ヒトノモノ その78 診断
七十八
アカネの両親は、嫌がるアカネを連れて、病院に行った。アカネは自分自身が何かしらの病気であるとは感じていなかった。
問診や家族の意見をもとに、医師はアカネを摂食障害だと診断した。アカネの両親が思った通りだった。けれども、アカネは自分が太らないためにやっている努力が病気だと誤解されているような気持ち悪さを抱いた。
「摂食障害というのは、心の病なんです。時間をかけてゆっくり治していく必要があります。そのため、アカネさんだけではなく、家族の協力が大切です」
医師はゆっくり丁寧に説明した。
「では、どうやって治していけば、良いのでしょうか?」
と父親は医師に尋ねた。
「まだ会ったばかりで、何とも言えないのですが、アカネさん本人が何かしらの問題を抱えていると思うのです。それを解決していくしかありません。一度、臨床心理士によるカウンセリングをおすすめします」
それを聞いて、アカネは格付けリストが悩みの種であるような気がした。このことを打ち明けられれば、楽になれそうだという期待が湧いてきた。けれども、恥ずかしさがアカネの心を支配した。
一週間後、アカネはカウンセリングを受けることにした。アカネは緊張しながら、待合室で自分の名前が呼ばれるのを待った。
「こんにちは、アカネさん」
白衣を着た男性がアカネの前に現れた。アカネは何も言えなかった。
「カウンセラーの本田と言います。今日はよろしくね」
本田の声は優しかった。
アカネはこの人だったら、相談できそうだと信頼感を抱いた。そして、アカネは小さく頷いた。
カウンセリングルームは、白いテーブルと二つの椅子だけだった。本田はアカネの真正面から少しずれたところに座った。
「言いたくないことは言わなくていいよ。もし何か言いたいことがあったら、僕に教えてほしいんだ」
「クラスで嫌なことがあって」
言葉を切らしながらも、アカネは必死に伝えようとした。言葉にしようとすればするほど、吐き気がした。それと同時に、涙が頬をつたった。それに本田は真剣に耳を傾けた。
アカネは格付けリストのことを本田に伝えきった。本田は深く頷き、アカネの苦しみに共感できないながらも、受容しようと努めた。
「どうして、男の人って、女の子のことを見た目で判断するんですか?」
涙ながらにアカネは怒りを本田にぶつける。本田はそれを受け止めることしかできなかった。それと同時に、そんな格付けリストなどという人の気持ちを踏みにじるものをつくった男の子たちに対する怒りが込み上げてきた。
アカネはすべてを言いきったあと、ただ泣きじゃくるだけだった。そんなアカネを本田は励まし続けた。




