⑤ 後始末
「殺すなら、ひと思いにヤレ!」
「そうは行かないわ。アナタみたいな悪い子には、お仕置きが必要だものねえ?」
トカゲ顔の侵略隊長の耳元で、黒猫神が囁く。
「……そうねえ。まずは腕をもいで、次に脚をもいで、最後に頭を千切ってやろうかしら?アナタが"もう許して下さい"って泣いて頼むまで、殺さずに、どこまでも痛めつけてあげるわよ?」
ニヤニヤ笑いながら、そんな事を言うバステト。
「ウワサ通りの、悪趣味なヤツめ。まるで猫が、捕まえたネズミを簡単に殺さず、いたぶるように、敵に苦痛を与え続けると言う……。」
「あら、アナタには言われたくないわね……でも、安心して。そういうのは、もう卒業したのよ。」
そう言うと彼女は、そのアラハバキの背中をパン!と叩いた。
「キサマ、今、何を!?」
「うふふ……アナタたちの本部なら、良く知っているわ。今から直接、乗り込んでもイイんだけど、無闇に大量虐殺はしないって、由理子と約束したから、やめておいてあげる。」
「……だから、何を?」
「今、アナタの背中に、簡易転送装置を貼り付けたの。座標はもちろん、アナタの本部よ。作戦の失敗を上司に報告して、せいぜい同胞からのリンチを、味わうがイイわ!」
「うわっ、ソレだけは、やめてく……。」
アラハバキの言葉は、途中までしか聞き取れ無かった。簡易転送装置のピピピ……というアラーム音が鳴るとともに、その場から消えてしまったからだ。
「取り敢えず、一丁上がりね。」
彼女がふと、周りを見渡すと、いつの間にか帰って来たレッサーパンダたちが、手に手に竹槍と松明を持って、倒れたトカゲ男たちに、トドメを刺していた。
「……まあ、自業自得よね?」
その場をあとにして、立ち去ろうとする黒猫神に、村長らしき年寄りの小熊猫が近寄って来た。
「もしもし、お待ちくだされ。」
「なあに?」
「お世話になったので、是非この後一席設けて、お礼の宴を催したいのですが……?」
「ああ、お気持ちだけ受け取っておくわ。気にしないでイイのよ、アタシが趣味でヤッている事だから。」
「そうなんですね……でも……。」
「それより、ハイ、これ!」
そう言いながら彼女は、村長に黒い腕輪型デバイスを渡した。
「また侵略者が来て困ったら、コレで連絡して。アタシ、ヒマなのよ。」
笑顔でそう言いながら、彼女はその場から、まるで煙のように消えてしまったのである。
「黒猫神バステトか……頼もしく、そして恐ろしいお方だ。今後、決してあの方を敵に回さないよう、皆にも、言い伝えて行かなければ……。」
後には、そんな事を呟くレッサーパンダが一頭、残されるばかりであった。




