第64話
我が瞳は御身のうつしみ―――
眼差しに晒された身は彼の愛で蠢き、理は解かれる
血は穢れ
骨は軋み
肉は蕩け
深淵より覗く眼差しを受け、人の身は逸れる
「ねぇ~。頼人、遊んでよ~」
双子の頼人が顔をしかめるのも気にせず、彼女と繋いでいた手を引き離して間に入る。私を見た瞬間、顔を歪めた彼女さんに小悪魔を意識した笑みを浮かべながら、頼人の腕へと抱きついた。
見栄っ張りな頼人が、私のものだと分かるように!
「…玲奈」
やれやれと言いたげな声音が頭上から降ってくる。
「なぁに?」
全く、何が不満なんだか…。頼人の腕に抱き着いたまま、頬を膨らませて見上げる。
「あの頼人君、また…?」
邪魔に入って何回目だっけ? いつもより長続きした方かもね。
「悪い」
「今度は、バレないようにするって言ったのに…」
「二人で遊園地に行こうよ~」
彼女さんの手に握られていた遊園地のチケットをふんだくる。
「ちょっと!」
彼女さんが一瞬、私を睨むと、次には…わざとらしく目をウルウルさせて困ったように頼人へと目を遣った。
―――はい、チェックメイト
「…ごめんなさい。私、もう無理」
彼女面した女は未練がましくハンカチを取り出して、目元の涙を拭った。もう無理だと一方的に頼人をフったくせに、ちらりとこちらを見て走り去っていく。
「バイバ~イ」
ムカついたので、背中が見えなくなるまで大きく手を振って見送った。
「あ~ぁ、フラれちゃったね」
上目遣いで頼人へ視線を戻すと、割と痛めのデコピンが額を直撃した。
「イッッタァ!!」
「お前、いい加減にしろ。今日はデートだって言っただろ」
我儘な頼人の長い長い説教が始まった。聞き飽きていることをアピールするために、頼人の腕を軸にグルグル回って遊ぶ。その様子に頼人は「はぁ~~」と聞かせるように大きくため息をついて、大げさに肩をすくませた。
「いいじゃん、別に」
「はぁ…どうすんだよ。暇になったじゃないか」
「だから、遊園地に行こうって言ってるじゃん。チケット、ちょうど二人分あるし」
女から奪い取ったチケットを見せつけると、頼人は目を大きく見開いて「ふっ、はははっ!」と吹き出すように笑って膝を叩いた。
「はははっ、もういいや。ここから先は、お前が奢れよ!」
頼人は笑いながら犬でも撫でるように私の頭をわしゃわしゃと撫でた。
せっかく、セットしてきた髪が台無し、もう笑うしかないじゃん。
「えぇ~! しょうがないな」
二人はケラケラと笑う。気が狂ったかのように体を絡ませながら、社交ダンスを踊るように金持ちの遊技場へと入園する。
ケラケラケラケラケラケラケラケラケラケラケラケラケラケラ
―――私たち、ずっと一緒。




