10話目: 勇/ 俺の買った服を着てくれてうれしい(微笑)
ストックがやばいです、でも頑張ります。
帰宅途中コンビニで休憩がてら一服し、のんびりと帰宅する。
玄関の扉を開けると、目と鼻の先にリリィの笑顔があった。
「おかえりヨシフミ、仕事はどうだった?」
「ッ!?」
死ぬほどびっくりした、玄関待機どころか扉の前である。
思わず「ヒェッ!?」とか言ってしまいそうになるのを辛うじて抑え込み、土壇場における自分の冷静さを褒め称えつつ俺はリリィを見返した。
つーかなんで待機してんのよ?犬リスペクトか、残念ながら俺は猫派ですよ。
「・・・仕事は普通だったな、いつも通りだ」
先ほどの驚きからか声が震えそうになるがなんとか押し込んだ、そしてなんとか平静な声を絞り出すことに成功する。
「ところでヨシフミはどんな仕事をしているんだ?」
「そっからかよ、まあそれもそうか。中古屋で働いてんだ、基本的に何でも買うし何でも売るぞ」
「そんな便利なものがあるのか、私の鎧も買い取ってもらえるのか?」
「鎧売っちゃうの!?そんな簡単に売っていいものなのか!?あと、多分無理だから!」
「そうなのか・・・、服を買ってもらったしその代金くらいは返したいんだが」
「だからって売っちゃダメだろ、それ王様とかがくれるやつだろ?」
「そんな仰々しいものじゃない、家の目立つ場所に置いてあったのを持ってきただけだ」
「それ家宝だから!どっちにせよ売っちゃダメなやつだから!!」
しかも口ぶりから見るに無断で持ってきてそうだ、RPGかと言いたくなるぐらいの勇者っぷりだった。
間違いなく勇者なのだが・・・。
だからといってその鎧を売っていいことにはならないし、無いとは思うがまかり間違って売れてしまった場合、それはそれで大事になりそうなので断固阻止させてもらう。
どこからどう見ても本物の鎧であり、かつ使われた形跡がある。
さらにこの世界の歴史に沿わないデザイン、まかり間違って公に出てしまったら大混乱間違いなしだ。
「まあ服に関しては気にすんなよ」
「そうはいっても・・・」
「まあ聞けとりあえず聞けいいから聞け!」
このままでは埒が明かんので強引に押し切ることにする。
「この世界に魔王がいると俺も困るんだ、だったら手伝うのは当たり前のことだろ?」
「それではなんだか、私ばかりいいが思いをしているみたいじゃないか。もちろんヨシフミがそう言ってくれるのはうれしんだが、申し訳ないという気持ちが消せないんだ」
尽くされて申し訳ないて、性格と職業の割に胆が小さいことこの上ない。
まあ、それならばそれで納得させるだけである。
「それなら大丈夫だ、俺だっていい思いしてるからな」
「そうなのか?言っておくが、私が魔王を倒すから、とかじゃダメだからな?」
「ちげーよ・・・。その服俺が買っただろ?」
「そうだな、本当に助かった」
「お前がその服を着てくれるのが、俺はうれしいんだ。だからお前は、その服を着て笑っていてくれればいい」
そういって俺はリリィに微笑んだ。
うん、みなまで言うなわかってる。キザッたらしい発言マジキメェ。
言ってる俺自身鳥肌が止まらない、恥ずかしくて赤面、どころか通り越して冷や汗出てきた。
だって考えてみてよ、デブオタが金髪美少女に言ってんだぜ?「俺の買った服を着てくれてうれしい(微笑)」ってさ。
だめだ、俺の正気度がゴリゴリへっている。
でも仕方ないじゃない?実際何もしてもらってないし、守る宣言はあったけど守られる状況にもまだなったことないし、他に言えることが無いんだよぉ!
そんな俺の脳内懺悔はいざ知らず、俺のキザなセリフ(笑)を聞いたリリィはというと、
「そっ、そうなのか!?なら、し、し仕方ないな」
そう目をそらしながら答えるのだった。
おいおいうそだろ・・・。
女性は甘い言葉に弱いというのは迷信では無いというのか、いや多分リリィだけだな、うん。
当のリリィはどこか遠くを見ようとしているが、ここは玄関でありそのの視線の先にあるのはただの壁だ。
しかも横を見ているせいで横顔は見えており、耳まで真っ赤であることがはっきりとわかる。
正直な話先ほどの話はまだ迷信だと思っているが、リリィに関しては効果てきめんであったらしい。
そして訪れる沈黙、だが二人の間には言い表せない温度差がある。
「それにしてもヨシフミは、女性に対してよくそのような物言いをするのか?」
しばしの沈黙の中、以前壁を向いたままのリリィが口を開いた。
多分温度差には気づいていない。
「いや、今までの人生で初体験だ」
そして絶賛後悔中である。
「そ、そうか、私が初めてか・・・」
俺の答をかみしめるようにつぶやくリリィ、俺を見ないまま一度深呼吸をし、ようやくこちらを見据えた。
「うん。そういうの、なかなかいいと思うぞ!」
そういったリリィの頬はもう赤くは染まっておらず、その代わりかどうかはわからないがとても機嫌がいいようだった。
「それでは早速、魔王を探しに行くとしようか!」
返事も待たずに俺の手を引き外に出る、勇者というだけあって中々の力で引きずられ、なすすべもなく俺はリリィについていく。
そのうち鼻歌なんぞを歌い始めたリリィを前に、俺は抱いた疑問を訪ねることをあきらめた。
なかなかいいとは、何に対してでしょうね?
義史とリリィが家を出た後、開け放たれたままのドアを義史の母親(義史的通称:母君)は眺めていた。
「ドアは閉めて行きましょうね~」
開いたままのドアを閉めながら、母君はひとり呟く。
昨夜当然リリィを連れてきたときはさすがに驚いていたのだが、それをおくびにも出さず母君は対処した。
週に三日はバイトでそれ以外は家にいる、家事は手伝うがそれでもほぼニート一歩手前の生活、そんな義史が突然外国人を家に連れて来たのだから無理はない。
疑わしくはあるが京都の知人ということで家に泊めることを許可し、専業主婦である母君は興味本位で今日一日リリィの様子を観察していた。
一日家にいるのだ、もちろん話す機会もあったし昼食は一緒にとった。
リリィの話題はもっぱら義史のことばかりだったため、我が子の事ながらややうんざりしつつも出会って二日目の態度ではないことに疑問を感じ、リリィの話を聞き流すことはしなかった。
とある火急の用事があって日本に来たリリィ、言葉以外は何もわからず途方に暮れていたそうだ。
初めはリリィ自身も周りの人に声を掛けて回っていたらしいが今のご時世である。誰も相手にしてくれなかったそうだ。
一人よく知らない土地で不安と心細さに押しつぶされそうな中、半ばあきらめを抱きつつ声をかけたのが偶然にも義史だったのだそうだ。
義史はリリィの話を聞いたところ、快く引き受けてくれたそうだ。
この時点で母君は京都の知り合いではないと知ってはいたが、まあそんな気もしていたため、さして気にすることもなかった。
さらに話を聞くと義史はリリィに服まで買い与えたそうだ、なぜ服?と思わないでもなかったが民族衣装でも着ていて、周りから浮いていたのだろうと勝手に納得することにした。
話を聞くといささかちょろ過ぎる気もするが、一番心細い時に助けてくれた人間に好感を抱くというのは、母君も女として理解できるものであり、リリィが嘘を言っていないことは歳の功からみたリリィの話しぶりで分かった。
うちの息子意外とやるじゃん、というのが話を聞いて母君が最初に抱いた感想で、次に抱いた感想が、あいつやっぱりヘソクリしてやがったか、というものだった。
なんにせよ、これは非常に面白いことになってきたと母君はほくそ笑む。
色恋話、それはこと女性にとって、年齢を問わず人生のスパイスになりえるのだ。
それでも息子の事であり、一応ながら二人がうまくいくことを願いつつ、同時に今日の夕食について思いを巡らせる母君であった。
投稿前に試読みをしてくれる友人がいるのですが、オルガをいたく気に入ってくれたようで絵まで描いてくれました。
こういうのはとても励みになりますね、そんなわけでこれからも頑張っていこうと思います。
まあ、私は母君が好きなのですが。




