ヒトノモノ その44 体重
四十四
アカネはお風呂上りに洗面台の鏡で自分の顔を見た。右頬にあるニキビが気になって、仕方なかった。アカネはいじってはいけないのにもかかわらず、そのニキビを潰してしまった。少しだけ、膿が出てきた。一つ潰したところで、もう一個潰したくなってしまった。けれども、アカネは寸でのところで辞めた。
アカネが立っている左隣には、体重計があった。アカネはそれに乗ろうか迷った。今日の格付けリストを思い出したからである。他人から自分は太っていると思われている。そういった意識がアカネの心を傷つけた。
アカネは乗ることにした。針が48キロを指した。数値だけを見る限り、太っているといえるものではなかった。けれども、アカネは鏡で自分の姿を見るにつけ、自分は太っているような気がした。
アカネはみーたんのスタイルを思い出した。彼女は瘦せていて、すらっとしていた。アイドルと自分を比べるのはおかしいことだと思いながらも、アカネは比べずにはいられなかった。私って、可愛くないよね。アカネは改めて、そう思った。
瘦せたい。アカネの意識を支配しているのは、この四文字だった。アカネは今からでも家を出て、ランニングでもしたいような気分だった。早く、瘦せたい。早く、瘦せたい。そういった強迫観念にアカネはとらわれた。
「朝ごはん、いらないから」
「どうして?」
「食欲がないから」
「調子が悪いの?」
「大丈夫」
アカネは朝ごはんを食べないことにした。
アカネは教室に入るのが嫌だった。男子が自分を採点するつもりで見ているのかと思うと、吐き気がした。けれども、アカネは勇気を振り絞って、教室に入った。表面的には、いつもと同じような教室の風景だった。
アカネは自分の席について、うつむいていた。昨日と同じように、ケンジの周りには男子が群がっていた。アカネには、ケンジたちが誰かを採点しているかのように見えた。
自分はブスだの、デブだのと罵られているのだろうか。アカネはそういった被害妄想を抱いた。別に「可愛い」と褒められてみたいわけではない。ただ、他人と自分を比べないで欲しいだけ。たんに、自分に自信を持ちたいだけ。
アカネの腹が鳴った。朝飯を食べてこなかったせいである。
「誰の腹が鳴ったの?」
ケンジたちが囃し立てた。
アカネは恥ずかしくて、恥ずかしくて、仕方がなかった。




