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そして勇者は世界を知る/やがて魔王は対峙する  作者: るい
現代日本に勇者は必要ですか?/羊と兎と濡れ烏
17/24

17話目: /魔 心地よく、どこか麻薬にも似た中毒性

魔王パートです

 少女が自らの生を実感して、数分ほどたっただろうか。

 天井に柄があることを不思議に思いつつ、なんとなくそれを眺めながら少女は思い出していた。

 ただひたすらに長く薄らいだ時間、思考することすら許されない、永遠にも等しい時間。

 その時間の最後の最後、ようやく訪れた光景を。

 自身のの胸に突き刺さる、鋭く長い剣。

 それを最後に見て、薄いだけの私の世界は終わりを告げた。

 それからどうなったのかは判らない、ただ気が付いたらここにいた。


 だとすれば、ここはあの世だろうか。


 重たい腕を動かしてそっと自分の胸に触れてみると、まず胸に何かが巻かれていることがわかり、そして痛みから現実であるのだと理解できた。

 見ると包帯が巻いてあり、それ以外は布一枚まとっていない、生まれたままの姿だった。

 おそらく治療をしてくれたのだろう、そう思い家主をさがす。

 首を動かして辺りをうかがい、自分の傍らで眠る一人の少女を見つけ、その少女の要望に息をのんだ。

 

 まず目についたのは、黒く長い髪。

 まるで水に濡れているかのような艶を持ち、見たものを惹きつける。

 次にその肌、雪のように白く触れた端から溶けてしまいそうな肌は、黒い髪と相まってとても印象深い。

 最後に顔、堀が浅くも整ったその顔立ちは見る者を魅了して止まない。

 そんな少女が、隣で寝ていた。

 唯一の色を持つ薄ピンクの唇からは、いまだ寝息が漏れている。


 気付いた時には、少女の顔に手を伸ばしていた。

 重たかったはずの腕も、少女に触れたいのか重さを全く感じない。

 少女の髪はとても滑らかで、いくら指ですいたとしても掛かることなく抜けていく。

 その感触が心地よく、どこか麻薬にも似た中毒性を感じてしまう。

 それから幾度となく、少女の髪をなで続けた。






 まどろみの中頭をなでられる、かつては母がよくしてくれたことを思い出す。

 今は亡き母のやさしい手のひらを、まどろみの中で感じると同時、二度と感じることのないハズのその感触に疑問を抱いた。


 いつもと違う環境で横になっていたため眠りは浅く、意識の覚醒は比較的スムーズなものだった。

 それでも重く感じる瞼を開くと、つい数時間前まで意識のなかった少女と目があった。

 それはもう、バッチリと。

 言葉も交わしたことのない少女が、自分の寝ているすきに頭を撫でているのだ。

 自分が目覚めない、もしくは狸寝入りでもすればよかったのだが、生憎と朝は血圧が低く非常に寝起きが悪いという自負がある。

 要するに何も考えず目を開いてしまったわけだ。

 二人は自然と見つめ合う形になるのだが、状況が状況なだけあって気まずさしか感じない。

 なで続けていた手も止まっているあたり、少女も気まずさを感じているのだろう。


 おかげで目は覚めたものの、動くに動けずしばらく見つめあっていると、やがて角の生えた少女が目を逸らし頭の手をあげ自分の布団に引き込んだ。

 気まずさに耐えられなかったのだろうな、と少女をかわいそうに思い、ならば早めにこの空気を脱しようとまずは身体を起こしてから、少女に声をかけることにした。


 「おはよう、体はなんともない?」


 問いかけに対して少女は一度こちらに視線を向けはしたものの、今度は困ったような顔をして再び目を逸らすのだった。

 よもや言葉を話せないのではあるまいか?という疑問が浮かび背中を嫌な汗が伝う。

 人目を避けてきたであろうこの少女は、いわば人を信用せずに生きてきたということだ。そこに言葉すらわからないとなれば、いくら助けたとしても信頼関係を築くことはできないと思う。

 下手をすれば囚われた、と認識されて下手をすれば抵抗されかねない。

 自分の頭を撫でていたこともあり、それはないとは思ってはいるのだが。


 さてこれは困ったことになったと思い頭をひねらせていると、目の前の少女は何事かをポソポソとつぶやき、そして視線をこちらに向けて口を開いた。


 「ごめんなさい、もう一度言ってもらえますか?」


 少女の口から出てきた言葉はごくごく普通の日本語だったが、言葉の内容には疑問を抱いた。

 日本語を理解できるにもかかわらず、問いかけた時に困った顔をした理由はなんだ?そう思いどこか釈然としないながらも、もう一度同じことを尋ねることにした。


 「聞こえにくかったかな、体の具合はどうって聞きたかったんだけど」


 どうやら今度の問いかけは問題なく聞こえたようで、少女からはすぐに返事が返ってきた。


 「少し胸が痛みます。でも、だいぶ良くなりました」


 「それは良かった。ところで、名前を聞いてもいい?」


 少女の発言に無理がないことを確認し、名前を聞くことにする。

 一度匿った以上ある程度回復するまでは面倒を見なければ意味がない、驚異的な回復力ではあるがそれでも期間がどれほどになるかわからない以上名前を聞いといた方がいいと思った。


 「私は、ミリ・メルエールといいます」


 「やっぱり外人さんか・・・、どっちが名前なの?あとなんて呼べばいい?」


 「ミリ、が名前です、呼び捨てで構いません。ところであなたの事は何と呼べばいいですか?」


 「二之宮にのみや 京都みやこ、京都が名前。呼び方も京都でいいよ」


 「京都さん、ですね。わかりました」


 「別に呼び捨てでもいいんだけどね、ところで喉乾いてない?」


 「よくわかりましたね、実は目が覚めてからずっと喉が渇いていました。そのせいかしゃべるのも少しつらい気がします」


 「なんとなくだけどそう思った、それじゃあお水用意してくるね」


 そりゃあれだけ血を失えばそうなるだろうと思いつつ、京都は水を用意しようと立ち上がる。

 そしてあることを思い出し、ミリに尋ねる。


 「ところでミリ、体は動かせそう?」


 「体ですか?多少怠くはありますが、問題なく動かせます。なにかお手伝いしたほうがいいですか?」


 「あーいや、違う違う。身体拭いたり包帯まくときに服を脱がせちゃったし、身体が動くなら水のついでに着替えも持ってこようと思っただけだよ」


 京都の問いかけに答えながら、体を起こそうとするミリの肩をつかみ布団に押し戻す。

 けが人を働かせる気は毛頭ない。という以前に、その傷で何を手伝えると思ったのかが非常に気になる京都だった。


 至れり尽くせりの状態が落ち着かないのか、京都によって再び寝かされたミリはどこか申し訳なさそうな顔をしていた。

 かといってミリに遠慮されてしまうと、素っ裸の人間に水を差しだすという何とも間抜けな絵面ができるわけで。

 それに見知らぬ女性の裸体が目の前にあったところで、ただひたすらに困ることは目に見えている。

 ならばいっそミリが何かを言う前に、部屋を出るのが最善だろう。

 考えたなら、即実行である。

 何か言いたげなミリをよそに、部屋の入口まで移動する。

 部屋を出る前に一度だけ振り返り。


 「じゃあちょっとだけここで待っててね、そこから動いちゃだめだよ?」


 安静にしてるよう、ミリに念を押して部屋を出た。

魔王側主人公である京都の容姿ですが、勇者側の主人公義史のモデルとなった人の好みの見た目にしてみました。

純和風の大和撫子ですね。

最近は二次三次男女問わずカラフルな頭髪の方が多いですが、黒髪の方も充分に素敵だと思います。

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