15話目: 勇/ 私は悪魔にすら魂を差し出す
唐突に明かされる真実、俺はネグレクトを受けていた!
というのは夕食時の話である、夕食と風呂を終えた俺とリリィは部屋に戻ってあとは寝るだけだ。
男女が同じ部屋で寝る、あとはわかるだろう?
はい、普通に睡眠をとるだけです。
いや、俺に夜這いなんてできるわけないやん?
そんなことより俺は今リリィの食文化について気にになっている、箸は使えなかったもののスプーンは使えるのだし英国系の食文化なのだろうか?
まあスプーンは見れば使い方はわかると思うが。
「飯の話なんだけど、うちでの飯はリリィにとってどうなんだ?」
「どう・・・とは、どういうことだ?」
「すまん分かりにくかったか、この国の料理の味はリリィの好みにあってるか?」
「母上殿が作ってくれる料理はどれも美味しいな。説明が難しいな、奥が深い味わいといえばいいか」
「白飯はどうだ、飯の時は大抵出てくる白いやつだ」
「あれか、あれも独特の香りがあるが嫌いじゃないぞ」
「それはよかった。でも珍しいな、食文化が違うとあまり馴染めないって話を聞くが」
「私は旅をしていたからな、いろんな場所の食事を食べたこともある」
「なるほどな、じゃあ今日の晩飯みたいなのも食べたことあるのか?」
「似たものはあるがあそこまで細かい味ではなかったな、あと箸を見たのも初めてだった」
「じゃあ食べ物に関しては問題はなさそうだな」
「この国の食文化は素晴らしいからな、スタバという店のコーヒーなんて一口で私の好物になったぞ」
「スタバは世界規模だからウチの文化じゃないけどな、でもそんなに気に入ったならまた行こうか」
「なに、それは本当だな!?もし嘘なら私は立ち直れないぞ」
「そこまで言うのかどんだけ気に入ったんだよ・・・」
「あれを飲むためなら私は悪魔にすら魂を差し出すかもしれない」
「とりあえずお前の魂の行方が俺の財布に掛かってることは理解した」
女子の生態の一つとして甘味を好むことは知っていたが、まさかここまでとは思わなかった。
そしてリリィに魔王討伐を任命した人間は人選ミスを疑うべきだと思う、魔王にキャラメルマキアートを渡されたら簡単に寝返りそうだ。
桃太郎の家来並のチョロさである、猿・鳥・犬・リリィでチョロイン四天王ここに結成。
とまあ無駄話はここまでだ、折角部屋に二人きりなのだし魔法とやらについて教えてもらおうと思う。
身に余る努力をする気はないが、身に余ると分かるまではやる気ではある。
「リリィ、街で言っていた魔法について教えてほしいんだが」
俺はいそいそと布団に潜り込もうとしているリリィの背中に声を掛けた。
「帰ったら魔法を教えると言っていたな、スタバが衝撃的だったので忘れていた」
リリィの中でスタバ>>魔法の構図が出来上がってしまっている、まあチョロインだし仕方ない。
「魔法使えるようになったらまたスタバ連れてってやるから忘れないでくれ・・・。んで、魔力の流れを感じることからだったか?」
「冗談だ。ところでヨシフミはまだ魔力の流れを感じることができないんだよな」
「全くできんな」
「うーん。もしかすると、ヨシフミ自身の魔力が少なすぎて感じることができないのかもな」
「なるほど、微生物を裸眼で見るようなもんか」
「私にはそのたとえがわからないが、微生物ってなんだ?」
「ありていに言えば小さな生き物だな、目に見えないほどに小さいこと以外は俺も知らん」
そうなると俺の魔力は微生物レベルということになる、ちょっと切ない。
「そんな生き物がいるのか?まあこれ以上は脱線するから聞くのはやめておこう。ヨシフミ、とりあえずそこに立ってもらえるか」
俺の切なさはさておいて、リリィは少し考えるそぶりを見せた後、俺を部屋の中央に立つよう指示を出してきた。
「それはいいが何するんだ?」
さして断る理由もなく素直に従うものの、何の意味があるかは全く分からない。
首をかしげ部屋の中央に立ち尽くす俺に、リリィは向かい合うように並んで立つ。
「いやなに、少なすぎて感じることができないなら、大量にあればわかるかと思ったんだ」
俺の問いに何でもないことのように答えつつ、リリィは俺の胸に手を置いた。
「なにか嫌な予感がするんだけどさ、具体的になにするつもりだ?」
「簡単にいうと私の全魔力をヨシフミに流す」
「それ大丈夫なの!?」
勇者の全魔力を微生物に流すって、下手したら爆発四散するんじゃねーか?
「たぶん大丈夫だ、誰も試したことはないと思うが」
「確証がないのに自信持つの止めてもらえませんかねぇ!」
「安心してくれ。言っただろう、ヨシフミは私が守る」
「いやそこでいい笑顔してんじゃねーよ!守る前に爆発したらどうすんだ!」
「爆発って、何を言っているんだ?まあいいや、流すぞ、えいっ!」
「おい待て本気か!?ってギャーーーーーーー!!?」
俺の不安なんて鼻から無視し、リリィは気の抜けるような気合を入れる。
そしてその瞬間、俺は濁流にのまれた。
この次のお話でようやく二日目が終了します、多分・・・。




