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そして勇者は世界を知る/やがて魔王は対峙する  作者: るい
現代日本に勇者は必要ですか?/羊と兎と濡れ烏
11/24

11話目: 勇/ 虱潰しに探していく、とかいう案

 魔王を探すために街に来ていたはいいが、俺はわりかし重要ではないかという事に気が付いた。

 街中を歩きながら、同じく横を歩くリリィに気付いたことを尋ねてみる。


 「ところで魔王ってどうやって探すんだ?リリィは魔王の顔を知ってるとしても、そもそもどこにいるかもわからんだろ」


 「それに関しては心配することはない、私は魔王の魔力がわかるんだ」


 俺が思ったことを尋ねてみると、ずいぶんとアバウトな答えが返ってきた。

 それでも虱潰しに探していく、とかいう案に比べたらずいぶんマシに見えるから不思議。


 「魔力ねぇ、訓練なんかで分かるようになるもんなのか?」


 「そうだな、魔力を持つ生き物なら誰でもわかるようになるぞ」


 「便利なもんだな。まあ、俺には縁のない話だろうけどさ」


 「うん?例外はあるが全ての人間は魔力を持つし、もちろんヨシフミにも魔力はあるぞ?」


 「え、それマジで言っちゃってる?もしかして俺も魔法とか使えちゃう?」


 まさかまさか、俺も呪文とか言えちゃったりするのん?「えくすぺりあーむず!」とかいって物浮かばせちゃったりできちゃうのん?

 いや無理だな、あれは武装解除の呪文だった気がする。


 「ヨシフミの言葉を借りるならマジだ、とはいっても日々の努力は欠かせないが」


 「ですよね~、ならやめとくか」


 いくら魔法が使えるかもしれないとはいえ、努力しないといけないなら話は別だ。

 努力なんて大っ嫌い!とまでは言うつもりはないが、実を結ばない努力を知っている身としては二の足を踏んでしまう。

 強く願い努力したほど、目の前で潰えた時の絶望が途方もなく大きい事を知っている。

 そんなわけで俺こと山下義史には、努力・友情・勝利などという王道とは無縁であるし、もう憧れることはない。

 俺のジャンプ力は高くないのだ。あ、これ身体能力の話なんで、伏字はいらないよね?

 あ、でも才能・エロス・圧勝は大好きです、なんならエロス・ハーレム・美女でもいい、やだクズ~。


 「すぐにあきらめるのはあまり好きじゃないな、ヨシフミは努力するのはいやなのか?」


 あっさりと聞き流した俺に不満があるのだろうかか、リリィは少し眉を寄せ俺を咎めるように見ていた。

 リリィの気持ちもわからないわけじゃない、勇む者と書いて勇者と読むのだ。おいそれとなれるものではないだろうし、それこそ血の滲むような努力の果てに、リリィはそこにいるのだろう。

 だからこそ、リリィにとって俺の態度は我慢ならなかったのかもしれない。

 だがそれでも、この件に関しては俺にも思うことはあるのだ、だから今は食い下がらない。


 「いやってほどじゃないよ。ただ努力してる時ってさ、周りが見えなくなる時ってないか?」


 俺の言葉に心当たりがあるのだろう、リリィは神妙にうなずいた。


 「そしてそれは目標が高くて、自分ががむしゃらになればなるほど顕著なんだ」


 求められて、手を伸ばす。

 片手が届き、それでは不安で努力して。


 「そういう時ってのは目的すら見失ってんだよ、そんでもって、実を結びそうになった時、手後れだって気付くんだ」


 両手が届くその時になって、ようやく気付く。

 求める手は、いつの間にやら消えていた。


 「だから俺は、今手の届く場所を優先する。遥か高みなんざ、最初から目指さない」


 俺は正面から見据えた。

 遥か高みをめざし、そして到達したリリィを。


 「そうだな、ヨシフミの言っていることは間違ってないと思う」


 自分にも経験があったのかはわからないが、意外にもあっさりとリリィは納得した。

 考えを認めて肯定し、だがと続ける。 


 「だとしてもだ、手が届くかどうかすら試さないのはどうなんだ?」


 一度問いかけ、しかし答えは自分の中にすでにあるのか、リリィは言葉を止めず、そしてさらに続けた。


 「遥か高みだと見上げているのは、案外ヨシフミだけかもしれないぞ。現に魔法を使う私は」


 一度言葉を区切り、一歩前に踏み出して。


 「ほら、簡単に手が届く」


 そういって手を伸ばし、俺の胸に触れた。


 「試しにでもいい。一度やってみないか?」


 物理的にではあるが近づけば本当に手が届く、リリィのいうことが正しすぎてもはや苦笑しか出てこない。

 もちろん、だからと言って俺の考えがが間違っていることにはならないし、だからこそリリィは一度納得してその上で異を唱えて手を差し伸べた。

 遥か高みから降りてきた。

 引き上げるから、お前もつかめと。


 当時の俺は、相手の手の掴む強さを考えていなかった。

 だから両手でつかもうとして、そして間に合わなかったのだろう。

 最初から二人でつかみ合おうとすれば、また結果は違ったのだろうか。


 「そうだな、じゃあやってみるか。お試しにさ」


 相も変わらず身に余る努力をする気はないし、遥か高みを見ることはない。

 それでもほんの少し、背伸びをするぐらいはしてもいいかと思った。

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