ヒトノモノ その79 裸眼
七十九
本田に何もかも言って、アカネは清々しい気分になった。けれども、家族に話すのはためらわれた。それに、アカネは食事を食べようとはしなかった。両親は無理にアカネに食べさせようとはしなかった。
アカネは風呂上りに、体重計に乗った。また、体重が減っていた。アカネは無性に嬉しくなった。もっと、もっと、減らしたいという想いに駆られる。
けれども、一体何のためにここまで減らしたいのかとアカネは自問した。元を正せば、男のどうでもいい評価に自分の心が左右されただけだとアカネは気づいた。どうして、男に合わせなくてはいけないの。
すると、アカネは食欲が湧いてきた。アカネはカップラーメンを三つも食べた。アカネの両親はその様子を見て、心配になりながらも、見守り続けた。
「めっちゃ、最近のみーたんに似ている」
兄は楽しそうにスマホの画像とアカネを比べた。お風呂から上がったアカネはメガネをかけることなく、食べ続けたのである。
「コンタクトにした方がいいよ。家にみーたんがいるみたいだ。なんで今まで気づかなかったんだろう」
「うるさいなあ」
アカネは食べながら、兄に怒り出した。アカネは自分がみーたんに似ているとは思わなかった。けれども、メガネをかけているよりも、裸眼の方が少しだけ自分に自信が持てるような気がした。
アカネは時間がかかりながらも、なんとかコンタクトレンズを目に装着させることができた。今までの自分とは全然違う気がした。こんな小さい工夫で、人の見た目が変わることに驚いた。どうして、コンタクトにしなかったのだろうかと疑問に思うほどだった。
「可愛い」
両親はアカネを心の底から褒めた。自分の娘が自信に満ちた表情を浮かべていることを喜んだ。兄はずっとアカネの目に見とれていた。
「これで、髪を伸ばせば、完全にみーたんだ」
「別にみーたんになんかなりたくない」
「頼む、伸ばしてよ」
アカネは嫌悪感を抱きながらも、髪を伸ばすことにした。兄の意見を取り入れたというよりは、新しい自分になりたかった。
「雰囲気変わったね。可愛い」
「そうかな」
アカネのクラスの女子はアカネの代わり映えに驚いていた。こうして、クラスの女子に自分の容姿を褒められたアカネは男の目線を以前ほど気にしなくなった。
けれども、アカネは拒食と過食を繰り返した。アカネは食べることに抵抗があった。だからといって、食べない日々が続くと異常なほど食欲が湧いてきて、過食になってしまう。アカネは自意識と闘い続けた。




