ヒトノモノ その99 親友
九十九
大学における英語の授業で、アカネはサエという女の子と仲良くなった。アカネとサエは授業が終わると、一緒に食事をした。
サエはアカネに憧れていた。サエは背が低く、自分の容姿に自信がなかった。それとは対照的に、アカネは背が高くて、端正な顔立ちだった。それに、アカネは男の子と話すのが得意だった。アカネと話している男の子が楽しそうにしているのを見ると、サエは羨ましいと思ってしまった。サエは話そうと思うと、どんな話題を振るべきなのかが分からなくなった。
サエは自分もアカネのように自信がある女の子になりたいと思った。
「アカネちゃんは、彼氏いるの?」
「いないよ」
「でも、付き合ったことはあるでしょ?」
「それもないよ」
アカネはどう答えるべきか迷ったが、桐谷との一件を交際としてカウントしなかった。
「本当なの?」
「別に私、モテないよ」
アカネは謙遜したつもりだった。ある意味、サエは安心した。アカネのような女の子でも、恋人がいなかったからである。
「サエちゃんはどうなの?」
アカネは自分の恋愛の遍歴について尋ねられるのが怖かった。そのため、サエの方へ話題を移した。
「ずっと、ふられてばかりだよ。中学生のときも高校生のときも」
アカネは触れてはいけない話題を振ってしまったことを悟った。
「ごめんね。嫌なことを思い出させて」
「大丈夫、昔のことだから」
サエは自分以外の女の子が男の子と楽しそうにしているのを見るたびに、痛々しい失恋を思い出すのだった。それとは対照的に、アカネは恋愛というものが分からないのに加えて、失恋というものがどういうことなのかが分からなかった。
「わたし、好きな人がいるんだ。だから、アカネちゃんに相談したいと思って」
アカネはやっとサエが自分に恋愛について尋ねたのかを知った。初めて、アカネは恋に悩んでいる娘を見たような気がした。
「そうなんだ。応援するよ」
「わたし、あまり可愛くないから、アカネちゃんみたいに普通に男の子と話すことができないんだ。どうして、アカネちゃんは普通に男の子と話すことできるの?」
アカネは久々にメガネをかけていたころの自分を思い出した。メガネをかけていたときのアカネは自分の容姿に自信がなかった。
「ちょっとした工夫で誰でも可愛くなれるもんよ。これ見て」
アカネはスマホを取り出して、幼い頃の自分の写真を見せた。
「これ、本当にアカネちゃんなの?」
「昔、ブスだったの。ちょっとした工夫で可愛くなれるよ。空いている時間に教えてあげるよ」
「ありがとう、アカネちゃん」




