」と怒鳴る沖田先生の声がそれに続く。鍛え抜かれた逆三角形体型の男の先生。男子たちからは「ゴッツ」と二秒で考えたようなあだ名で呼ばれている。
「元気だねぇ、男子は」
やれやれ、というように首を振る陽菜に「ね」と苦笑で答える。通常、体育の授業は男女別々で行なわれるのだが、何週かに一回の割合で合同で実施される回がある。何かしらの目的を有した、我が校の「教育の一環」らしい。それが今日の水泳の授業にも適用された形だ。
のだけど、はっきり言ってこっちからしたら、いや、もしかしたらむこうにとっても、正直迷惑でしかない。泳ぐレーンは分けられてるとはいえ、思春期の男女が、こんな薄い布一枚でしか覆われていない体を見せ合うことにどんな教育的意義があるのか。男子たちはあまり気にしていないようにも見えるけど、少なくとも我々女子は大いに気にしている。だから今日は普段より見学の子が多いように見えるし、授業に参加している子も、プールから上がったら流れるようにラップタオルを体に巻く。かく言うわたしと陽菜もそう。自意識過剰、と言われるかもしれないけど、やっぱり気になるのだ。
それからさらに三回、二十五メートルを泳いだ。その後、先生二人による指示があり、五十メートルのタイム計測の時間になった。ようやく本番。抜いて泳いでも、疲れるは疲れる。これからさらに五十メートル泳ぐのか……。これは今日の午後も残念ながら居眠りコースだな。グンナイ、古文。
左右二レーンずつに分かれ、男女それぞれタイム計測が始まる。一応ここは成績に入るので、ちゃんとやらないといけない。順番待ちの列に並び、体育座りをする。プールサイドのざらざらとした床に座っていると、お尻が痛くなってくる。信じられないことに、我が校の指定水着は現在主流のセパレート型やスパッツ型ではなく、ワンピース型だ。紺色の一枚布で体の線をくっきりと浮かび上がらせる、いわゆる昔ながらの「スク水」。だから下半身を覆う面積が少ないので、座っているとお尻が痛くなってくる。わざわざ時代に逆行するような水着の指定に、どんな教育的意義があるというのか。やはり学校総出でセクハラをしかけられているようにしか思えない。
痛むお尻を庇うようにもぞもぞと体を動かしていると、「こはる」と後ろから声をかけられた。
「あぁ、愁衣さん。同じコースなんだね」
「えぇ、そうみたい」
と愁衣さんは微笑む。トレードマークの長い髪がスイミングキャップの中に隠れて、なんだかいつもより幼く見える。丸出しになったつるんとしたおでこがゆで卵みたいでちょっと可愛い。
「……ん?」
「どうしたの、こはる?」
「いや……なんか愁衣さん、ちょっとだけ顔赤くない?」
「え? そ、そんなことは、ない、わよ……」
「いや、やっぱちょっと顔赤いって。なんか目も少しとろんとしてるし……もしかして、熱中症?」
すると愁衣さんは観念したように、コクンと頷いた。
「やっぱり! なんで隠そうとしたの? ほら、立って。保健室行くよ」
と、わたしは愁衣さんの手をとって立ち上がりかける。
「あぁ、待って、こはる。大丈夫なのよ。たしかに熱中症だけど、これはその……大丈夫な熱中症なの」
「大丈夫な熱中症……? なにそれ、熱中症なら大丈夫じゃないでしょ」
「それが、大丈夫なの。説明するから、とにかく座って」
「……まぁ、わかったよ」
「でも、手は繋いだままでいて」
「それは意味わからんだろ」
ひとまず、言われたとおりおとなしく座る。もちろん、手は離した。
「それで? どういうことなの、大丈夫な熱中症って?」
「その前に、こはる。よく気が付いたわね、私の顔が少し赤いことに。さっき加納先生とも少し話したけれど、全然気づかれなかったのに」
「んー、まぁ、なんだかんだ最近よく一緒にいるからね。たぶんいまわたし、愁衣さんのことなら、ほんのちょっとした変化でもすぐに気づける自信あるよ」
「こ、こはる……」
「……あ、あれ? なんだか顔が急に赤く……。大丈夫? やっぱり保健室行ったほうがいいんじゃない?」
「こはる……あなたはなぜ肝心なところだけ、そう鈍感なの……?」
愁衣さんはなぜか残念そうな顔でわたしを見てくる。そして小さく息を吐いてから、言った。
「私のこれは、『局所的熱中症』なのよ」
「局所的……?」
「そう。顔、手、足など、強い日光に当てられた箇所が、部分的に炎症を起こすの。全体ではないから、通常の熱中症のように全身の倦怠感や目眩などの症状は現れない。もちろん炎症だから多少の痛みやヒリつきはあるけれど、それさえ我慢すれば問題なく元気でいられるわ」
足、と言われてふと見ると、タオルの隙間から覗く愁衣さんの左足の脛のあたりが、顔同様かすかに赤らんでいるのが見えた。これもその「熱中症」によるものなのだろう。
「『問題なく』って……痛みを我慢してる時点で、問題はあるじゃん。治す方法はないの? あるなら言って。わたしにできることなら、協力するから」
「こはる、でも……」
「いいから。……そりゃ、内容によっては手伝えるかわかんないけどさ。でも、我慢してる、なんて言われたらわたし、愁衣さんのこと放っておけないよ」
「こはる……」
「ほら、また顔が赤くなってる。症状が悪化してきたんじゃないの? 急いで治療しないと」
「こはる……あなたもはや、わざとやっているの……?」
愁衣さんはまた小さくため息をついたあと、タオルから手を出し、自分の頬に指先を当てる。
「誰か他人に、炎症を起こしている箇所に直接手を触れてもらえれば治るわ」
「触れる……? それだけでいいの?」
「えぇ。他の人の手を通して、炎症部位に溜まった過剰な熱エネルギーを吸収・分散してもらうことができるの。いわば、人体をヒートシンクのように機能させるやり方で——」
愁衣さんの説明を遮るように、「えい」と愁衣さんの頬に手を触れてみる。まだ水気を帯びた手が冷たかったのか、「ちめたいっ」と愁衣さんは目をきゅっと細くさせた。
「わ、ほんとだ。愁衣さんの顔の火照りがとれていく」
「もう、こはるったら強引なんだから……。でも、おかげで顔の炎症はおさまったわ、ありがとう。ちなみに、この治療によってこはるの手や体に私の熱中症が移ってしまうことはないから、安心してね」
「そうなんだ。じゃ、こっちも……」
と、わたしは、さっき見た愁衣さんの左足の脛あたりに触る。微かな赤みはすぐにすっと消えていった。
「あはは、おもしろい。なんか魔法使いになったみたい」
「こはる……」
「あ、ごめんね……なんか、魔法使いとか、病気のことなのに、不謹慎な言い方して……」
愁衣さんはタオルをめくり、日の光にぬらりと光る右足をすっと出してくる。
「こっちも、触ってくれていいのよ……」
「あ、そっちは炎症起こしてないみたいなんで、大丈夫です」
愁衣さんはしゅんとした顔で、タオルの中に右足をそっとしまう。
「でも、こんなに簡単に治るなら、もっと気軽に声かけてくれてよかったのに。なんでもっと早く言ってくれなかったの?」
「いつもこはるに迷惑かけてばかりで、悪いと思って……」
「なら、もっと違う発作や症状のときに気を遣ってほしかったですけどね……。ま、これくらいなら全然迷惑じゃないから、いつでも声かけてよ」
そう言って前を向く。もう少しでわたしの泳ぐ番がやってきそうだ。と、「こはる」とまた後ろから声がかかった。
「ん? なに?」
「実は、他にもまだ炎症を起こしている箇所があって……」
「そうなの? どこ?」
すると愁衣さんはタオルをさっきよりも大きく広げ、両足を「M」の字のように開脚させて前に出した。そして人差し指で太ももの付け根あたり、いわゆる鼠径部のあたりをそっと指さす。
「ここ」
「……」
「……」
「わたし、魔法使い引退する」
「そんな! こはる、あなたの冒険はまだ始まったばかりよ! 一緒に賢者の石を探しましょう!」
「いや、だってそんな場所……だいたい、なんでそんなとこ熱中症になってんのよ。水着着てるんだから、日光受けても大丈夫なはずでしょ?」
「いいえ、こはる。私の肌の弱さを見くびらないでちょうだい。こんな薄い布一枚身に着けていたところで、私の肌は容易にそれを貫通し、日の光に焼かれてしまうわ」
「なにを誇らしげに。にしたって、なんでそんな場所に炎症が……」
「うふ。こはるがあんまり私をキュンとさせることばかり言うから、下半身が熱をもってしまったのかもね?」
「……治療が必要な場所って、本当にそこ? 頭じゃなくて?」
「さぁこはる、一緒に賢者の石を」
「そんな場所に賢者の石はない」
「そうね。たしかに、どちらかというと炎のゴブレットだったわ」
「お前、もう黙ってろよ」
ピーッ! というホイッスルの音が響く。ざぷん、と鳴る水の音。列の前の子がまたスタートを切ったのだ。愁衣さんと共にひとつ前に詰める。
「……とにかく、その場所については治療は無理だから諦めて我慢してください」
「そんな……こはる、さっきと言ってることが違うわ」
「わたしの見通しが甘かったです。訂正してお詫びいたします」
「頭を上げて、こはる。何が問題なの?」
「問題しかないと思うんだけど」
「こはるは、私の股に手を触れるのが嫌なの……?」
「『愁衣さんの』っていうか、まず前提として、わたしは人の股を喜んで触ろうとはしない。それを差し引いたとしても、この状況で、その部分に直接手を触れるのは無理があるでしょ。まさか、水着を脱ぐわけにもいかないし……」
「平気よ、脱がなくても。こう、股から水着の隙間に手指を挿し入れてくれれば……」
「だから、それが無理だって言ってんの! こんな衆人環視の中……」
「んー……。衆人環視といっても、みんな私たちのように前後でお喋りしている人がほとんどだし、お互いのタオルで隠しながらやれば大丈夫じゃないかしら?」
「……」
愁衣さんのこういうところはもう少し自覚をもってほしいと思う。タオルで隠れているとはいえ、クラス、いやもしかしたら校内ナンバーワン美少女の愁衣さんが水着姿でいるのだ。さっきからずっとチラチラと、男子たちの視線がこちらに注がれているのがわかる。
「とにかく、無理。リスクが大きすぎる」
「そんな、こはる……。あぅ」
「……どうしたの?」
「股が、炎症を起こして熱いの……。痛い、熱い……」
「『問題なく我慢できる』って言ってただろ、さっき。急にそんな小芝居始めたって、無駄だからね」
「うぅ……熱いわ、こはる……。股が、熱い……あぁ」
「……あの、とりあえずいったん黙ってもらっていい? ちょっとなんていうか、聞こえ方が……。いや、そりゃね、助けてあげたい気持ちはあるけどさ、いまのこの状況じゃ、どうにも……」
「つまり、みんなの目を一か所に引く方法があればいいのね?」
「まぁ、そうだけど……。そんな方法、あるの?」
「『あ、UFOだ!』って、空を指させば……」
「……それ、本気で言ってる?」
と、そのとき、
「次ぃ、篠崎」
と加納先生の気だるげな声が聞こえた。「はい」という返事とともに、隣の列の先頭にいた陽菜がタオルを取り、颯爽と立ち上がる。ボイ~ン、と効果音が鳴りそうな二つの大きなものを引っ提げて、飛び込み台に背筋を伸ばして上がる陽菜。男子たちの視線が、一斉にそちらに注がれるのがわかる。
「こはる……」
「……うん。神様って、不公平だよね」
——でも、いまは! ありがとう、神様! やるならいましかない。わたしはタオルで隠すようにしながら、愁衣さんの太ももの付け根に手を伸ばした。
「こはる、挿れて……」
「黙れ」
水着の裾に手を触れる。そこから、裾ゴムをぐっと持ち上げるようにして水着の中に手を差し入れた。濡れた生地が手の甲にきつく食い込んでくる。反対に、手のひらに触れる愁衣さんのしっとりと濡れた肌は、瑞々しい果実のようにもっちりと柔らかかった。
「気づいた、こはる?」
「——なにが?」
「水泳に備えて、私、今日はちゃんと剃ってきているのよ」
「頼むから少し黙っててくれよ……」
手が触れた箇所から熱が引いていくのがわかる。もう大丈夫そうだ、とそっと手を抜くと、愁衣さんがもう一方の水着の裾を自分でそっと持ち上げた。
「こはる、実はこっちも……」
先に言えよッ!! と叫びたい衝動を抑えつつ、反対側の手を勢いよくその隙間に突っ込む。
「アッ、こはる、そんな、深ぃ……」
もう「黙れ」と言うのも疲れた。いっそ太ももをつねってやろうかとも思ったけど、それで声を上げられても困る。熱が引いたのを確認し、中から手を引き抜く。
ピーッ! とホイッスルの音がし、身体がビクンとなる。振り返ると、列の先頭がまた一人スタートを切ったところだった。……ふぅ。とりあえず、誰にもバレてなさそうでよかった……。
「ありがとう、こはる」
ニコニコとした笑みで愁衣さんが言う。
「これでもう、『熱中症』の箇所は全部なくなった?」
「えぇ、おかげさまで。これですっきりした状態でタイム計測に臨めるわ」
そりゃよかった。こっちはなんだか精神的に疲れて、タイムはあまり期待できなそうだよ……。
「……でも、そもそも愁衣さん、熱中症のことがあるなら、最初から先生に言って休ませてもらえばよかったのに。やっぱり、タイム計測があるから? 成績のため?」
「ううん、違うの。水泳の授業は、その……」
と、愁衣さんはきゅっと顎を引き、もじもじと少し身をよじらせるようにして言った。
「こはるの、いつもと違った姿が見られるから。帽子でおでこがぷくっと出てるの、なんだかいつもより幼く見えて、可愛いわ」
「あぅ……」
何て返事をしたらよいかわからず、言葉に詰まってしまう。まさか愁衣さんもわたしに対して同じことを思っていたなんて……。恥ずかしくて、なぜだか少し嬉しいような、変な気持ち——。
「こはる……」
「う、愁衣さん、その……」
「だから、いいわよね?」
「……へ?」
「いい」って、何が……? そう思っていると愁衣さんはラップタオルのボタンを外し、自分の右手を露わになった左脇のあたりに持っていく。直後、
カシシシシシシシシシ————
連写音。水着の隙間から覗くスマホのレンズがこちらに向けられていた。
「……」
「……」
「どこに何を隠し持ってんだ、あんたッ!?」
撮られた写真はすべて消去しておいた。
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【おまけ:その日の夜、チャットアプリ内での二人のやりとり】
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〈こはる、見て〉
〈魔法少女こはる〉
〈え、なにこれ〉
〈どうやって作ったの?〉
〈加工するアプリがあるのよ〉
〈昔、放送されていた魔法少女の画像と〉
〈前にもらったこはるの顔写真を合わせたの〉
〈水泳の授業で、魔法使いって言ってたの思い出して〉
〈へぇ〉
〈あの〉
〈この写真、もらってもいい?〉
〈断りなく保存してくれていいのに〉
〈こはるは真面目ね〉
〈ひょっとして、こはる〉
〈魔法少女とか、好きなの?〉
〈まぁ、いまはもう観ないけど〉
〈小さいころは好きだった〉
〈奇遇ね〉
〈私もよく観てたわ〉
〈ねぇ、こはる〉
〈もし魔法少女になったとしたら〉
〈どんな魔法が使いたい?〉
〈んー〉
〈まぁやっぱり、空は飛びたいよね〉
〈あと、ステッキからビーム出すとか〉
〈いいわね〉
〈そのあたりは、全魔法少女にとってのたしなみよね〉
〈愁衣さんは?〉
〈どんな魔法使いたい?〉
〈私は〉
〈大きなお友だちにお金を落とさせる魔法ね〉
〈まぁ〉
〈それも全魔法少女にとってのたしなみだね、ある意味〉
〈あとは〉
〈こはると会いたいときに会えて〉
〈二人きりでどこかへお出かけができる魔法〉
〈なんでわたしピンポイント狙い撃ちなんだ〉
〈ていうかそんなの〉
〈魔法使わなくたっていつでもできんじゃん〉
〈こはる……〉
〈じゃあ、いまから会いに行ってもいい?〉
〈いや、いまからは〉
〈もう夜だし〉
〈ていうか愁衣さん〉
〈わたしの家の場所知らないでしょ〉
〈人の家の住所がわかる魔法〉
〈個人情報は怖いのでやめてください〉
〈魔法を犯罪に使わないで〉
〈そうね〉
〈捕まってしまうわね〉
〈そうだよ〉
〈アズカバンの囚人になってしまうわね〉
〈今日何度か思ったけど、愁衣さんってハリーポッターも好きだよね?〉
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お読みいただき、ありがとうございました。
次回第12話は9月25日(金)18:00に、第13話は9月27日(日)20:00に投稿予定です。
よろしくお願いいたします。




