㉕ シェイクスピアに挑む
「……ねえ、アナタたち。」
その映像通信をオンラインにしたまま、バステトは、件のタコとイカのカップルに話し掛ける。
「どうせこの通信は、双方の陣営に傍受されているし、ここで詳しい説明は出来ないけど、悪いようにはしないから、今からアタシの指示に従ってくれる?」
「引き受けて頂けるんですね?もちろん従います!」
その頭足類たちは、口を揃えてそう言った。
「じゃあ、今からアナタたちのその小さな船を、アタシの船の上に……つまりアタシの頭の方向に移動させて。」(実際には、宇宙に上下などないから、指示がややこしいな。)言いながら彼女はそう思った。
彼らは、素直に指示に従ってくれた。
バステトは、まるで親亀と子亀のように重なった2機の宇宙船の上に、自分の立体映像を出し、先程のチャンネルで話し始める。取り敢えず使用する言語は、ヘブライ語だ。
「あ―、ちょっとイイかしら?アタシは、黒猫神のバステトよ。少し前に志願して、5次元の世界から、この3次元の世界に降りて来て、神をやらせてもらっているの。」
「その神とやらが、何の用だ?」
早速、タコ陣営の立体映像が出された。
うん、イイ反応だ。
「我々の子どもたちを盾にとって、一体どうするつもりだ?」
イカ陣営からも、そんな声が上がり、空中に立体映像が出された。
「この子たちの願いは、ただ一つ。双方とも戦闘態勢を収めて、仲良くして欲しいって事よ。」
「コレは、大人の事情によるモノだ。子どもや他種族の出る幕は無い。」
タコの親玉がそう言った。
「子どもを開放して、とっとと神の国にでも、帰りやがれ!」
イカの親玉もそんな事を言う。
「はあ〜。もう決まりね。アナタたちには、全滅してもらうわ!」
バステトは、さほど怒るでもなく、ヤレヤレという感じでそう言った。
「……!?」
「ヤレるものなら、やってみろ!」
「……そう言うと、思ったわ。じゃあ、遠慮なく!」
言うが早いか、彼女は行動に移った。
いつの間にか、立体映像だったモノは、ホンモノのバステトに入れ代わっており、彼女は電磁防壁を張ったまま、素早く宇宙空間を飛び回り始めた。
実は今、のんびり話をしている間に、その一帯の全戦艦のスキャニングを済まし、武器と、動力源と、双方の総大将の乗る旗艦を、すっかり把握していたのである。
やがて、全ての戦艦が抵抗する間も無く、彼女によって戦闘に必要な機能のみ、ピンポイントで破壊され、無力化されてしまったのだ。
その上バステトは、双方のボスである、タコの王とイカの女王まで、海水ごと球体にして、引きずり出してしまった。




