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そして勇者は世界を知る/やがて魔王は対峙する  作者: るい
現代日本に勇者は必要ですか?/羊と兎と濡れ烏
21/24

21話目: /魔 やはり、二之宮京都はどこか壊れているのだ

本当にお風呂回です、釣りじゃないクマー

 人間自分が信じられないことは、たとえ目の当たりにしたとしても信じられないものである。

 実際に見たとしてもそうなのだ、聞いただけの話なんて信じられるわけがない。

 もちろんミリもその例にもれず、京都の言葉は一緒に入浴することを断る為の言い訳だと思っていた。


 「嫌でしたら、ごまかさなくてもいいのに・・・」


 不躾なことを言っている、という自覚がミリにはあった。

 出会って間もない人間と裸の付き合いをするというのは、確かに抵抗のあるものなのかもしれない。

 もちろんそれは理解できるものであるし、ミリ自身がそうであることは否定しない。

 それでもこの提案をしたのは、自分の理解の及ばないほどに発展した技術への畏怖、いわば未知への恐怖からなのだ。

 自分の恐怖が抵抗に勝っている、それがミリの提案の大半ではあった。

 それでもミリがその提案をしたのは、ほかでもない京都が相手だったからであり、ミリが早くも京都を信頼しつつあることの証明だった。


 だからだろうか?

 誠実な拒絶より、優しいごまかしにショックを受ける自分がいた。

 つい、本音を漏らしてしまう。


 そんな呟きのような本音を、京都は捉えていた。

 その表情はどこか既視感を覚えるもので、その思惑を直感的に知っている。

 だからこそ困惑する、ほかの言い方なんて京都には思いつかない、自分の言葉は100%真実なのだ。

 ごまかしで相手が傷つくことがわかっている、しかし真実が認められないこの状況。

 ミリが信じない理由を京都自身理解しているし、認めがたいことではあるものの、今までの経験から認めざるを得ないことも理解している。

 ならばどうするべきなのか、答えはひとつしかない。


 「じゃあ一緒に入ろうか、お風呂。ごまかしじゃないって証明してあげる」


 真実に信憑性を持たせる方法、それは証明することだ。

 話が決まれば即実行、自分から提案したものの予想外の展開に呆けるミリをよそに、京都はさっさと入浴の準備を始める。

 二人で入るのであれば浴槽にお湯を張らなければならない、一人が入れるかどうかの大きさだが、それでもあれば大分違うものだ。

 そういえば山下以外がこの浴槽を使うのは初めてだな、そんなことを考えながら、京都は浴槽の蛇口を捻るのだった。






 「それじゃあ、失礼します」


 「どうぞ~」


 かくしてミリと京都の混浴は始まった。

 どこか緊張した面持ちで浴室のドアを開くミリと、それを微笑で迎える京都。

 狭い浴槽に浸かっている京都を一瞥し、ミリは浴室に足を入れる。

 先ほどの京都の言葉からミリは緊張しているが、京都の声には緊張の色はない。

 それでも透き通るような白い肌が上気して見えるのは、果たしてお湯につかっているせいなのか、ミリには判断がつかなかった。

 そして改めて思う、お湯から上の京都のうなじ、鎖骨、肌の質・潤い、顔の造形、巻いたタオルからはみ出す黒く艶やかな髪、そのどれを見ても異性だとは思えない。

 膝を抱えるように使っているため鎖骨から下は見えないが、それだけでも女として思わずにはいられないのだ、勝てない・・・と。

 今や胸に大きな傷跡を持つミリには、一種傍観にもにた感情を抱いた。

 そのせいかもしれないが、裸体を見られているにもかかわらず、恥ずかしさなど感じない。

 それほどまでに、京都に男を感じない。


 「キレイですね」


 出てきた言葉は、純粋な賞賛。


 「それはドーモー」


 その言葉に京都は苦笑して、とりあえずの御礼を返し、ミリにシャワーやシャンプーの使い方を説明する。

 使い方とは別にこの浴室はユニットバスという種類のものだということも教えてみたが、そこについてはうまく理解させることができなかった。

 移動できるお風呂、と言われてもピンとこないらしい。

 自分の説明を聞きながら、おっかなびっくり体を洗うミリを見ながら、さっきの賞賛について考える。

 京都にとってさっきのような賞賛は今に始まったことではないし、ましてや望んだことのないものだ。

 自分に対する賞賛はすべて、その方向が間違っていると思うのだ。

 人間の優劣にはいろいろなものがあると京都は思うし、その優劣の内容は性別によって変わるものだと考えている。

 その観点において、京都は自身への賞賛は的を外したものしか受けたことがない。

 的を外した賞賛は言うまでもなく、優であるはずがない。

 だから京都は自分自身を自嘲する、やはり、二之宮京都はどこか壊れているのだと。


 「じゃあ、そろそろ交代しようか」


 ミリが体を洗い終わったのを見て、京都は浴槽を開けることにする。


 「・・・はい」


 京都が湯船から出る時、それは京都が全身を晒すということ。

 ミリに浴室の使い方を教えるのが本来の目的ではあるものの、それと同時に京都の性別が明かされる瞬間でもある。


 「じゃあ、出るね」


 そういって京都は浴槽から立ち上がる、先ほどまで見えなかった素肌もやはり透き通るように美しい。

 その素肌を滴が流れていく様を見て、ミリは感嘆の息をこぼす。

 そんなミリを正面に見据え、そして二人は対峙した。

 前を隠したいが、そうしたら混浴の意味がなくなってしまう、そんな思いからか先ほどから京都の腕が所在無げに揺れている。

 京都の所作にどこか言い知れない背徳感を感ながらも、ミリは京都に視線を向けた。


 京都はミリの胸元の傷を、そして控え目ながら確かなふくらみを持つ乳房を確認する。

 ミリは京都の胸元の白さを、そして自分とは違う平坦な胸を確認する。


 ミリはさらに視線を下げ、そして確かに男の証明を目にした。

 やはりじっくりと見られるのは恥ずかしかったのか、湯船から上がったはずの京都の頬は今だ上気し、伏せ目がちに横に視線を逸らしている。


 「~~~っ!」


 初めて異性の性器を目の当たりにしたミリは、京都の表情につられたということもあって、顔を真っ赤に染めて視線を逸らす。

 さらに今さらながら、異性に裸体を見られていると気づき、あわてて胸を両手で覆い後ろを向く。


 「じゃあ、先に上がっとくから」


 その慌てぶりに逆に冷静さを取り戻したのか、京都はミリの横を通り浴室から出て行った。

 冷静さを取り戻していたものの、出ていく寸前の京都の顔はまだ少し赤く、そして少しだけ見えた後姿に刺青があることに気が付いた。

 刺青は骨盤のほんの少し上の左側、そこに描かれている。

 描かれているのは、黒い悪魔の片羽。

 その刺青に、違和感を感じた。

 真っ白できれいなシーツを汚す、ただ一つの汚点のように。

ユニットバスについてですが、これ実は通販でも買えるんですよね・・・。


トレーラーコンテナに入るサイズのユニットバス探してみると、本当にあってビックリしました。

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