㉑ 鳥の惑星
バステトがここを訪れるのは、久しぶりだった。
と、言うのも、ここの連中は、基本的に品行方正で、トラブルが少ないからだ。
ここは、霊長類化した鳥類が暮らす、鳥の惑星である。
一口に鳥類と言っても、ピンからキリまである。
ワシやタカなどの猛禽類から、スズメやセキレイなどの小鳥まで。
空を飛ぶチカラを失った、ダチョウやエミュー、ペンギンなどもそうだ。
惑星ガイア……つまり地球で活躍したアヌンナキたちも、鳥類の進化の一例だ。
その中の一人、カグヤ・イシュタルとは、バステト自身、旧知の仲だった。
かつて彼女と一緒に闘った日々も、今となっては良い思い出だ。
……話が逸れてしまった。
確かこの惑星では、オウム族とカラス族が発達し、進化に至ったはずだ。しかし、野良猫たちのように、縄張り争いのSOSかと思いきや、そうでは無かった。
SOSの理由は、何と "ヴェロキラプトル"の襲来だった……つまり、"先祖返り"である。
彼女は最初、、小熊猫の惑星の時のように、アラハバキの陰謀かと勘違いした。しかし、オウム族の長をよく聞いてみると、ソレは、或る一定数、自然発生的に起きる、突然変異なのだそうな。
現場の皆では最早、手に負えないので、ソレを追い払うか、退治するか、どちらでも良いという希望だった。"金輪際、無駄な殺生はしない"と決めていたバステトは、仕方なく、ソレを眠らせて連れて帰る事にした。
彼女は背中の剣を抜き、正眼に構える。
白亜紀から戻った、全長2mの小型恐竜は、彼女を正面から見据えている。
ヤツは体表に、羽毛が生えているが、空を飛ぶ事は出来ない。ただ、身軽な分、並外れた跳躍力が有ったはずだ。向こうから先制攻撃させた方が良かろう。バステトは、そう判断した。
黒猫神と小型恐竜は、お互いジリジリと、間合いを詰めて行く。次の瞬間、ヴェロキラプトルは、高い跳躍を見せて、前脚の鋭い鉤爪を振りかざし、飛び掛かって来た。
バステトはソレを苦も無く躱すと、ヒラリと小型恐竜の背に跨り、オリハルコンの剣の柄で、ソイツの後頭部の付け根辺りをコン!と峰打ちした。
途端に、その場に昏倒するヴェロキラプトル。彼女はすかさず、その背中に、例の小型転送機を貼り付けると、素早く行く先をセットし、アッと言う間に亜空間移動させてしまったのである。
「コレでよし、と。」
呟く彼女の元に、オウム族もカラス族も集まって来て、ヤンヤ、ヤンヤの大声援である。
「いやあ、聞きしに勝る、鮮やかなお手並みですな。感服いたしました。」
カラス族の長も、そう言って喜んでいる。
「……ところで、アレは何処へ消えたのですか?」
「アナタたちのご先祖様が暮らす、過去に送り届けたのよ。ソコには、お仲間が沢山居るから、アレも幸せなはずよ。」
バステトはそう答えた。




