表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ヒトノモノ  作者: Kusakari
アカネ パート2
92/120

ヒトノモノ その92 文理

九十二

 アカネは文系か理系かを選ばなくてはならない時期にきた。アカネ本人はどちらでもよい気がした。けれども、どちらかを選ばなくてはいけなかった。


 「お母さんは文系なの?」

「文系だよ。アカネはどうするの?」

「私も文系にしようかな」

「適当に選ぶものじゃないよ。文理選択はどういう大学に行きたいかで決めた方がいいと思う」

アカネは大学に行くつもりだった。けれども、これといってどこに行きたいという明確な志望動機がなかった。

「お母さんは、どういう学部に行ったの?」

「文学部で社会学っていうのをやってた」

「社会学って、何?」

「説明するのが面倒なんだよね。社会について勉強してたの」

「話がふわっとしている」

「難しい本読んだり、フィールドワークとかしてたり」

「それって、面白いの?」

「面白いよ」

アカネは興味が持てなかった。


 「たいていの人文系って、本を読むから、ここにある本を見ると、何かヒントがあるかも」

アカネの母親は少しでも娘の進路のためになればいいと考えて、自分の本棚を見せた。そこには500冊以上の本が並べてあった。本は図書館の分類に従って、並んでいた。つまり、総記、哲学、心理学、宗教、社会科学、自然科学、文学といったジャンルがそろっていた。


 「お母さんって、ほんとすごいよね」

「読書が好きだから」

「社会学の本って、どれなの?」


 アカネの母親はウェーバー、デュルケム、ジンメルの本を取り出した。

「社会学っていったら、まずはウェーバーでしょ」

アカネの母親は楽しそうにしていた。

「誰?」

「ドイツの社会学者」

「ふーん」

アカネは母親の勧めをゆるやかに断った。


 「たいていの学問はここにそろっているから、パラパラと見たら」

そう言って、母親は本棚がある部屋から出た。


 アカネは本を読む習慣がなかった。けれども、本棚から興味を持てそうな本を取り出しては元に戻すを繰り返した。その中で、もっともアカネの気を引いたのは夏目漱石の『行人』だった。『行人』とは、主人公一郎が妻の愛を信用できず、苦しむ話だった。可哀想な人と思いながら、アカネは頁をめくった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ