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ヒトノモノ  作者: Kusakari
アカネ パート2
84/120

ヒトノモノ その84 演技

八十四

 クラスでは、アカネがコウキをふったという話題で持ち切りだった。アカネは数人の女子に囲まれた。アカネはここまで広まるとは思っていなかった。


 「何があったの?」

とクラスの女子に聞かれた。

「大したことはないよ。突然、好きって言われて、びっくりしたの。ちょっと、怖かった。つきまといみたいなこともされたし」


 アカネはつい「つきまとい」という言葉を使った。すると、周りにいた女子はアカネが言ったことが全て真実だと誤解し、同情した。それと同時に、女子たちはコウキに嫌悪感を持った。


 「アカネちゃんにストーカーしてたの?」

女子と男子が寄ってたかって、コウキを問い詰めた。「つきまとい」という言葉が独り歩きして、いつの間にか「ストーカー」に変わった。アカネは流石に言いすぎたかもしれないと思いつつも、責められているコウキが泣きそうなのがおかしくてたまらなかった。昨日の無様なコウキを思い出したのである。


 「アカネに謝った方がいいんじゃないの」

ケンジがコウキに指図していた。そのケンジの言葉にアカネは違和感を持った。


 もしメガネをかけた地味な昔の自分だったら、コウキが責められるといった展開になっただろうかと自問した。昔の自分だとしたら、コウキをふったことによって、自分が責められるのではないかという想定がアカネの心の中に浮かんだ。「40点のくせに、ふる権利ないよ」などと男子に陰口を叩かれそうだった。


 けれども、今はそんな男子すら自分の味方だった。あんなに自分を低く評価してきた男たちの浅薄さをアカネは思い知った。


 「ごめんなさい」

コウキは謝った。

「こちらこそ、ごめんね」

アカネは何も自分は悪いことなどしていないと確信しながらも、謝ったフリをした。


 「良かったな、コウキ。ほんとアカネが優しくて」

とケンジは誇らしげにアカネに言った。

「そんなことないよ」

アカネは無理に笑ってみせた。ケンジの手のひらを返すような言動にアカネは怒りを覚えた。それでも、必死にそれをこらえた。


 その後、この出来事は丸く収まった。アカネはこの出来事を通して、男を苛める快感を味わった。自分の手を汚さず、清廉で可愛げのある女の子というスタンスを演じて人を欺くことは何とも言えない喜びがあった。


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