ヒトノモノ その66 吐露
六十六
ここで、今まで君に言いたくても言えなかったことを記したいと思います。率直に言って、僕は君という人間に嫉妬しています。今でも、そうです。出会った時から、ずっと嫉妬しています。僕は君みたいな人間になりたかったのです。
君はこんな分厚い原稿用紙を送ってくる前に、自分に相談して欲しかったと思うかもしれません。しかし、僕は君を友人として慕っていながらも、君を僕と同じ世界の住人だとみなしたことがないのです。君が光の世界の住人だとしたら、僕は闇の世界の住人なのです。
僕は誰かに選ばれたいという欲望を持っています。誰かに選ばれた時、自分はこの世界に生きる意味がようやく分かるような気がするのです。しかし、誰も自分を選んではくれなかったのです。それが、僕の人生だったのです。
そんな僕に君は友人として僕を選んだのだと言って、反論するかもしれません。しかし、君にはそういう反論をする権利がありません。というのも、君は僕以外にもありとあらゆる人間を友としていたからです。
君と僕が一緒に下校していた時、向かい側からやってくる人々はみんな君にだけ話しかけてきました。それだけ、君が人に好かれていた証拠です。おそらく、それは君が生来持っている素質なのでしょう。
さらに、君の周囲には必ずグループができます。僕もその輪に入ろうとしました。しかし、僕はその雰囲気に溶け込むことができませんでした。そのとき、言いようのない孤独を覚えたのです。
だからといって、君を責めているわけではありません。君が僕の友人になってくれたことを心から感謝しますし、尊敬します。君が僕に話しかけてくれなかったら、僕は本当にひとりぼっちでした。
しかし、君は僕だけに愛着を覚えてくれたわけではありません。僕は君にとって、数ある友人の中のほんの一人にすぎないのです。君は自分の素質を生かして、僕という人間を友として選んだのでしょう。しかし、僕は本当の意味で君に選ばれたという安心感を一度も味わったことがないのです。
そのため、何かがきっかけで、君は僕のもとからいなくなってしまうように見えたのです。だから、僕は興味がないのにもかかわらず、君の好きなドラマも映画も見ました。ありもしない噓の話をしてまで、君を笑わせようと努力しました。君と途切れることのない会話がしたかったからです。君に捨てられたくなかったからです。
しかし、いつでも見捨てられるという不安が自分につきまとっていました。僕はこの世界において、安心感を得たかったのです。




