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ヒトノモノ  作者: Kusakari
アカネ パート2
91/120

ヒトノモノ その91 追撃

九十一

 「みーたんと似ているって言いたかったの?それがそんな大事な話なの?」

「なんと言えばいいんだろう。昔から、アカネちゃんのことが」

「わたしのことがどうしたの?」

アカネはケンジが何を言いたいのかが分かっていた。けれども、何も分かっていない演技をした。

「あのー」

とケンジは口をもごもごさせた。


 「そんなに言いだしにくい話なの?」

「昔から、アカネちゃんのことが好きでした。つ、つ、付き合ってください」

アカネはこのセリフをずっと待っていた。

「私なんかでいいの?わたし、ケンジくんが言うほど可愛い娘じゃないよ」

「アカネちゃんは可愛いよ」

「私よりも可愛い娘いると思うよ」

「そんな人に会ったことないよ」

「ありがとう。でも、いつから可愛いって思ってくれたの?」

アカネは首を少しだけかしげてみた。

「中学生のときから」

「ほんとに?じゃあ、クラスでどれくらい可愛かった、私?」

アカネは前のめりでケンジに近づいた。

「一番、可愛かったよ」

「へえ、13番目だった気がするけどなあ」

「どういうこと?」


 アカネは突然立ち上がって、手を振った。すると、遠くの席から女の子が近づいてきた。格付けリストで一位のサワだった。

「なんでここにいるの?」

ケンジは驚いていた。

「私よりもサワちゃんの方が可愛いと思うよ。13位よりも一番の方がいいと思うけど」


 ケンジはやっと格付けリストのことを思い出した。

「あの格付けは昔のことで、今はアカネちゃんが一番だよ」

「嬉しいなあ。でも、こないだサワちゃんにふられたばっかでしょ」

サワは小さく頷いた。

「サイテー」

とサワがケンジに一喝した。サワはその場にいるのが嫌だったらしく、それだけ言い残すと店を出た。ケンジは何も言うことができなくなった。


 アカネはケンジの虚ろな瞳を見た。たまらない。早く、泣きなさいよ。けれども、ケンジは泣かなかった。アカネはトドメの一撃を加えることにした。


 「あと、私、付き合っている人いるんだ」

そこに、桐谷が現れた。アカネは見せつけるように桐谷の腕を自分の体に抱き寄せた。ケンジはなすすべがなかった。桐谷は顔が赤くなった。


 「じゃあね」

アカネは桐谷と手をつないで、店を出た。後ろを振り返り、ケンジの落胆した表情を見て、満足感に浸った。アカネは嫉妬している男のやるせない背中を嘲笑った。


 「ありがとう、桐谷くん。彼氏のフリしてくれて」

「いいよ。アカネさんのためなら」

アカネはつないだ手を離した。そのとき、桐谷は少しだけ肩を落とした。アカネは桐谷をふったら、どんな顔をするのかが見たくなってしまった。


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