⑬ 次の寄り道
こうして、野良ネコたちの、縄張り争いの問題が片付いたので、バステトは帰る事にした。
「どうする?私、赤いビートルでココに来てるんだけど、一緒にまた、亜空間レストランに寄って行く?」由理子に誘われたが、バステトはソレを辞した。
「今日は久しぶりに、別の場所に顔を出す事に、決めているから……。」
「あ、分かった。アヌビス君のところだな?」
「……こら、勝手に、他人の頭の中を覗くな!」
「そんな事しなくても、分かるわよ!」
由理子はウフフ…と笑った。
「アナタたち、犬と猫なのに、仲良しよね?」
「……まあ、腐れ縁てヤッだな。じゃっ!」
バステトはそう言うと、例によって一瞬にして、その場から消え失せた。
時空旅行機に戻った彼女は、早速、予定していた座標を操作パネルに入力する。
「……コレでよし、と。」
呟きながら、彼女は時空転位のボタンを押した。
到着したのは、犬の惑星だった。
犬王の城内の中庭に、時空旅行機を着陸させて、彼女が出て来ると、この城の主が待ち構えていた。
「やあ、バステト嬢。元気にしてたかい?」
黒毛・マロ眉の柴犬タイプ、犬王アヌビスは、今日も爽やかな笑顔だ。なるほど。我が夫が言っていた、癒やされる感覚とは、こういう事か。黒猫神は、一人で腑に落ちたのだった。
中庭のテラス席で、レモンティーを飲みながら、二人で世間話を始めた。
「アヌビス君も、元気そうね?」
「おうよ、まだまだ現役の戦士だぜ?」
「また調子に乗って、ケガしたりしないでよ?」
「ワハハ……ちげぇねぇや。」
「何?その口調。誰の影響かしら?」
「コレは……由理子から教えてもらった、ニンゲンの喋り方なんだよ。確か"江戸っ子"とかいう……。」
「なあに?アナタまで由理子に、ドップリ浸かっているのね?奥様は平気なのかしら?」
「ウチはほら……一夫多妻制だから、いいんだよ。」
「あら、やだ。野蛮ねえ。」
「武闘派のキミだけには、言われたくないセリフだな。」
「じゃあ、ハレンチにしてあげる。」
「ハレンチ上等!」
「今度は、なあに?」
「今のは、"ヤンキー言葉"らしいよ。」
「彼女に、色々と教えてもらったのね……えっ、まさかピロートークじゃないでしょうね?」
「流石に"異種同衾"まではしてないよ……まあ、由理子なら、してもイイけど。」
「あの子、ハダカ猿族から生まれたニンゲンにしては、不思議な魅力が有るわよね。ソレは認めるわ。ウチのミケーネも、すっかり彼女に夢中だもの。」




