⑩ バステトとミケーネ
「いい?必ず伝えるのを忘れないでね!さもなければ、私が再びこの場に戻り、アナタたち全員を滅ぼすわよ?そうなったらもう一度、ただの小型爬虫類から、この惑星の文明を、やり直す事になるけど、イイかしら?」バステトが重ねて言った。
「ソレだけでは……どうかご勘弁を!」
ナンバー2が懇願した。やはり、この種の部族の参謀役は、腕力で押すタイプのナンバー1の長と違って、頭脳派で話が解かるから助かる。
「分かればイイのよ。」
最後にそう言うと、彼女はその場から、煙のように消え去った。
「まあ、ソコソコいい運動にもなったし、今日のところは、コレくらいでイイかしらね。」
彼女はその足で時空旅行機に戻ると、帰還スイッチを押した。
「やあ、お帰り。お疲れ様。シャワーにする?夕食にする?それとも……ボク?」
城の中庭に戻ると、猫王子のミケーネが待ち構えていて、彼女の顔を見るなり、そんなセリフを言った。
「……何、ソレ?アナタ新妻なの?……そうねえ、じゃあ、一緒にお風呂に入りましょうか?」
バステト嬢も、まんざらでも無い様子だ。
「ハイ、喜んで!」
猫王子は、まるで居酒屋の店長みたいな返事をした。
それから約1時間後。入浴を終えた二人はダイニングの席につき、召使の準備した夕食を取る事になった。バステトは、何だか元気になっており、ミケーネは、さっきより疲れて見えるのは気のせいか?
「ねえ、アナタ?」おもむろに黒猫嬢が白猫王子に話し掛ける。
「何だい?マイハニー。」
「ところでアナタは、ついさっきまで、何処に居たのかしら?」
「……ソレは、えーっと、そのう……。」
「大方、亜空間レストランの、バーカウンターの陰にでも、潜んで居たのでしょう?」
「えっ、何故ソレを!?」
「やっぱりね。私を誰だと思っているのかしら?」
「古代エジプトの、神々の一角を担う柱の一人、バステト神様です。」
「解っていながら、何故そんなにコソコソするの?」
「だってえ、キミ、すぐ怒るんだもの。」
「怒らないわよ。浮気じゃないんでしょ?」
「浮気じゃあ……ないです、ハイ。」
「何よ?ハッキリしない言い方ね!」
「由理子には癒しを求めているだけだから……浮気じゃありません!」
「私じゃ、癒されないって言うのね?」
「キミはほら、いわゆる武闘派で、白黒ハッキリさせる性格で……まあ、そこがリスペクト出来るし、好きなポイントだから結婚したんだよ。その上美人だしね。」
「でも、私には癒されないと?」
「個別の猫には、それぞれ、向き不向きってモノが有るでしょ?」
「まあ、由理子は、ニンゲンにしては出来がイイから、私も好きだけれどね。とにかく、やましい気持ちが無いのなら、コソコソするのをヤメなさい。」
「うん。わかったよお。」ミケーネは、しょんぼりした顔でそう言ったのだった。




