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ヒトノモノ  作者: Kusakari
アカネ パート2
87/120

ヒトノモノ その87 籠絡

八十七

 「昨日はありがとう。今日のテスト、桐谷くんのおかげで、いい点数取れたかもしれない」

「それはよかった。今日も一緒に勉強しよう」

桐谷の方から誘ってきた。

「昨日、あんなに教えてもらったのに申し訳ないよ。今日は別々で勉強しよう」

別にアカネは桐谷を気遣ったわけではなかった。

「分かった」

桐谷はがっかりしていた。

「今日、別の高校の幼なじみに勉強を教えなくちゃいけないの。偶然、テスト期間が一緒だったから。桐谷くんから誘ってくれたのに、ごめんね」


 アカネにそんな幼なじみなどいなかった。アカネは彼を引くために、嘘をついた。


 アカネは真っすぐ家に帰った。桐谷ががっかりしている様子を思い出して、アカネは彼が自分に気があることを実感した。こうして、アカネは自分のエゴイズムを満たすことができた。


 アカネの見立てによれば、おそらく桐谷は中学校の頃から、がり勉で女の子に慣れていない。それゆえ、恋愛のこととなると、自分に自信がなさそうである。だからこそ、時間をかけて、彼の自尊感情を高める必要がある。そして、彼が自分に自信を持ったら、告白するようになるはずである。そこで、あっさりとふる。すると、彼の自尊感情はボロボロになるはずだろう。


 「今日のテスト、うまくいかなかったなあ」

アカネは一人で勉強したため、かなりテストの点数には自信があった。

「そうだったの」

「多分、幼なじみに教えたせいかも。あと、桐谷くんに教えてもらえなかったからかなあ」

「じゃあ、一緒に勉強しよう」

「いいの。桐谷くんの勉強時間が少なくなっちゃうよ」

「アカネさんの点数が伸びてほしいから」

「ありがとう」


 二人は昨日と同じカフェに行った。

「昨日の幼なじみって、どんな人?」

「気になるの?」

「そんなに気になるわけではないけど」

「小学校から中学校まで一緒の幼なじみ。久しぶりに会ったんだ。割とかっこよくなってたの」

アカネはわざと「かっこいい」という言葉を強調した。

「男の子なんだ」

桐谷は少しだけため息をついた。

「でも、アイツと勉強したせいで、今日のテストの点数下がったかも。アイツ、あんま頭良くないんだよね」

「アイツ」という言葉を使って、気の置けない仲であるように装った。

「そうなんだ」

「だから、昨日も桐谷くんと勉強すればよかったなあ。桐谷くんの方が頭いいし、優しいし、教え方、上手だし」

「初めてこんなに褒められた気がする」

「そうなの。桐谷くんは自分にもっと自信持っていいと思うよ」

「中学校のとき、友達もいなかったし。今、こんなふうにアカネさんみたいに素敵な人と一緒にいれて、とても楽しいんだ」

「私も楽しいよ」


 その微笑の裏で、アカネは彼が落ち込んで泣き出す様を想像していた。


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