⑰ ◯◯の惑星
ボブは困っていた。
本当に困った時は、空に向かってSOSを発信し、"正義の味方"に呼びかけるとイイと、昔から言い伝えに聞く。大きな声で叫んでも、強力な電波にメッセージを乗せても、イイんだそうな。
いやいや、そんな無茶苦茶な話が有るか?子どもの頃は、その伝説を信じていたけど、15歳を過ぎた今では、無邪気に信じられないような話だった。
それでも、自分一人のチカラでは、友だちのケインを救えない。それに今、周りに頼れる者は誰も居ない。だから、藁をもすがる気持ちで、文字通り、運を天に任せるように、その長い鼻を振り上げて、空に向かって叫ぶしかなかった。「誰か助けて!」と。
そして、彼が叫んだ次の瞬間、信じられない事が起こったのだ。空の一角に穴が開き、そこから、銀色の、円盤状の乗り物が、音も無く現れたのだ。
間違い無い。アレが伝説に聞く、正義の味方の乗り物だ……でも、何だか思ったより、小さいような?
円盤は見る見る近づいて来て、ボブのすぐ近くに着陸した。やっぱり小さいな。ボブはそう思った。
その円盤から、これまた小さな黒い猫ちゃんが現れた。彼女は、可愛らしい金色の鎧を身に着けて、オリハルコンの剣を背負っている。伝説の通りの格好だ。ただ、余りにも小さい。
「こんにちは、お困りのようね?」
その黒猫ちゃんが言った。
「友だちのケインが、突然、地面に開いた大穴に落ちて、大変なんだ。でも、ボクでは引き上げてやれない……何とか出来るのかい?」
「お安い御用よ。」その黒猫は事も無げに言った。
そして、ボブの見ている目の前で、ひらりと深い穴の底に飛び降り、しばらくすると、真っすぐ上に伸ばした両腕の掌に、ケインのお尻を乗せて、軽々と、穴の上に跳び上がって、戻って来た。
「はいどうぞ。この子がケインかしら?足を怪我して、気を失っているみたいね?私、ヒーラーのチカラは無いから、後で治療してあげて。」
「ありがとう!何というか……キミは小さな身体なのに、凄いチカラを持っているんだね。あの、お名前は?」
「バステトよ、覚えておいて。可愛い"ゾウ"さん。」
「うん、忘れないよ。」
「……ところで、他の仲間たちは、みんな何処に行ったの?見たところ、この広い野原に、誰も居ないようだけど。」
「それが、ここ最近、色々な場所に変な穴が開いて、みんなそこに、次々に吸い込まれて行ったんだ……ケインはギリギリ吸い込まれずに済んだんだよ。」
「変な穴、ですって?」
それを聞いたバステトは、左腕のデバイスを使って穴の周辺データを調べる。
「コレは、気に入らないわねえ……。」
集めたデータを見て、思わずバステトは呟いた。




