⑧ 次の惑星へ
ひとっ風呂浴びた黒猫バステト神は、早速また、時空旅行機に乗り込み、次の座標をランダムに入力した。"例え、世界の全てを救えなくとも、せめて、この掌で受け止められるモノだけでも、救おう"……ソレが、彼女のモットーなのだ。
時空転位の出口は、随分、蒸し暑い惑星だった。シダ植物の類の生い茂る森が、辺り一面に広がり、小さな羽虫が飛びかっている。それは、バステトが、余り好まない環境だった。
もちろん、雪が降るほど寒過ぎるのも嫌いだが……さて、ここから救難信号を出したのは、一体どんな住人なのか?彼女は何だか、イヤな予感がした。
その時、「ブモォーッ」という大きな鳴き声が、突然辺りに響き渡り、ほぼ同時に、彼女のすぐ脇を、まるで大木のように太い4本の脚が、ズシン、ズシンという地響きと共に、次々に通り過ぎたのである。
「今のは、明らかに竜脚類ね?」
彼女は一人で呟いた。
その頭部は、ジャングルの遥か上の方で、見えなかったが、まず、間違い無いだろう。
悪い予感は、的中したようだった。
どうやらココは、爬虫類族が天下を取った世界線らしい。
バステトが更に少し歩くと、段々"ときの声"のようなモノが大きくなり、やがて、原っぱのような開けた場所に出た。そこでは、まだまだ文明レベルの低そうな、2つの爬虫類の部族が、槍とハンマーで闘いを繰り広げていたのである。
つまりは、この当事者のどちらか、若しくは両者から出された、救援要請のテレパシーだったと言う訳だ。文明レベルが低いせいで、野性に近いから、そういう精神感応力は、逆にハイレベルなモノを持っているのである。ソレは最早、超能力と呼べる域に達していた。
通常、魂、或いは霊体、若しくは精神エネルギー体と呼ばれる者が持っている、あらゆる超自然的なチカラは、三次元の世界に来る前の、四次元や五次元の世界に居る時の能力である。それは本来、物質文明にドップリと浸かる中で、消えて行ってしまうモノなのである。
しかし、稀に、物理的肉体を維持したまま、超自然的なチカラを、発揮する者が存在する。世間ではそのような者たちを、超能力者と呼んだり、神や悪魔の使いとして、畏れたりして来たのだ。
――などというチカラの話を、かつて由理子に教えてやった事を、ふと思い出すバステトであった。
ともあれ、こんな部族同士の小競り合いなど、どちらの味方についても、不毛なモノなのだ。
「さて、この状況を、どう解決するべきか……やっぱり、アレしか無いわね。」そう呟いた彼女は、思いついたアイデアを、早速行動に移したのである。




