ヒトノモノ その77 病気
七十七
アカネのクラスでは、男子による女子の格付けが表面的にはなくなった。そのため、ケンジの周りに男子が集まって、談笑することはなくなった。
しかし、アカネは男の心の中にある容姿に対する執着を嫌というほど思い知った。つまり、男子それぞれが心の中で格付けをしているのだった。
そのため、アカネは未だに太ることが異常なまでに恐ろしかった。しかし実際は、太ってなどいなかった。それでも、アカネは食事をしないように努めた。
「今日も夕飯いらないから」
アカネは母親にそう言うと、自分の部屋に戻ろうとした。
「もしかして、摂食障害ってやつじゃないの」
「なにそれ?」
「摂食障害っていって、無理に痩せようとして、食べなくなる心の病気があるの。こないだ読んだ本に書いてあったんだ。ねえ、学校で何かあったの?お母さん、アカネのことが心配なの」
「何もないよ。ただ、食欲がないだけ」
「ここ最近、ずっと食べてないじゃない」
「ほっといてよ」
アカネは本当のことを言いたかった。しかし、思春期特有の無駄なプライドが邪魔をした。
「お母さんの言う通りだと思うんだ。一度、病院に行って、検査しようよ。ちゃんとした治療をすれば治るんだよ」
父親もアカネのことを心配していた。
「病気なんかじゃない」
アカネは病人扱いされることに腹を立てた。ある意味、病人なのは人を見かけで判断する男の思考であるとアカネは感じていた。
しかし、アカネの頬は瘦せこけ、ちょっとした風が吹けば、吹き飛ばされそうなくらい体が薄かった。それに、体重は40キロを下回っていた。それでも、アカネは自分が太っているという歪んだ認識を持ち続けた。




