16話目: 勇/ 俺はファミニストなのだよ
濁流にのまれたとは言っても実際に流されているわけじゃないし、息ができないなんてこともない。
それでも俺は、巨大な渦の中にいる。
それはものすごい速度で流れ、次から次へと俺の後ろに過ぎていく。
ものすごい流れの中で、俺は流されることもなくただ立ち尽くす。
ただ、今流れていくものこそが、魔力であると理解した。
「どうだ、わかったか?」
その言葉に俺は、何度も首を縦に振った。
瞬間、濁流は消え去り元の場所に戻ってきた、そんな錯覚にとらわれた。
「ほら、大丈夫だったろ?」
目の前には何食わぬ顔のリリィがいる、してやったり、という笑顔が妙に腹立たしい。
殴りたい、この笑顔。いや、殴らないけどね?
俺はファミニストなのだよ、え、なんか違う?
「さっきのが魔力なのか?」
「そうだな、今回はただ流しただけだが、使い方次第でいろいろできて便利だぞ」
「便利って言われてもまだ使えるかはわからんだろ」
「私はヨシフミならできると思ってるぞ」
「また根拠のない自信を・・・」
「ところでどうだ、自分の魔力はわかるか?」
言われて俺は目を閉じる、さっきつかんだ感覚を、さっきの流れを意識して集中する。
するとごくわずかにだが、自分の中に魔力らしき流れを感じることができた。
「おお、ホントにわかる」
わかるというよりは「あ、これだったんだ」という感覚だ、そして本当に微生物レベルでしか存在してなくて少し泣きそうになってる。
「俺にも魔力があるのはわかったが、さっきのリリィと比べるとゴミみたいなもんだな」
たとえるならリリィの魔力を海と仮定すると、俺の魔力はせいぜいコップ一杯分だ。
私の魔力、低すぎぃ!!
「それなら気にすることはないぞ。この世界の人たちはみんなヨシフミと同じぐらいだ、普段使わないから少ないんだろう」
「ということはリリィたちの世界だと一般人ももっと魔力を持ってるってことか?」
「この世界の人たちと比べると5倍から10倍ぐらいだな、生活に必要な魔力自体はそこまで多くない」
「微生物の5倍ってのもどうとらえるべきか悩むな・・・」
一般人の5分の1と言えば先は長く見えるが、そもそも比較対象が微生物であることだし、少しの訓練であちら側の一般人程度ならすぐになれそうだ。
リリィ並にとは初めから思っていない、さっき大海原を見た時にこいつは規格外だと理解している。
俺の中でリリィ魔王説が浮上したほどだ。
「もともとは私の世界の人たちが普通だと思うし、魔力を使い始めた頃は魔力が伸びやすいということもある、訓練すればすぐに追いつけると思うぞ」
「具体的にはどういう訓練をするんだ?」
「ヨシフミの場合先ずは魔力を動かす訓練だな」
「魔力を動かす、ねぇ」
そもそも目に見えないものを動かせるのかという疑問があるが、現にリリィはとんでもない量の魔力を動かしている。
「さっきヨシフミがやったことを続ければいいと思う、取りあえずは慣れるしかないな」
「また漠然としたことで・・・」
はっきりとしない言葉が飛んできて俺はリリィにジト目を向ける、向けられたリリィは居心地が悪そうに身をよじった。
「とはいっても私たちにとって魔力が動かせるのは当たり前のことだし、他に言いようがないんだ。だからそんな目をしないでくれ・・・」
まあ当たり前のことを今更説明されても案外難しいことはわかる、これ以上は追及しても答えが返ってくることもな上に、ただリリィを困らせるだけだろう。
普段明るいリリィを困らせるのは楽しそうではあるが、怒らせたらバターになりそうなので自重する。
「まあ当分は一日一回魔力を感じる訓練をするってことで、今日はもう寝るか」
「それもそうだな、外はもう暗いし実は結構眠たかったりする」
三人いれば何とやら、そんなことわざがあるが、生憎とここにはすむ世界の違う二人しかいないのだ。
答えの出ないことにいつまでも悩んでも仕方ない、俺たちは早々に考えることを放棄して床についた。
だってほら、夜更かしは美容の敵っていうだろ?
夜更かしが日課?デブが美容気にしてもしょうがない?そもそも男?
え?なに聞こえな~い。
これで二日目終了となります。
次は「やがて魔王は対峙する」の二日目を投稿することになるのですが紛らわしいですね・・・、一つにまとめた方がいいでしょうか?




