㉔ 惑星間戦争
その日のSOSを受けて、バステトが時空旅行機で到着した先は、何故か宇宙空間だった。
「ああ、今日も何だか、イヤな予感がするわね?」
彼女は思わず、呟いた。
自分の船を挟むように、目の前に二つの惑星が浮かんでいる。赤い惑星と青い惑星だ。
(まるで、マルスとガイアみたいね?)
彼女は、由理子の居る太陽系を思い出した。
だがもちろん、同じ時間軸上では無かろう。その証拠に、今、それぞれのサイドに対抗するように、かなりの数の、見るからに文明レベルの高そうな宇宙戦艦群が、大挙して押し寄せている。
それに、どうやらどちらの船たちも、強力な武装を備えているようだ……コレは、最悪なケースだ。惑星間戦争だ。どっちからのSOS発信にしても、肩入れ出来そうにない。バステトは、そう思った。
「正義の味方さんですか?」
突然、彼女の操縦席に通信が入った。何とソレは、ヘブライ語だった。
「誰かしら、アナタがアタシを呼んだの?」
バステトも、そのチャンネルに、ヘブライ語で返信する。
「そうです。私たちです。今、目の前の船に乗っています。」
言われて彼女が、スクリーンを外部モニターに切り替えると、確かに小さな宇宙船が一機、近づいて来ていた。
「コチラの映像通信を、送りますね?」
そのセリフの直後、バステトの船のスクリーンが電波ジャックされ、相手側のコクピットが映し出された。どうやら、コチラの科学力を、軽く凌駕している文明のようだ。
しかし、映し出された映像を見た彼女は、愕然とした。そこに居たのは、なんと2匹のイカとタコだったのだ!
多分、船内には、海水が満たされている事だろう。(ウッカリあっちに転送されたりしたら、大惨事になるな。)彼女はそう思った。
バステトの驚きを他所にして、その頭足類たちは通信を続けた。
「コチラのヘブライ語を、ご理解頂けて良かったです。学習したかいが有りました。」
「ソレはつまり……アタシとコンタクトを取るために、わざわざ覚えたと?」
「ハイ。黒猫神様のお噂は、かねがね聞いておりますので……。」
「それで……どんなトラブルなのかな?」
バステトは、言わずもがなの話題を振った。
「実は……この戦争を止めて頂きたいのです。」
(ああ、やっぱり……。)
彼女の悪い予感は的中した。
「青い惑星は私の故郷で……。」とイカが言い、「……赤い惑星は僕の故郷なのです。」とタコが言った。
つまり、2人は、頭足類のロミオとジュリエットと言う訳だ。厄介な事態だ。いよいよどちらの味方も出来なくなって来た。バステトは思わず頭を抱えた。




