⑭ 懸案事項
「それはそうと……。」
バステトが話を変える。
「……ああ、今日の本題だね?」
アヌビスも真面目な顔になる。
「その由理子の居る、ニンゲン世界の話なんだけど……。」
「……うん。」
「私たちが、こっそりアシストした事もあって、何とか、あの1999年の、ベルゼブブの襲来を、退ける事が出来たじゃない……?」
「ああ、そうだったね。」
「……時空データによると、まだ2012年辺りにも、ナニか異変が起こりそうのよ。」
「ヤレヤレ、"他の時空の出来事には干渉しない"という、キミとボクの挟持は、何処へやら……。」
「何よ。"由理子は特別"なんでしょ?」
「うん、そうだったね。でも現在のキミの活動ぶりは、今や、あらゆる時空の"正義の味方"だ。」
「まあ、"私の正義"だけどね?それぞれの時空を、超越した"私刑"なんて、あまり褒められたモノでは無いわ。」
そう言いながらバステトは、自嘲気味に少し笑った。
「……だから時々、あの亜空間レストランに、顔を出すようにはしているわ。貴方もそうなんでしょ?」
「うん、ミケーネ君もね?ボクらは、ちょっとした異変も、見逃さないつもりだよ。」
「まあ、あそこには、サン・ジェルマンが居るから、よっぽど心配する事は無いとは思うけど……。」
「また、爬虫類族の女王が、裏切らないとも限らないしね?」
「……そういう事よね。」
彼女がそう言った後、しばらく二人は沈黙した。
「……レモンティー美味しかったわ。ご馳走様。じゃあアタシ、そろそろ行くわね?」
「また、"正義の味方ごっこ"かい?」
「"ごっこ"じゃないわ。真剣よ。」
「コレは失礼しました。」
犬王はまた、屈託の無い笑顔を見せた。
「じゃあ気をつけて。」
「アナタもね?」
バステトは、アヌビスに手を振って中庭に戻り、時空旅行機に乗り込むと、機体を垂直上昇させて行った。
「……我輩は何時でも、貴殿の味方だからな。」
雲間に消え行く、機上の黒猫に向かって、アヌビスは呟いたのだった。
「さて、次の救難信号は、何処からかしら……。」
そしてバステトは、センターコンソールパネルの表示を確認する……。
ソコに示された座標をセットして、彼女は時空転位のボタンを押した。
時空の出口に有ったのは、殆ど真っ青な惑星だった。つまり陸地より、海の面積が圧倒的に多い場所という事である。バステトは、どちらかというと、海水が苦手だった。
「誰かしら?こんな場所から、私を呼び出すなんて……。」




