⑱ またしても……
穴のデータの分析結果は、明らかに無理な時空接続を示していた。つまりそれは、"向こう側"から、強引にゲートを開けて、こちら側とポータルを繋げた事を意味する。
(こんな無茶なやり方……またアラハバキの連中だわ。)彼女は、そんな事をするヤカラを、他に知らなかった。
そもそも、他の時間軸に旅する手段は、猫族と犬族だけの、秘密なのである……まあ、サン・ジェルマン伯爵という、例外は有るのだが。
恐らく彼らは、ランダムかつ雑に開いた沢山のポータルから、次々に、こちらで平和に暮らしていたゾウたちを、誘拐して行ったのだろう。
どうせ重機代わりに、どこぞの植民地の労働者にでも、するつもりなのだ。コレは放置出来ない案件ね。彼女は直ぐに決断した。
「ちょっと行って来るわね。」
バステトは、ボブにそう言うと、すぐに時空旅行機に乗り込み、そのまま穴の中に突入した。
時空転位の出口は、宇宙空港のような場所だった。
そこは、やはり沢山のゾウたちと、それを貨物機に乗せて、何処かへ連れて行こうとしている爬虫類族……つまりアラハバキの連中たちで、ごった返していた。
「ちょっとアンタたち、そのゾウたちを誘拐して、一体何処へ連れて行くつもりなのかしら?」
怒りが沸点に達した、バステトが大声で尋ねる。
「うわっ、やばい!バステトだぞ!」誰かが叫んだ。
「……ああ、やっぱり答えなくてイイわ。アンタたちには、情けをかける余地無しだから、今すぐここで全滅しなさい!」
鬼の形相で彼女はそう言うと、背中からオリハルコンの剣を抜き、電光石火の早業で、そこら中に居るアラハバキたちの首を、次から次に刎ね飛ばした。
だがそれぐらいでは、彼らの息の根は止められない。次に彼女は、彼らの生首を一か所に集めると、剣先から業火を出し、その全てを炭になるまで一気に燃やしたのだ。
バステトは、わずか3分足らずの時間でそれらをやり遂げて、ある程度留飲を下げると、気持ちを切り替えて、縛られていたゾウたちの鎖を切って歩いた。
「みんな大丈夫?ケガは無い?」
彼女は、ゾウたちに優しく声を掛けて回る。
先程の、鬼神のような働きぶりとは、真逆の姿だった。ゾウたちは皆、目を白黒させていた。無理も無い事だ。それはまるで、吉本新喜劇の、"未知やすえ"のような豹変ぶりであるのだから。
ともあれ、彼女が即席で開いた簡易ポータルを通って、ゾウたちは無事に、自分の世界に帰って行った。まずは、一件落着である。
「……あ、一人くらい生かしておいて、誰の命令で、何の目的だったのか、訊けば良かったかも……ま、いっか。」そんな事を一人で呟きながら、バステトは、自分の時空旅行機に戻り、帰路に就いたのだった。




