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ヒトノモノ  作者: Kusakari
アカネ パート2
101/120

ヒトノモノ その101 模倣

百一

 さらに三週間後のことだった。

「告白されたんだよ」

サエは目を輝かせていた。

「ほんと?」

「初めてなんだこういうの。ずっとふられてばっかりだったから、すごくすごく嬉しいの。それも、彼の家で」

アカネはサエがなんだか大人びて見えた。

「いいなあ」

アカネは羨ましいとは思わなかったが、サエを祝福したい気分になった。けれども、アカネはサエが次第に自分に似てくるのが怖かった。


 「サエちゃんって、ヒール履くんだね」

サエはアカネと比べて、背が低かった。

「彼が選んでくれたの。わたしに似合うって言ってくれたし、それに買ってくれたんだよ。優しいんだよ」

「よかったね。そんな人に巡り会えて」

「アカネちゃんもいい人、見つけたら」

「私がそういうの興味ないの」

サエはアカネと違って、恋人のいる自分を誇ろうとした。サエはアカネに勝った気になった。


 けれども、サエには不安の種があった。

「サエちゃんの友達って、美人だよね」

サエの恋人はドイツ語の授業で知り合った鹿島という男だった。鹿島はサエに会うたびに、アカネのことを褒めそやした。それも、彼はサエに告白した後でも同様にアカネを褒めるのだった。


 サエは鹿島がどっかへ行ってしまうことを恐れていた。そのため、サエはアカネに似るようにメイクをするようになった。

「アカネさんみたいに可愛いね」

初めのうち、サエはこの一言を褒め言葉として受け取っていた。けれども、次第にサエは違和感を覚えるようになった。


 鹿島とショッピングをしている時だった。

「サエちゃん、ハイヒール、履いてみてよ。サエちゃんに似合うと思うよ」

サエは歩きづらいハイヒールを履く気にはなれなかった。けれども、鹿島に気に入られたいばかりにサエはハイヒールを何足か履いた。

「このハイヒール、オレが買うよ」

サエは自分に似合っているとは思わなかった。

「ありがとう」

サエは感謝の言葉を言うしかなかった。


 「次は服を買おう」

「うん」

サエは鹿島が言う通りに服を着た。まるで、着せ替え人形にでもなったような気分だった。

「可愛いよ。サエちゃん」

サエは可愛いという言葉に弱かった。というのも、今まで可愛いと言われたことがなかったからである。「可愛い」と言われると、自分が女の子として認められているような気がした。


 けれども、彼が買った服はアカネが着そうな服だった。なんだか、自分はアカネの代わりをさせられているような気がした。それでも、恋人のいない惨めさを味わうよりは幾分かマシだった。



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